2024.06.21
農福連携事業の「おもや」と大宝神社から広がる人のつながり【社会共生実習】
(この記事原稿の一部は、実習活動の一環で受講生が関係者にお話をお聞きした内容を元に執筆しています。)
社会学部の「社会共生実習(農福連携で地域をつなぐ―「地域で誰もがいきいきと暮らせる共生社会に向けて」)」(担当教員:坂本清彦 准教授)では、6月1日に実習先の農福連携事業にとりくむ「おもや」(滋賀県栗東市)の利用者さん、スタッフの方々と、地元栗東市の大宝神社の「朝市」に参加しました。
農福連携事業とは、農業を通じて障がいを持つ方などの社会参加を促進する取り組みです。「おもや」では障がい者が農作業、農産物の出荷・加工・販売などを行うだけでなく、地域社会とのつながりを広げるさまざまな活動にも参加しています。その一環で地元栗東市の大宝神社が毎月1日に開催する月次(つきなみ)祭にあわせて、「朝市」にも参加されています。

実習受講生も6月1日の朝市に参加して、おもやの農産物やコーヒーの販売や、たき火で沸かしたお茶の参詣者へのふるまいなどをお手伝いしました。朝市にはおもやとご縁のある方々や、大宝神社にお参りに来られる方など、さまざまな人たちが集まります。実習生は、そうした方々とお話をして地域社会の交流の輪を広げました。
JR栗東駅近くにある大宝神社(だいほうじんじゃ)は701年に創建され、12世紀に制作された一対の狛犬(こまいぬ)が国の重要文化財に指定(京都国立博物館に寄託)されるなど長い歴史に彩られた美しい神社です。その一方で、多くの地元の人たちが参拝に訪れる「地域の神社」です。
特に毎月1日に開かれて穢れのお祓いも行われる月次祭(つきなみさい)には、いつもより多くの人が集まります。土曜日だった6月1日にはおよそ30人とさらに多くの地元の方が集いました。参加者の方、みんなが積極的に月次祭のお手伝いをされていたことが印象に残っています。
実習受入先の「おもや」が月次祭の朝市に来られるようになったのも、神社と地元のつながりから生まれた偶然からでした。宮司の荒井さんは地域との結びつきを大事にして、神社の行事で地元の農産物などを積極的に使っておられます。お祓いの時に知り合った「おもや」の杉田さんの農福連携事業を知り、月次祭で「おもや」の農産物などを売ってもらうことになりました。
今回の朝市にも「おもや」と大宝神社のご縁でつながった多くの人たちが集まりました。
立命館大学のラグビー部でコーチも務められた赤井さんは、耕作放棄地を復活させて作った新タマネギを売りに来られていました。中山間地の別の耕作放棄地も整えて蕎麦を作ったり、秋には「田んぼラグビー」*でも行う予定とのことで、わくわくするいろいろなアイデアを持っていらっしゃいました。
* 水を張った田んぼで、1チーム4人程度で行うラグビーで、激しい身体接触がなく、子どもも大人も女性も男性も泥まみれになって楽しめるスポーツ。
赤井さんの指導する立命館大学ラグビー部の主務とマネージャーの方、同大学食マネジメント学部の赤井さんの知り合いの先生のゼミ生3人も、タマネギの販売をボランティアとして手伝いに来られていました。タマネギはこの学生さんたちも一緒に育てたものだそうです。

生まれて間もない赤ちゃんを連れた若いご夫婦は今回初めて朝一に来られたそうです。栗東市内在住で、自分で食べる野菜などを育てたいと市内で場所を探していたところ、たまたま空いていた杉田さんの運営する貸農園を今年から借りることになったそうです。貸農園での交流の中で大宝神社のことをたまたま耳にされて今回朝市に来られたそうです。偶然がたくさん繋がって多くの繋がりができたとおっしゃっていました。

交通事故での長期の入院から半年前に退院し、万が一怪我をして周囲に迷惑をかけるのが怖くて毎日の散歩以外に交流の機会の少ない高齢の女性も、たき火の前に座って受講生と長い間会話していました。外に出て人と話すのが数週間ぶりだそうでたくさん話せて嬉しそうでした。
おもやで採れた作物を使った焼き菓子をお店で販売され、そのご縁がきっかけで朝市に訪れるようになった草津市でお店を経営する女性や、月始めに大宝神社への参拝を50年間続け、そのたびにご家族の生年月日を言い健康を祈っている男性にもお話をお聞きしました。この男性はおもやに近い小平井地区から来られ、おもやのこともご存じで知り合いがおられるそうです。数年前に荒井さんが宮司となってから月次祭が始まり、それ以降大宝神社に訪れる意義ができたのでうれしいと感じておられるとのことです。
このように、農福連携事業を行うおもやは障がい者の就労支援や農業を行うだけでなく、大宝神社の朝市などの場を通じて、その活動は地域の人びとのつながりを作り広げることにもつながっています。
社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。