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2024.05.02

【法学部企画広報学生スタッフLeD’s】嶋田 佳広先生インタビュー

1.嶋田先生ってどんな人?

Q1.社会保障法を専門に学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

それは結構難しくて、要は、最初は大学の学部のゼミで入ったところの先生が、社会保障法だということなんです。私がいた時は、みんな楽なゼミに入りたがるので、まずはそういう競争率が高いところにみんな行くわけなんです。ただ、そこに入れないから、どうしようかなとなった時に、あまり法学部らしい憲法とか、民法ではなく、法学部らしくないゼミで、何か面白いとこないかなっていうことで探していたんだと思います。もう半世紀、四半世紀前の話なので忘れてしまったけど、大学のゼミに入ったのがきっかけだということです。

Q2社会保障法の魅力は何ですか?

それがわかればみんなに伝えることができるんだけど、1つはやっぱり、いわゆる法学といったものとは異なるアプローチができるということです。皆さんが法学にどのようなイメージを持っているのかはわかりませんが、条文、判例、学説、解釈論がある馴染みのスタイルとはまた違った、色々な視点から勉強することができるというところが1つ大きいかなと思います。

Q3.学部生や大学院生時代は、どのような学生でしたか?

学生の時は、多分他の学生とそんなに変わるような人間ではなかったと思います。私は4回生が終わったら就職したいと考えていたけど、その時は例の就職氷河期のときあたりで、なかなか状況的にうまくいかなかったことがありました。それで、社会保障法のゼミも勉強も面白かったので、大学院に行くのも1つかなということで大学院に行きました。1回生から3回生ぐらいまでは、法律の勉強はあまり面白いのか面白くないのかよくわからなかったけど、ゼミで勉強しだして、3回生の後半から4回生ぐらいになって、勉強すること自体が面白くはなってきていて、勉強続けたいなという感じがあったので大学院に行くことになりました。大学院になると勉強を専門にしなければならないからそういう意味では性にあっていたのかなっていう感じはしています。
どんな学生だったかというのは、客観的に他人に聞かなければわからないけど、それなりに真面目に勉強していた方ではないかなと思います。学部までの勉強と大学院の勉強は少し違っていて、大学院に入って勉強する時はよく海外の制度を勉強するんです。一般的に、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツとかですね。私はたまたま学部に入った時に第2外国語でドイツ語を勉強していたこともあって、大学院に入って海外の勉強をどこにしようかなという時にドイツの勉強をすることにしました。ドイツの仕組みとかを勉強していくと、なるほど、こういう勉強の仕方もあるのかということもあったりして、勉強自体が苦痛ではなかったですね。自分のやりたい勉強と、そういう環境とはうまく合っていたかなという感じは今考えるとあります。


Q4.先生のご趣味は何ですか?

こう見ても結構文学青年なので、昔は芥川龍之介なんかが好きで、結構本を読んでいました。あと、勉強なんかで言うと世界史が好きで、だから歴史とか文学とかに興味があったので、あまり大学に行くイメージで高校時代過ごしていたわけではないけども、文学部とかそういうところに行って勉強するのも、1つかなと思っていました。ただ、就職難というのは今も昔もあまり変わらなくて、それなら、手に職つけるじゃないけども、潰しが効くのが法学部とか経済学部と言われていたので、そこに進んだということなので、最初から法律の勉強がしたくて法学部入ったわけではないんです。だから、学部時代も、結構本を読んだりとかしていて、ヘミングウェイとかアメリカの文学とかも結構好きで一時期までよく読んでいたので、20代前半ぐらいまではそんな感じでした。
ただ、大学に入って勉強し始めるとなかなかじっくり本を読む機会がなくなってきて、そこから、無趣味に近い状態が続いているような気もしますが、最近は私の妻の影響もあったりして、息抜きも兼ねて美術館とか、音楽を聞きに行ったりとか、全く自分の勉強とは直接関係ないことに興味、関心を広げて、人生の幅を広げたいなと思っています。
あと、結構パズルが好きで、クロスワードとか数独とかをしますね。これは、誰にも迷惑をかけず、自分1人でできるから好きです。
あと、漫画を読むのは昔から好きで、でもこれは趣味ではなくて、生きるための大事な糧なんです。皆さんからしたらもう伝説になっているかもしれないけど、週刊少年ジャンプの黄金期っていうのがあって、「ドラゴンボール」とか、「聖闘士星矢」とか、「北斗の拳」とかがリアルで載っている時のジャンプを読んでいた世代なんです。もちろん、今でも「ワンピース」や「鬼滅の刃」も読んでいて、鬼滅の刃も連載が終わって2年、3年ぐらいになるけど、アニメも作られているから、十分その影響力があるのかなと思います。

Q5.教員紹介のホームページには、「住宅問題に関心があるが、社会保障と住宅の関係の答えらしい答えがない」という言葉がありましたが、現時点でそれについてはどのように考えていますか。また、住宅問題以外にどのような問題に関心がありますか?

