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2024.08.01

森鷗外『高瀬舟』の真相は同意殺人か?オンライン高校生文学模擬裁判交流大会を開廷

全国の6校が対戦。参加校の高校生たちが検察側・弁護側の立場の役になりきり、立証・弁護活動を展開
< 8/10(土)オンライン開催、“傍聴人”はWebから要事前登録>

 

【本件のポイント】

  • 「国語とは言葉を通して人間を考える教科」であるという理念から開発された文学模擬裁判。法的思考力や刑事裁判の意義の理解にとどまらず、人間や社会を考える眼差しを深めることがねらい
  • 18歳から裁判員に選ばれる現代、高校生の司法参加に対応する法教育イベント
  • 森鷗外『⾼瀬⾈』をモチーフに独⾃に作成した教材をもとに、参加校の⾼校⽣たちが殺人か同意殺人かをめぐって、検察側・弁護側どちらかの⽴場の役になりきり、⽴証・弁護活動を展開

 

【本件の概要】
 龍谷大学文学部・札埜研究室は、2024年8月10日(土)に、全国6校の高校生が対抗する文学模擬裁判イベント「第4回夏のオンライン高校生文学模擬裁判交流大会」を実施します。当大会は2020年8月9日の初開催以来、選手権や交流大会などを含めて今回で12回目の開催で、大会の様子はどなたでも事前申込制で“傍聴”することが可能です。
 今回モチーフとした文学作品は『高瀬舟』で、兄弟間で起きた死の真相に迫るオリジナルの教材です(※)。死を望む弟の自殺を手助けしたと話す兄について、検察官は「殺人罪」を主張し、弁護人は弟の喉に剃刀を当てたことには間違いがないとしつつも、同意があったとして「同意殺人罪」を主張。現代においても被殺者の嘱託を受けもしくは承諾を得て殺すことは罪に問われます。今回の文学模擬裁判を通して、人間の生死について深く思考を巡らせ、検察・弁護の双方の立場から事件について徹底して議論を深める機会とします。

 

1.実施概要
- 名称:第4回夏のオンライン高校生文学模擬裁判交流大会
- 日程:2024年8月10日(土)9:30~17:30(終了見込)
- 会場:オンライン法廷(Zoom)
- 傍聴(参加):無料【下記URLから事前登録制】
- 主催:龍谷大学札埜研究室・オンライン高校生文学模擬裁判交流大会実行委員会
- 後援:龍谷大学国際社会文化研究所(札埜プロジェクト)、一般社団法人刑事司法

   未来、龍谷大学法情報研究会、京都教育大学附属高等学校模擬裁判同窓会、

   刑事弁護OASIS、株式会社TKC

 

2. 大会当日のプログラム(予定)【試合状況により、時間変更の可能性あり】
 9:30-11:30 第1試合 札幌龍谷(検察) VS 神戸海星女子学院(弁護)
 11:30-12:15 (休憩45分)
 12:15-14:15 第2試合 神戸女学院(検察) VS 江戸川学園取手(弁護)
 14:15-14:40 (休憩25分)
 14:40-16:40 第3試合 済美平成(検察) VS 上智福岡(弁護)
 17:00頃-17:30 講評、成績発表、表彰式 (終了後に振り返り交流会を予定)

 

3.出場校(6校・順不同)
 札幌龍谷学園高等学校(北海道)/江戸川学園取手高等学校(茨城)/
 神戸女学院高等学部(兵庫)/神戸海星女子学院高等学校(兵庫)/
 済美平成中等教育学校(愛媛)/上智福岡高等学校(福岡)

 

4.大会主催者問い合わせ先・プロフィール
  札埜和男(ふだの・かずお)准教授(本学文学部)
  TEL:075-343-3326(研究室直通) E-mail:fudafuda@let.ryukoku.ac.jp 

 

大阪府生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博士(文学・大阪大学)。現場での教員生活31年(中学校2年・高校29年)。そのうち担任20回、最初の3年間は社会科教員(国語・社会・英語の中高免許状所有)。


2017年度から岡山理科大学教育学部准教授として赴任し、2022年度から龍谷大学文学部哲学科(教育学専攻)に准教授として着任。これまで日本弁護士連合会主催の模擬裁判甲子園では、京都教育大学附属高校を過去11回大会中8回優勝、3回準優勝に導く。「模擬裁判師」と名乗り模擬裁判を広めるために全国各地へ指導に赴き、模擬裁判指導歴は数百回に及ぶ。
 

5.詳細・傍聴(参加)申込方法 ※申込期限:8月8日(木)17:00
 以下URLから詳細を確認の上、ページ内フォームに必要事項を入力しお申込み下さい。
 https://scri.rec.ryukoku.ac.jp/events/events-421/ 

 

6.今回の文学模擬裁判のシナリオ(※)
【事件概要(事件発生から起訴まで)】
 寛政2年神無月二九日酉刻頃、山城国北山衣笠にある自宅において、喜助という西陣に勤める空引(そらびき)職人の弟・幸助が、貧困から剃刀で自分の喉を切るという自殺を試みた。自宅に帰った喜助は弟の依頼を断り切れなくて、また弟を苦から救ってやりたいという思いから、剃刀で弟の喉を切って殺害するという事件が発生した。事件現場には偶然いつも弟の世話を頼んでいる近所の婆さんが入ってきて、その現場を目撃していた。同心である羽田庄兵衛は、当初「同意殺人」を疑わずそれで処断してもらうべく、上司(決裁官)の与力のところに「高瀬舟」に乗せて護送していたが、その最中に、喜助の様子(遊山船に乗ったような顔をしており、いかにも楽しそうで鼻歌を歌い出すか口笛を吹き始めるかのような様子であったこと、二百文の鳥目をもらって島での新生活を楽しみたいと述べていること)をみて、これは嘱託殺人ではなく「殺人罪」に問うべきだと考え与力(ここでは検察官)に訴えるに至った。そのため与力は、京都所司代(京都地方裁判所)に「殺人罪」で起訴した。
 こうして、この事件は検察官から京都地方裁判所に起訴状が提出され、公訴が提起された。検察官は「殺人罪」を主張し、弁護人は弟の喉に剃刀を当てたことには間違いがないとしつつも、同意があったとして「同意殺人罪」を主張した。
 


問い合わせ先:龍谷大学 研究部(瀬田) 国際社会文化研究所
Tel 077-543-7559  shabunken@ad.ryukoku.ac.jp https://scri.rec.ryukoku.ac.jp/