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2023.09.04

岸本直之教授が小規模事業場向け新規高度排水処理法を提案 薬品添加不要で自動運転可能な排水処理法の実現へ向けて【先端理工学部】

 岸本 直之 環境生態工学課程教授の研究グループが、薬品投入不要な小規模事業場向けの新しい高度排水処理法を提案しました。

 ホウ素添加ダイヤモンド(BDD)電極を装備した電解セルで排水を電解処理したのち紫外線(UV)分解を行うという処理方法です。電解時に排水中にオゾンや次亜塩素酸などの酸化剤が生成し,続いてUV照射過程で生成した酸化剤の光分解に伴って水酸基ラジカルなどの反応性ラジカルが生成します。結果として排水中の汚染物質はオゾンや次亜塩素酸,反応性ラジカルにより酸化分解されるほか,電解時の陽極でも直接酸化分解されて浄化されます。

 研究では難分解性有機溶剤として化学工業で広く用いられている1,4-ジオキサンを処理対象として実証実験を実施し,その速やかな分解を確認。また,1,4-ジオキサン1 molの分解に要するエネルギーは概ね60 kWhであり,従来,有効とされているBDD電極を用いた電解処理法と比較して最大42%のエネルギー削減率を実現しました。

 新しく提案した処理方法は、電解時,UV照射時のいずれも電力のみで運転可能であり外部からの薬剤投入の必要がないため、危険薬剤の管理が不要であるほか,自動運転が容易なため排水処理プロセスの省力化を進めることが可能になるというもの。今後,実用化に向けた応用研究の進展が期待されます。

 なお,本研究の成果は岸本教授を筆頭著者として,8月30日にOzone: Science & Engineering誌オンライン版に掲載されました。

掲載サイト(Ozone: Science & Engineering誌オンライン版)はこちら

【用語解説】
●水酸基ラジカル:
水酸化物イオンから1つの電子が取り除かれた活性化学種であり,活性酸素の一つ。強い酸化力を有しており,ほとんどの水中有機化合物を二酸化炭素まで完全分解できると考えられています。

●Ozone: Science & Engineering誌:
国際オゾン協会(International Ozone Association)が編集している国際学術雑誌。同協会はオゾンや各種酸化剤に関する技術情報の収集・普及・研究開発促進を目的とする国際的な非営利団体です。