2024.05.28
中須 俊治 氏による講演会を開催【法学部】
龍谷大学法学部は5月20日、京都とアフリカ・トーゴの伝統産業をつなぐ事業を展開する中須俊治さんを招いて講演会を開きました。内田孝・非常勤講師が担当する3、4回生対象の専門科目「マスコミ論Ⅰ」の一環で、授業で中須さんの起業に至るまでの歩み、事業の実際と昨年夏のアフリカでの交通事故などを紹介しており、受講生約90人が事前に質問を提出したうえで参加しました。
中須さんは宇治市出身の33歳です。滋賀大学在学中に大手商社やマスコミなどから就職内定を得ましたが、幼いころから身近な商店主らにかわいがられたとの実感があったことから、「大企業での顔の見えない相手とのビジネスに疑問を感じた」と内定を辞退。周囲の猛反対のなか、これからの生き方を再考するために休学し、日本人のいないトーゴのラジオ局DJ募集に応募して渡航しました。DJは話す仕事ですが公用語のフランス語が満足に話せなかったものの、自らを「ペテン師」と称する楽天的な思考で現地語を習得。多数の友人ができ、「現地では愛称で呼ばれるほどの人気者になった」と振り返りました。
いったん帰国して復学し、京都信用金庫に採用されて4年余り勤めました。在勤中は当初から起業を念頭に、「社会人生活の基本や、数字で社会を判断する金融業」を冷静に学び、満を持して独立。2018年、アフリカの織物職人と京都の染色職人を結ぶ事業などを展開する会社「アフリカドッグ」を西陣でスタートさせた経緯などを、笑いを交えて語りかけました。
順調だった昨年夏には、トーゴで乗っていた車が正面衝突。後部座席に座っていたために一命を取り留めましたが、治療のできる医療設備のあるモロッコに転送され、半月あまりの意識不明の重体から生還。日本への帰国までの治療費、輸送費などは、京信関係者や龍大・深尾昌峰副学長らの呼びかけによるクラウドファンディングで支援を募ったことなども感謝を交えて説明しました。
深刻になりそうな交通事故なども含め、波乱万丈の生き方を笑顔で語る中須さんの話に、受講生たちはみな引き込まれて聞き入っていました。質疑では、卒業後の生き方や就活をクリアする方法を尋ねる質問が続きました。これに対し、中須さんからは具体的に社会人とのコミュニケーションの取り方、深め方の解説がありました。就活については、「大学時代にやってきたこと=過去と、卒業後に就職先でやりたいこと=未来がつながるように構成し、自信をもって相手に伝えられれば大丈夫」と助言しました。また、「海外に行って、流行のファッションを知りたい」との相談には「円安で海外に行く人の少ない今こそ、海外を体験する意味がある」との持論を示し、それぞれが自らの知恵を絞って夢を実現するよう励ましました。終了後にも質問に訪れる受講生もおり、よい刺激になったと感じられる授業でした。