それは、一生かけた問題とかではあるんですけど、いい意味では日進月歩というのかもしれないです。常に世の中は変化していくので、例えば、去年と一昨年、一昨年とその前とか、あるいは、今年、来年になってもどんどんと社会の状況は変わっていくので、毎回1つ新しい状況にどんどん目を向けていかなければいけないなと思っています。教員紹介では住宅の話をしていると思うけど、でも、それは住宅にも色々なものがあって、マンションもあれば、アパートもあれば、団地もあります。では、なぜ社会保障との関係なのかというと、住宅は物ですよね。どちらかと言うと、日本の社会保障はそういう物自体の確保というよりは、お金の問題として社会保障の問題を考えるっていうのが1つだったわけです。ただ、授業でもよく話すけど、例えば、今大病を患っている人がいて、その人に1億円あげますと言って1億円もらいました。でも、例え1億円もらっても、がんに侵されている人が1億円もらったところで、がんが治るわけじゃないとなると、がんを患っている人にはがんを治すために手術、投薬治療や入院とかが必要なわけです。そうなると、日本の場合、治療は物という風に一応カウントするんだけど、そういったお金だけでは形がつかないものもあるわけです。最近では、介護サービスとかもそうかもしれませんね。ただ、住宅は難しくて、先ほど言ったように住宅も物なわけで、例えば、ホームレスの人がいたとして、その人に1億円あげますと言って、確かに即金で買える家があるかもしれないけど、普通は家買うのはものすごく手続き的にも大変な話で、しかも、適切な家が売られていなかったら、意味がないです。ホームレスで1人なんだけど、今1億円で入れる豪邸がありますと言ってもそんな家をもらったところで持て余すし暮らすこともできないからね。だから、適切な家というのはある程度幅が決まってくるわけで、どうしてもその時に、住宅という物自体がそもそも適切に存在しているかどうかという問題と、そこにアクセスできるのかという問題もあります。でも、先ほど言ったように、日本の場合、社会保障はお金がない人にお金を保障するというやり方が1つやり方としてあって、今は「適当な家がないなと困っている人がいたら家を貸してあげます」というやり方は少ないわけです。それよりは、「お金をあなたに保障するから、その保障されたお金の中で自分で頑張ってください」 というようなやり方が日本ではメジャーになっているんです。
また、空き家問題というのもすごくたくさんあって、家が管理しきれなくなってきているんですよね。家は管理しなかったら、すぐに古くなって倒壊したりもするので、家は作りさえすればいいというものじゃなくて、そこに住む人がいて初めてワンセットという側面があるんです。実際、日本で今建っている家の1割以上2割近くが空き家って言われていて、ものすごく今は空き家社会なんですよ。一方で、先ほど言ったように、ホームレスの人がいたりとかいう時に、家が空いているんだから適切な家がなくて困っている人は、どんどん住んでもらったらいいじゃないかと思いますよね。ただ、そうではないわけです。社会の矛盾が色々あって、その1つは家の問題にも現れているところもあると思います。でも、そういう矛盾がうまく解消して空き家も減っていくし、家に困っている人も減っていくという話になって、全部がベストバランスになったら、世の中の問題は解決するのかと言ったらそうでもないわけです。
例えば、最近で言えば引きこもりや介護サービスの問題とかであると、外から介護ヘルパーの人が入ってきたりして家の中で介護しようと思うと、日本の家は段差が多いんですよ。家に入ってからの上り下りの問題もそうだし、あるいは、畳と洋間の間をふすまで仕切っている家の中で階段が結構あったり、しかも急勾配だったりしたりします。そうなると、家の問題は確かに大切なんだけど、家の問題だけで物事解決するわけではないからどうすればいいのかなと思うと、お金の問題も1つは出てきます。あるいは、最近あった家族の問題では、例えばヤングケアラーとかですね。ヤングケラーというのは、おじいちゃん、おばあちゃん、あるいは、お父さん、お母さんが働いていなかったり、精神障害である場合が典型だと言われています。お兄ちゃんやお姉ちゃんが妹や弟の世話したり、お弁当作ったり、送り迎えしたりなど、家族の中の役割とも言えるけど、それもよく考えるとヤングケアラーであって、そういった人は今でもたくさんいるはずです。そうなると、家族の問題はその前提として、仕事の問題とか、学校の問題とか、教育の問題とかがあると思うんです。だから、私はそこが大事だと思っていて、1人1人が与えられた環境の中だけかもしれないけど、精一杯生きていくためにはどうすればいいのかを考えると、家の問題も大事だし、それ以外にもたくさん問題もあるので色々考えていかなきゃいけないなと思う今日この頃ですね。だから、もちろん研究を続けていきたいけど、そこからもう1つ、どうやって視野を広げていこうかっていうことを今悩んでいるという時ですね。


2. 嶋田ってどんなゼミ?

Q1.嶋田先生のゼミでは、現在どのような活動をされていますか?

