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2023.09.04

お寺における子育て支援の草分け・サラナ親子教室(知恩院)に学ぶ【社会共生実習】

 社会学部の「社会共生実習(お寺の可能性を引き出そう!―社会におけるお寺の役割を考える―)」(担当教員:社会学科 教授 猪瀬優理、コミュニティマネジメント学科 准教授 古莊匡義)は、地域社会におけるお寺の役割と可能性について考えるプロジェクトです。
 例年、前半の学びの仕上げとして、地域活動をしているお寺やお寺で地域活動をしている団体に受講生自身がアポイントをとって、その活動の背景や状況、展望などを教えていただいています。受講生自らが「学びたい」と思った活動をしているお寺・団体の取り組みを通じて、後半に実施する本プロジェクトにおける学生とお寺活動の協働活動に向けた知識と心構えを学ばせていただいています。

 今年度は、7/23(日)に浄土宗総本山知恩院で開催されているサラナ親子教室を見学いただき、担当の方からのお話も伺わせていただきました。
 浄土宗総本山知恩院では、「地域社会と家庭教育を通して伝えられてきた宗教心や信仰心が、社会の変化に伴って継承されにくくなったことに危機感を覚え、その再認識と再構築を目指して」、1966年に「おてつぎ運動」を信仰継承運動として提唱してきました。活動を続ける中で、若い世代への働きかけに困難を感じてきたことから、1998年から開始された事業がサラナ親子教室です(関正見,2019,「子育て支援―サラナ親子教室の試み」,大谷栄一編『ともに生きる仏教』ちくま新書、より)。 


 執事・おてつぎ運動副本部長の神田眞晃師、布教部課長の九鬼昌司師、布教部 おてつぎ運動係・サラナ親子教室主幹の永田真隆師より、サラナ親子教室の成り立ちについて教えて頂いたところによると、1997年に起きた児童連続殺傷事件の加害者が14歳の少年であったことに心を痛めた当時の知恩院執事長・牧達雄師を中心に「子どものすさんだ心に宗教的安らぎを与えたい」との思いで、外部団体からアドバイスを受けながら「サラナ幼児教室」として始まったとのことでした。
 その後、より当初の思いを実現する方向を模索する中で、独自に保育士や幼稚園教諭などにご講師を依頼する形となり、子どもだけでなく、孤立した子育てになりがちな親御さんたちにも心の安らぎを提供する場として、「サラナ親子教室」として開催するようになりました。基本は金曜日に開催していますが、要望に応えて土曜日にも開催、日曜日に開催している教室は、幼児向けではなくサラナ親子教室の対象年齢である2歳児を卒業したお子さんたちも参加できる教室として開催しているのだそうです。

 今回、参加させていただいたのは日曜日の教室であったため、0歳児の赤ちゃんから小学3年生までのお子さんたち20名程がご両親とともに参加されていました。当日は「地蔵盆」ということで、数珠繰りや縁日が実施されていたため、甚平や浴衣姿で参加するお子さんたちが多く、にぎやかな雰囲気でした。


 10時半頃から受け付けがはじまり、10時50分の教室開始までの間、受付を済ませたお子さんたちは、広いお堂の中で活発に遊びます。今回利用していたお堂は月光殿でしたが、普段はさらに広い知恩院の宿坊である和順会館の120畳敷の大広間でおこなわれているとのことでした。受講生たちも、やってきたお子さんたちと、楽しく一緒に遊ばせていただきました。教室は、法要から始まります。お子さんたちが仏様にお花を捧げ、法然上人の月影のお歌を皆で歌い、お子さんたち全員で永田師を導師に木魚をともに叩きながら、お念仏をします。いつもはお勤めのあと、お上人からのご法話があるそうですが、今回は、数珠繰りでのお話となりました。
 ベテラン保育士・幼稚園教諭の先生たちの伴奏と声掛けで、楽しく「ののさま(仏様)」のお歌を何曲か歌った後は、お堂の明かりを消してリラックスタイム。受講生たちも一緒に床でリラックスしました。



