2024.07.22
原田太津男教授が翻訳書『グローバリスト』(クイン・スロボディアン著)を出版
原田太津男教授(国際経済学科)翻訳(尹 春志氏との共訳)の書籍『グローバリスト』(クイン・スロボディアン著)が、2024年2月9日に白水社から出版された。
出版にあたって、原田太津男教授からのコメントです。
ネオリベラリズムというのは、行きすぎた市場自由化政策に対する批判的なレッテル貼りに使われすぎたせいで、ともすると学術的な有効性を疑う論者も存在するが、本書は、本格的歴史研究であり、これまでのアメリカのネオリベラル中心の思想史研究とも、1980年代以降の先進国の「小さな政府」論や2000年代の途上国に対する開発政策上の「ワシントン・コンセンサス論」といった政策論とも大きく異なる立脚点と見通しに立っている。
ハプスブルク帝国を理想的な秩序と見立てたジュネーブ学派のなかにネオリベラルの源流を見、かれらの政治運動を多様な思想家や実務家を含み込んだ一大群像史として描き出した本書は、大著ではあるが、一読いただければ、これまでにない多くの刺激的な知的興奮と発見に満ちていることがわかっていただけると思う。
本書に見られるようなヨーロッパで近年展開されてきた新しい思想史研究のスタイルに触発されたネオリベラル思想研究が、日本でも生まれ始めているようだ。訳者の一人として望外の喜びである。幸いにも、柴山桂太氏による書評が『週刊新潮』(2024年3月28日号)(https://www.bookbang.jp/review/article/774185)に、また、前田健太郎氏による書評が『朝日新聞』(2024年5月11日)(https://book.asahi.com/article/15262114)に掲載されるなど、さまざまな学問分野から一定の注目を得ていることも、申し添えておきたい。