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2023.12.01

湯原 法史氏による講演会を開催【法学部】

法学部は11月24日、「マスコミ論Ⅱ」受講者らを対象に、編集者の湯原法史さんを招いた講演会を開きました。湯原さんは長年、筑摩書房で人文書の企画・編集実務に携わり、京都ゆかりの著者では加藤周一さんらの新刊を手掛けてきました。定年退職後は、フリーで編集者の仕事を続ける一方、早稲田大学が主催する「石橋湛山・早稲田ジャーナリズム大賞」事務局長としてメディア批評、賞の運営実務にも活動領域を広げられています。

3、4回生対象の専門科目「マスコミ論Ⅱ」では、書籍編集など現在の商業出版の状況について、内田孝・非常勤講師が自身の関わった書籍を例に、解説してきました。また、筑摩書房の刊行物として法学部・松尾秀哉教授の著書『ヨーロッパ現代史』(ちくま新書)を示し、「本は同時に複数の関連書に目を通すと、理解が格段に深まる」と本の読み方も説明しました。受講生には必須レポートとして、「採算ベースに乗る新刊を企画せよ」との課題を出し、湯原さんにも講演前に目を通していただきました。
ちょうど筑摩書房の求人案内が同社サイトに掲示されていたことから冒頭、湯原さんは半世紀前の自身の就活を振り返りました。鹿児島県出身で戦時中に知覧基地から飛び立った特攻隊の若者の生涯、思いを活字にしたいとの気持ちから編集者を志したといい、「筑摩書房の募集のあった年に就活を行い、面接相手の重役にまだ戦争経験者がいた時代だった」と述べ、縁あっての就活であると語りかけました。

レポート講評では、「出版に限らず、社会で物事を進めるには組織の承認を得ることが必要。企画が有益で、社会的な意義のあることを年上の人たちに納得してもらうことが出発点」と述べ、プレゼンスの重要性を説きました。そのうえで、「新しい本を作るには類書をすべて把握したうえで、何かを付け加えねばならない」と話し、社会に出てからも幅広く、深い勉強を続けるよう訴えました。提出されたレポートからは「デジタル時代の心理学」など3点をピックアップし、視点の新しさなどを評価。実際に出版できる可能性があるとして激励しました。一方で、「ウクライナやハマスなどの世界情勢をはじめ、時事的なテーマに関わる企画をもっと期待したい」と述べ、出版企画と時代性が一体であることを訴えました。

このほか、早稲田ジャーナリズム大賞については、11月に2023年の第23回受賞作として鈴木エイトさんの『自民党の統一教会汚染』(小学館)などが選ばれた経緯などについても解説しました。