今は、1人、あるいは2人で調べたことを報告するということを順番にやっています。いきなり判例報告とか文献報告とかって話にはならないですけど、まずはレジュメをちゃんと作ってくるところからですね。拙くても全然構わないので、ページ数をつけたり、バラバラにならないようにホチキスで止めたり、そういう細かいところは社会人になっても要求されますから大事です。報告内容は、完全に自由にしてしまうと皆で議論するのが難しくなっちゃうかもしれないから、私が指定したテキストから好きなトッピクを選んでもらって、中身を要約したり感想を書いてもらったり、あるいは問題点は何かを考えてきてもらうっていうことを今はしています。それが終わったら、社会保障法に関連する勉強をしようと考えています。年金、医療や保険の制度についてですね。

Q2.ゼミを通して、学生にどのような力を身につけてほしいですか?

勉強って一人でできるものじゃなくて、質疑応答も含め皆でやるものだと思っています。複数人で同じテーマについて調べて報告するにあたって、他人と共同作業する機会があると思うから、ぜひこういう場面で協調性やリーダーシップなんかを磨いていってほしいなと思いますね。
それと、何を勉強するかも大事だけど、やっぱりどう勉強するか、勉強の方法も大事だって思います。ネットで調べて終わりじゃなくて、図書館に行って文献や判例雑誌を調べる。たしかに、ネットで検索をすれば情報はすぐに出てくるけど、結局それは情報を見ているだけで自分自身に返ってこないんですよね。AIに頼りがちな時代になっているけど、ネットで情報を探したり、さらにそこに載っている情報が正しいかどうかを判断するのは結局人間なんです。ネットで調べるのも大事かもしれないけど、それはあくまで手段の一つ。その情報を踏まえて自分はどうするのか、どう考えるのかが問題なんです。そのためには、自分で責任を持って考えて発言するということが必要だと感じています。でも、それはとても勇気のいることだと思うんです。学生にはそういった心理的ハードルを越えられるような力も鍛えてほしいですね。最後に頼れるのはやっぱり自分なので、自分という武器を磨いていってほしいと思います。

Q3.嶋田先生のゼミには、どのような学生に来てほしいと思われますか?

私は、求める学生像みたいなものは全く無いです。他の先生はどうなのか分からないけど、私は、教員はゼミを取ってもらう立場、選ばれる立場だと思っているので、「こういう学生を求めているんだ!」って主張する義理は正直ないと思っています。勉強するのはその人自身だから、明るい人もそうじゃない人も、どんな人でも歓迎します。


3.学生に向けて

Q1.最後に、学生に向けてメッセージがあればお願いします。

法律の勉強は一定まではやはり下地になる訓練がものすごく必要で、すぐに結果は出ないんですね。だって、判例1本読むのも大変だけど、その大変な思いをして判例を読んだらわかるようになるのかと言ったら、やっぱりわからないよね。そういう意味では、法学部の勉強というのは、基本的には長い間耐えて我慢して、ようやく芽が出るんだよね。
あとはゼミについてだと、カリキュラム上は絶対必須という科目では確かになくて、資格試験とか、あるいは法科大学院を受験するなど人生設計があって、ゼミを取らずに卒業するという選択をすることは問題ないかなと思います。ただ、例年9割ぐらいの学生がゼミは受けているはずで、先ほどの法学の勉強はなかなかすぐに成果出にくいと話をしていたこととの関係で言うと、法学の勉強はやっぱりどうしても大講義が中心なので、先生から「質問ありませんか」と言われても、そこで、たくさん手が上がっても相手するのは大変ですよね。そうなると、授業というのは先生が一方的に話を浴びせて時間来たら終わりというようなことがずっと繰り返されるだけにはなってしまいます。確かにインプットは大切ではあるけど、やはりアウトプット、「自分は果たして理解できたのか」、「自分の考えていることをみんなどう思うのか」、それを話す機会があって初めて全体として勉強のバランス取れるんじゃないかなと思っているわけです。じゃあ、勉強でのアウトプットと言うと、やっぱりゼミの場ぐらいしかないわけです。これまで自分の中に蓄えてきたような勉強っていうのを、今度は自分の中で吐き出していって、自分が勉強したこととか、考えてきたこととか、疑問に思っていることをアウトプットしたらやっぱりよく分かるようになります。そういう場面として、ゼミをぜひ利用してほしいなと思う。
また、多彩な先生の、多様な専門のゼミがあるというのは、そういうこと考えるだけでもいろんな勉強ができるんだなという風に思えるので、心強くなるよね。ただ、残念ながらその中で取れるゼミは1個なので、こんなにいろんなゼミがあるんだとまず思ってもらって、この中から1つに絞ろうと思ったら、どうしようって悩んでもらう。嬉しい悩みをぜひ持ってもらいたいなとやっぱり思います。だから、なんでも心持ちが大事で、嫌々やったら、嫌々の結果しか出てこないですよね。もちろん先生との相性とか、実際に人間だから、仲良い点、悪い点もあるかもしれないけど、それも卒業して会社入って、上司や同僚でも同じことはあると思うので、そう考えると、大学は人間の修行の場かもしれないですね。総じて、龍谷大学の先生はみんな熱心に教えてくれるタイプの先生が多いと思います。


【取材・記事】
法学部学生広報スタッフLeD's
峰松 実結 (法学部3年)
森 亜真里 (法学部3年)
串山 琉乙 (法学部2年)