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2024.06.06

高校生と連携し、水圏の生物多様性評価に挑戦する「TASUKI -襷- Project」が始動【生物多様性科学研究センター】

環境DNA技術を研究活動に取り入れた高校生らの研究に協力

2024年6月1日(土)、龍谷大学 生物多様性科学研究センターがアカデミックパートナーとして関わる「TASUKI -襷- Project」※のキックオフイベントが行われました。本プロジェクトは、“地球と生きる、豊かさをつなぐ”をキャッチフレーズに、全国から応募のあった参画校の高校生と連携し、水圏の生物多様性評価に挑戦する1年半におよぶ研究事業です。
参画校の生徒らは、普段はなかなか触れることのない環境DNA技術を研究活動に取り入れながら、採水サンプルからの網羅的な生物種解析を実施。また、得られた調査結果をもとに、データの解釈や科学的な考察を行い、「まだ誰も知らない発見」に自らたどり着くプロセスを経験していきます。
※主催:株式会社フィッシュパス株式会社フォーカスシステムズ株式会社リバネス。プロジェクト参画校、活動の流れ等の詳細は、プロジェクトHPおよびプレスリリースを参照のこと。

キックオフイベントは、本学瀬田キャンパス7号館と株式会社リバネス東京本社の2会場をオンラインで繋いで実施し、関西の採択校2校(滋賀県立高島高等学校、滋賀県立八幡工業高等学校)、関東の採択校2校(東京都立立川高等学校、東京都立武蔵高等学校)が各会場で参加しました。
主催団体による開会挨拶・主旨説明の後、採択校への認定証と襷、プランクトン図鑑等の記念品授与が行われました。今回の参画校は、奇しくも関東チームは東京都・多摩川水系、関西チームは滋賀県・びわ湖水系にあります。ピッチに立った採択校の代表生徒らは、身近な水圏環境への興味関心から応募に至ったことや、環境DNA技術を取り入れた研究活動を通じて自然環境・社会環境の関係を包括的に考えたいといった意気込みを発表しました。


授与品の中には襷にちなんだオリジナルタオルも

授与品の中には襷にちなんだオリジナルタオルも


授与式の様子

授与式の様子

つづいて行われた基調講演には、生物多様性科学研究センター長の山中裕樹教授(本学先端理工学部)が登壇。「仮説検証型研究と発見型研究」と題した講演では、びわ湖が抱える諸問題(在来種・外来種の状況、岸辺の改変、水位の変化、貧酸素化)を例に挙げ、湖をめぐる諸問題について仮説を立てて検証するアプローチを紹介。また、自身がアマゾン川中流の岸辺に初めて降り立った時の驚きの写真を参照し、仮説がなくても、どんな生き物がどこにいるのかを丹念に調べて、発見を重ねていくような「未知から既知」を生み出す発見型のアプローチを説明しました。
山中教授は、仮説検証型・発見型いずれの研究スタイルも重要であること、とりわけ生物多様性をめぐる問題は世界経済とも関連していることから広い視野で物事を捉え、現地の状況に応じて柔軟な対応が求められることを強調。そして、参画校の生徒らには、「自分の興味を満たすことが研究の出発点。どんなアプローチであっても、皆が予測から検証へのドキドキ、誰も知らないモノを見つけるワクワクを体感するような研究活動に邁進して欲しい」とエールを送りました。


山中裕樹教授

山中裕樹教授


講演風景

講演風景

そして、参画校の高校生らが今後研究に取り組んでいく上で必要となる技術の伝授として、2種のワークショップ(水質調査の予備実験、プランクトン同定の予備実験)と採水キットを用いた環境DNAサンプリング手法のレクチャーが行われました。

関西チームのワークショップ講師を努めた株式会社リバネスの小玉悠然氏は、「同じ水域であっても地点により水質が異なり、棲んでいる生き物が異なる。水質調査によって人にとっては好ましいとは言えない結果が出たとしても、その環境を好む生き物もいるという事実から、生物多様性について考えてみて欲しい」と生徒らに問題提議。また、「フィールド調査にあたっては、面でみることが重要。スマートフォンに方位磁石や気象レーダーなどのアプリを入れて、自分たちの眼の前の環境はどのような状況で成り立っているかを広く、そして細やかに見て欲しい」とアドバイスしました。


水質調査のワークショップ風景

水質調査のワークショップ風景


株式会社リバネス 小玉悠然氏

株式会社リバネス 小玉悠然氏


プランクトン同定のワークショップ風景

プランクトン同定のワークショップ風景


顕微鏡で発見したプランクトンの一例

顕微鏡で発見したプランクトンの一例

最後に、参画校の高校生らが今後の研究計画についてワークショップと発表を行い、キックオフイベントは盛会のうちに終了しました。
龍谷大学 生物多様性科学研究センターは、2025年12月までの研究期間にわたって、研究面でのアドバイス面などで関わっていきます。


関西チーム・集合写真

関西チーム・集合写真