2024.07.11
「地域課題発見演習」第3回フィールドワークを実施【政策学部】
2024年7月2日(火)、「地域課題発見演習」の第3回フィールドワークに学生17名と教員1名(清水万由子教授)が参加しました。
今回のフィールドワークでは、江戸時代後期創業の京和傘製造の老舗「日吉屋」を訪れました。私たちがこの科目で参加させていただいている真竹プロジェクトのメンバーであるヒサゴオオシマの大島大輔さんに案内していただき、京都の竹材需給についての講義を受けたあと、和傘工房を見学させていただきました。
京都の竹材需給についての講義では、京都で竹材の製造・加工業を行う「竹定商店」の取り組みを通して、竹材の特徴や需給の変遷について学びました。また、竹定商店は2019年より「竹コミュニティ事業」を企画・推進しており、放置竹林問題の解決と良質な竹の安定供給に向けたコミュニティの形成に取り組んでおられます。
竹材として重要なマダケは、繊維方向の伸縮がほとんどないという特徴があり、樽の「タガ」として必須の素材です。和傘の骨の部分には、細いながらも穴を開けて針金を通すことができる強度のあるマダケの節の部分が使われます。マダケは鉄やプラスチックでは再現できない特徴を持っていることを教えていただきました。
また近年、竹材は特注意匠材として建築分野での需要が伸びているようです。竹材をしならせることで他の木材で再現できないデザインを創り出すことができ、wabisabiやzenと呼ばれ海外からも人気が高まっています。
和傘工房の見学では、和傘を間近で見ながらその詳細について解説していただきました。和傘には大きく分けて番傘と蛇の目傘があり、それぞれの由来や使う場面および構造の違いに驚きがたくさんありました。竹材をもとに京都の歴史文化へと広がる大島さんの魅力的なお話を聞いて、人と自然と文化のつながりの奥深さに思いを馳せました。
また傘の骨を束ねる「ろくろ」という部品についても解説をしていただきました。これはエゴノキという木材で作られており、気候的に最も適した材が取れる岐阜県にて職人さんが生産されています。こちらも供給の安定化を目指したプロジェクトが行われているとのことです。
今回のフィールドワークでは、竹材の需給や特徴について、京都の伝統文化に触れながら学ぶことができました。特に「鉄やプラスチックでは代替できない特徴がある」ということを和傘の骨を手に取りながら知ることができ、竹材の必要性を肌で感じられたことがフィールドワークの醍醐味であったかと思います。竹を燃やして廃棄せずに建築材等に用いることは、カーボンニュートラルにもつながります。
今回の講義の中で、マダケを竹材にする適齢は3〜4年であり、用途によっては「油抜き(ゆぬき)」も行うことがあると学びました。私たちは前回・前々回のフィールドワークでマダケを移植するためにモウソウチク畑の整備を行ってきましたが、竹材が利用できるまでは先の長い挑戦になります。
未来を見据えて今できることに取り組むことが、サステナブルな社会をつくるために必要な視点です。日用品のほとんどが竹で作られていた時代より続く伝統産業から多くの知見を学び、現在起こっている地域課題を踏まえて、あるべき未来をつくり上げていくという発想が重要だと感じました。