2023.09.26
日本最大級のコリアタウンがある大阪市生野区の多文化共生のあり方に学ぶ【社会共生実習】
社会学部の「社会共生実習(多文化共生のコミュニティ・デザイン~定住外国人にとって住みやすい日本になるには?~)」(担当教員:現代福祉学科 准教授 川中大輔)では、9月8日(金)に大阪の鶴橋にてフィールドワークをおこないました。鶴橋には現在、日本最大級といえるコリアタウンがあります。現在は気軽に韓国旅行気分を味わえる場所としても知られ多くの人々が訪れるスポットにもなっていますが、在日コリアンが集住/定住している背景には長い歴史があります。そうした歴史的経緯や多文化共生を巡る取組や課題、これからの目指す方向などを学びました。
鶴橋と呼ばれる地域は天王寺・東成・生野区の3区にまたがっているのですが、中でも生野区は日本の都市部の中で最も外国籍住民が多い地域です。約60か国の外国ルーツを持つ方々が住んでおられ、区民の5人に1人以上が外国籍住民となっています。そのうちの約75%を韓国・朝鮮ルーツの方々が占めています。
鶴橋駅に降り立った受講生らは、まず駅の界隈にある国際市場を見学しました。終戦直後に焼け野原となったこの土地一帯にできた闇市にルーツがあり、朝鮮や台湾の商品が入手できることから発展を遂げてきました。韓国の食品店やの日用品、韓国料理屋や焼肉屋のほか、鮮魚の卸売市場があったことから隣接する商店街には鮮魚や乾物などの専門店も軒を並べています。
次に、御幸森(みゆきもり)神社とコリアタウンを見学しました。コリアタウンと呼ばれる大通りは年間200万人もが訪れる日本有数の観光スポットで、特にコロナ禍以降は気軽に韓国旅行の気分が味わえる「渡韓ごっこ」スポットとしてたくさんの人が訪れています。
この大通りですが、元々は御幸森神社の参道でした。戦時中、この大通りに住んでいた日本人らの商店が建物疎開したり空襲で焼失したため、朝鮮市場の店主らが大通りへと進出してきたのがコリアタウンの原型となります。元々住んでいる日本人と在日朝鮮人の方々との緊張関係は当然ありましたが、当時の小泉首相の靖国神社参拝問題などを受けて日韓関係が悪くなった2000年代半ばに、こういう時だからこそ、国籍を越えて市民同士が手を取り合うべきではないかという動きが起こり、百済(古代の韓半島西部にあった国)から日本に渡って漢字や儒教などの学問を伝えた人物「王仁(わに)博士」の歌碑が御幸森神社に建立するプロジェクトが立ち上がり、そのことを機に市民同士の関係は新たなステージに移ったそうです。
その後、多文化共生の拠点「いくのコーライブズパーク」(略称:「いくのパーク」)を訪れました。現在、生野区の人口は減少傾向にあり、少子高齢化が顕著である近年は小中学校の統廃合もなされてきました。その過程で最初に閉校となった大阪市立御幸森小学校の跡地を「NPO法人IKUNO・多文化ふらっと」と「株式会社RETOWN」の二者が「いくのパーク」として運営しています。
「いくのパーク」では、様々な多文化共生の取組が進んでいます。例えば、大学生やボランティアの方々が移民背景を持つこども・若者にほぼ1対1で学習支援をする教室や、子どもたちと一緒に料理を作るところから行う子ども食堂、住友商事との連携のもとで各国の図書が揃うtomo-tomo文庫を有する「ふくろうの森」図書室の運営、K-POPダンススクールやバスケットボール教室といった貸しスペースの活用などが挙げられます。そのため、外国籍の子どもたちはもちろん、国籍を超えて多様な子どもたちが集い、交わる空間となっています。
今回のフィールドワークでガイドを務めてくださった宋悟(そんお)さん(NPO法人IKUNO・多文化ふらっと理事・事務局長)は、「“多文化共生”と敢えて言わないような、自然に違いを認め合える関係づくりを目標に活動しています」とお話してくださいました。
今後、受講生たちは今までのフィールドワークで得た学びも生かして、東九条(京都市南区)でのプロジェクト活動に取り組みます。どのような企画が出てくるのか、楽しみにしたいと思います。
社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。