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2023.10.04

ワークショップ「ユニバーサル植物園の可能性」開催報告

 農学部と先端理工学部の学生・教員が共同で取り組んでいる龍谷IP、「植物園をつくろう!」* では、2023年9月30日、国立民族学博物館の広瀬浩二郎先生を瀬田キャンパスにお招きして、ワークショップを開催しました。広瀬先生は全盲の研究者です。博物館があたりまえのように「見る」ものになってしまっていることに対し、新たな「ユニバーサル・ミュージアム」の可能性を求めて、研究・著述・展示創作活動を精力的に展開していらっしゃいます。
 
 龍谷IP「植物園をつくろう!」は、瀬田キャンパス内の緑地を活用し、自分たちのアイデアで植物園を作っていこうというPBLプログラムです。龍谷大学らしさを追求するこの植物園には「ユニバーサル」あるいは「インクルーシブ」をキーワードにしたコーナーが必要と考えていましたので、ユニバーサル・ミュージアムの最先端を切り開いておられる広瀬先生にぜひお話をうかがいたいと思っており、それが今回実現しました。
 
 ワークショップの前半では、広瀬先生の「ユニバーサル」に対する考え方をさまざまな視点からお話しいただきました。いわゆる健常者であっても、ふだん五感をフル活用している人はいない。視覚障がい者などの障がい者は、使う感覚のバランスが多数者とは違う人たち。触覚(触角)で感じるミュージアムは、健常者(見常者)に新しい世界を見せることにもなるはずだと広瀬先生はおっしゃって、その事例を次々に紹介してくださいます。障がいのある方「でも」楽しめる植物園に、と考えていた私たちの固定観念は大きく揺さぶられ、徐々に広瀬ワールドに引き込まれていきました。
 
 後半では、学生が班ごとに準備した「ユニバーサル植物園」のアイデアをプレゼンしあいました。今回は「視覚を使わない」が条件で、当然、パワポもなしです。香る、触れる、重さを感じる、音の違いを聞きわけるなど、多種多様なアイデアとサンプルが提示され、先生も手にとるたびに「おっ、おっ」と声をあげていました。前半の広瀬先生の揺さぶりに負けず、学生の側からもしっかり先生を揺さぶり返しているようでした。
 
 瀬田キャンパスの「ユニバーサル植物園」は短期間でできあがるものではありません。しかし、その方向性がまちがっていないことが確認できたとともに、実現したいアイデアの芽がたくさん生まれたワークショップでした。広瀬先生も、「楽しかった、また来たい」とおっしゃっていました。「ユニバーサル植物園」への取り組みは、来年度も続けていく予定です。
*正式名称:「生物系教育の充実のための“Ryukoku Botanical Garden”設置構想とその基盤となる学修プログラム展開の可能性」(2021~2023年度龍谷IP萌芽型)
(報告者:三浦励一)