2024.08.29
アフリカ東部のマラウイ湖に棲むシクリッドの一種が、コイ科魚類の追星を主食とすることを解明【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】
コイ科魚類の追星(恋のシンボル?)を主食とする奇妙な習性を初記載し、研究成果を国際ジャーナルに発表
北海道大学大学院理学研究院の竹内 勇一准教授、愛媛大学大学院理工学研究科の畑 啓生教授、本学先端理工学部・生物多様性科学研究センターの丸山 敦教授らを中心とする国際研究グループは、世界一の魚種数(約800種)を誇るマラウイ湖において、野外で採取したシクリッド魚類の一種Docimodus evelynae(ドシモードス エベリナ)が、同所的に生息するコイ科魚類Labeo cylindricus(ラベオ シリンドリカス)の「追星(おいぼし)」を主に食べていたことを突き止め、Scientific Reports誌(Springer-Nature社)にて公表しました。
「追星(おいぼし)」とはコイ科魚類の口の周りに見られる、ボツボツしたイボのようなもの。日本に生息するコイ科魚類では、繁殖期を迎えたオスの口部にばかり見られるもので、メスを惹きつけたり他のオスを追い払うのに使われると考えられていることから、「恋のシンボル」とも言われます。今回見つかった「犠牲者」であるコイ科魚類Labeo cylindricusは、メスでも追星が見られるようで、この種の追星が何に使われているかは、よく分かっていません。なお、主な餌として追星を食べている魚の報告は、シクリッド魚類だけでなく、他の魚類においても前例がなく、図鑑に書き加わるような新発見です。
【⇒詳細:プレスリリース】
英文タイトル:Preying on cyprinid snout warts (pearl organs) as a novel and peculiar habit in the Lake Malawi cichlid Docimodus evelynae
タイトル和訳:コイ科魚類の追星を捕食するというマラウイ湖のシクリッドDocimodus evelynaeにおける新規で奇妙な食
著者:
竹内 勇一(北海道大学 大学院理学研究院 准教授)、畑 啓生(愛媛大学 大学院理工学研究科 教授)、佐々木 瑞希(帯広畜産大学)、Andrew MVULA(龍谷大学)、水原詞治(龍谷大学)、Bosco RUSUWA(マラウイ大学)、丸山 敦(龍谷大学 先端理工学部 教授)
掲載誌:国際オンライン専門誌「Scientific Reports」(Springer-Nature社)
DOI:10.1038/s41598-024-69755-z
公表日:日本時間2024年8月28日(水)午後6時(オンライン公開)
追星は一見すると栄養素が無さそうにも見えますが、ケラチンたんぱく質で構成され、魚やエビなどの他組織と同等のカロリーを持つことが、本論文のなかでも示されています。追星はコイ科魚類に一年中みられることから、利用が持続可能な資源です。このシクリッドにとって、追星はエネルギー豊富な食物源として機能し、マラウイ湖の多様で競争の激しい生態系の中で、生存可能性に貢献していると考えられます。
捕食者と被食者の相互作用(食う食われるの関係)は、生物多様性を支える重要な基盤と考えられています。本研究の結果は、熱帯地域における生物群集の多様性に富む生態系を形作るメカニズムを理解する上で重要な情報を提供するものです。
今回の共同研究に関して、丸山 敦教授(本学先端理工学部/生物多様性科学研究センター・兼任研究員)のコメントと写真を紹介します。