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2024.01.25

陶器で醸造された日本酒の発酵過程における釉薬の影響を評価。もろみ容器が発酵特性に影響を与える可能性を見出す【発酵醸造微生物リソース研究センター/農学部】

日本酒醸造に新しい洞察を提供する研究成果を国際ジャーナルに発表

本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長の田邊 公一教授と、本学農学部、奈良文化財研究所らの研究グループは、同じサイズの2種類の陶器容器(釉薬のかかった陶器と素焼きの陶器)を使用して小規模な日本酒の醸造を行い、釉薬が発酵特性に与える影響を評価しました。結果、素焼きの陶器で醸造された日本酒は、釉薬のかかった陶器と比較して、エタノールや特定の元素の濃度が高く、風味に影響を与える可能性が判明。本成果は、2023年12月29日に国際ジャーナル『Foods』にオンライン掲載されました。

【発表論文】
英文タイトル:Glazing Affects the Fermentation Process of Sake Brewed in Pottery
タイトル和訳:陶器で醸造された日本酒の発酵過程における釉薬の影響
著者名:田邊 公一1・2・林 穂乃花1・村上 夏希3・吉山 洋子1・島 純1・2・庄田 慎矢3・4
所 属:1 龍谷大学農学部 2 発酵醸造微生物リソース研究センター 3 奈良文化財研究所 4 ヨーク大学考古学部(英国)
掲載誌:Foods 2024, 13(1)(MDPI社)
URL:https://doi.org/10.3390/foods13010121 ※2023年12月29日Web公開済

詳細は、こちらのプレスリリースを参照してください。


実験に使用した陶器容器の外観(写真左:釉薬、写真右:素焼き)

実験に使用した陶器容器の外観(写真左:釉薬、写真右:素焼き)


田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)

田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)

今回の研究成果に関して、田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)のコメントを紹介します。

 これまでに酵母株、米、水、または温度管理など、日本酒醸造において直接的に関連する要因が調査されてきましたが、もろみ容器の影響は徹底的に調査されていませんでした。本研究では、釉薬が陶器で醸造された日本酒の発酵特性や味覚に影響を与えることを発見しました。この結果は、現代の日本酒醸造で多く使用されるホーロータンク(鉄製の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもの)であっても、容器の表面が発酵特性に影響を与える可能性があることを示唆しています。
 最近、一部の日本酒蔵では、伝統的な手法を守りながら、独自の風味を持つ日本酒を製造するために、もろみ容器として陶器を使用し始めています。本研究の結果は、古代と現代の技術をつなぎ、日本酒醸造に新しい洞察を提供しています。
 今後の展開としては、今回の結果をふまえ、さらに清酒もろみを発酵させる容器の素材を調べていきたいと考えています。容器の保温性、透湿性、揮発性を既存の容器のものと変化させることで、発酵速度を調節したり、新たな風味をもつ清酒製造も可能になるかもしれません。