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2024.03.21

“清少納言が感じた風情を再現” 龍谷大学生が卒業研究で明らかにした結果をもとに、老舗すだれ店とのコラボで当時のすだれを再現 地道な調査と手仕事で千年前の「みくりのすだれ」の実態を研究

【本件のポイント】

  • 学生が卒業研究で、『枕草子』などの古典に登場する「みくりのすだれ」は“ミクリ”という植物ではなく、“ウキヤガラ”という琵琶湖周辺に自生する植物で作成されていたことを証明。
  • 「みくりのすだれ」とは “ミクリ”の茎を編んで作ったすだれのことと記述される古典注釈書や国語辞典の説明が誤りであると指摘。
  • 3月25日(月)に国立民族博物館准教授と老舗すだれ店と連携することで「みくりのすだれ」を再現。野生から採取したすだれを編むための糸も使用することで「当時の自然利用をリアルに考察」する。


【本件の概要】
 龍谷大学農学部農学科 雑草学研究室の三浦 励一准教授と研究室に所属する学生が卒業研究で『枕草子』や『蜻蛉日記』に登場する「みくりのすだれ」の再現を行います。
本プロジェクトは、卒業研究の一環として「みくりのすだれ」が何の植物で作成されていたかを明らかにする研究です。古典注釈書や国語辞典では“ミクリ”の茎を編んで作ったすだれのことと記述されてきましたが、「みくりのすだれ」はこれまで再現されたことがありませんでした。このようななか、“ミクリ”の茎の形状はすだれにできるようなものではなく、古くに「みくり」と呼ばれたことがある“ウキヤガラ”ならすだれをつくるのに適しているのではないか、と考察する説がありました(細見末雄『古典の植物を探る』1992年)。この説に着目した学生たちが、ウキヤガラ(古名みくり)と当時の技術で本当にすだれができるか、という実験考古学的な発想のもとに「みくりのすだれ」の再現に取り組みました。


ミクリ


ウキヤガラ

ウキヤガラは琵琶湖・淀川に自生する植物であり、学生の藤本剛輝(ふじもと・こうき)さんが琵琶湖を一周するようにしてウキヤガラを探し回りました。すだれを編む糸もウキヤガラの生育地の近くで得られたはずだと想定し、染織研究を専門とする国立民族学博物館の上羽陽子准教授に相談の結果、野生のクズの繊維を用いることになりました。クズのつるを発酵させ繊維をとってよりをかけて糸にする作業は上羽准教授の指導のもと、学生の李恩注(い・うんじゅ)さんが担当しました。また、すだれを昔ながらの手仕事で編んでいく作業については、老舗すだれ店の「京すだれ川﨑」(京都府亀岡市)から協力を得られました。
このような学生2名による試行錯誤と根気のいる手仕事の末に必要なウキヤガラの茎とクズの糸が揃い、試作の結果ウキヤガラから野趣あふれるすだれができることがわかり、実際に「京すだれ川崎」の作業場にて「みくりのすだれ」を再現できることになりました。


クズのつるを発酵させる様子


クズの繊維によりをかける様子

千年の時を超えて再現される「みくりのすだれ」は、『枕草子』で清少納言が田舎を訪れた際に馬の障子やみくりのすだれを見て、風情を感じるシーンで登場します。貴族階級であった清少納言が、当時ですら風情を感じた「みくりのすだれ」を現代人はどのように感じるのでしょうか。すべて平安時代に存在した天然素材で再現することで古典と環境問題の結びつきを捉えなおすきっかけになることが期待されます。

◆作業実施日
日時:3月25日(月)10時作業開始 夕方完成予定。
場所:京すだれ川崎
(京都府亀岡市千代川町千原片ホコ14‐3)
※当日、学生が作業する様子を撮影することができます。


試作を行う様子

問い合わせ先:龍谷大学 農学部教務教務課 新田
Tel 077-599-5601 agr@ad.ryukoku.ac.jp  https://www.agr.ryukoku.ac.jp/