 そのあとは皆で輪になって大きな数珠で数珠繰り。受講生たちはその様子を見学させていただきました。いよいよお楽しみの縁日です。事前に先生方がご準備された楽しい出し物が11もあり、手作りのチケットを握りしめて、チケットと交換で、お堂の中ではパズルや工作、ペットボトルボーリングや紙コップ魚釣り、駄菓子屋さん、外ではヨーヨー釣りなど、盛りだくさんの内容で子どもたちもワクワクしながら回っていました。受講生たちは、先生たちのお手伝いとして、お店の番をしながら子どもたちとも交流させて頂く事が出来ました。



 一通り遊んだらお弁当タイム。
 その時間を利用して、受講生たちは、神田師、九鬼師よりサラナ親子教室の背景にあるお寺の置かれた現状について、その中で生まれ継続されている「おてつぎ運動」の広がりについて、含蓄あるお話を伺うことが出来ました。訪問させていただいた翌日の7月24日からは小学4年生から中学3年生までを対象とした「おてつぎ子ども奉仕団」が始まるとのことでした。
 ここには、連携校の生徒さんや学生さんがスタッフとして入るなど、サラナ親子教室を卒業した後にも継続的にお寺と社会とのつながりをお子さんたちが作る場となっているとのことでした。
 また、知恩院としては、地域の方々とのつながりも大事にされているということで、7月23日当日には地域の一斉清掃にも知恩院にお勤めのお上人、スタッフさんたちが清掃活動に参加していたというお話も伺いました。


 サラナ親子教室は知恩院だけで実施されているのではなく、全国各地で取り組んでいただき、若い人たちがお寺とのつながりとそこでの安らぎを得て欲しいという願いのもと、実施されているそうです。現在は全国で20の教室が開室しており、インストラクター養成講座では200名を超えるインストラクターが生まれているとのことです。
 お話のあと、受講生との質疑応答の時間も設けて頂き、受講生からは、参加者の親御さんたちも子どもさんたちも自然にお念仏を唱えている姿について最初から唱えられるのか、インストラクターの方々がどのような経緯で担当するようになったのか、といった質問をして、お答えいただきました。


 神田師、九鬼師からのお話のあと、13時からの閉会の挨拶にも参加させていただき、修了後には、永田師と教室の立ち上げから携わっておられる幼稚園教諭の橋本三千代先生より、実際に教室を運営しているお立場からのお話を伺う時間も設けて頂きました。橋本先生のお話によれば、サラナ親子教室はなにより、いつも緊張して子育てしているお母さんたちに安らぎ、リラックスする時間と場を提供することが大切だと考えているとのことでした。第一回の教室は3組の参加からの始まりだったとのことですが、26年間継続してきたなかで、参加者も増え、第1期生の子どもたちは大人になり、立派に成長した姿を見せに会いに来てくれることもあるとのことでした。
 参加させていただいた日も、赤ちゃんの頃から参加しているお子さんが9歳、10歳になっても、サラナ親子教室に足を運んでくれていました。このことが、お寺と子どもさんたちをつないでいるこの活動の答えとなってあらわれているのではないか、とお話頂きました。

 受講生たちからの質問も受けて頂き、一般の人にお寺を受け入れてもらうために行っている工夫や、お寺で行うことの利点は何か、広報はどのようにしているのか、活動において心がけていることは何か、といったことについて教えて頂きました。後期はお寺との協働活動をしていくことについて受講生から「大学生から何かして欲しいことがあるか」という質問もさせていただきましたが、サラナ親子教室で小さなお子さん、そのお母さん、お父さんと様々な人がお寺を訪れてくれると風通しが良くなるので、大学生にも来てもらって提案してもらったらなんでもありがたい、というお返事をいただきました。 

 本プロジェクトでは、後期に受講生それぞれの興味関心に合わせてグループを形成して、ともに活動して頂けるお寺を探していきます。それぞれどちらのお寺でどのような活動を展開してくれるのか、楽しみにしたいと思います。

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。