2024.11.15
「実践真宗学研究科 実習報告会を開催しました【文学部】【実践真宗学研究科】」
実践真宗学研究科では、体系的な理論研究と実習を中心とした現場での活動を軸に、”理論と実践”を取り組んでいます。
実践真宗学研究科において重要な位置づけである実習について、毎年、「実習報告会」を開催し、修了生が実習の成果を研究科の内外に向けて発信しています。
今年度は、10月31日(木)に龍谷大学実践真宗学研究科 実習報告会を開催しました。
実習報告会の内容について、先輩たちの実習報告を聞いた、実践真宗学研究科1年生の学生の皆さんの声をもとにご紹介します。
1.「地方過疎寺院でもできる伝道活動」
発表者:研究科3年 島井さん
今回、島井さんの発表の中では、過疎地域の葬儀以外の伝道の可能性として宿坊が挙げられていた。実際に宿坊を行っている和歌山県の寺院に訪れ自身の体験・住職へのインタビューを通して宿坊・キャンプ場を運営する上での問題点を挙げられていた。
過疎寺院での宿坊の問題点として挙げられていた点として、
・宿坊を運営するための人員を必要とする
・外国人の対応が必要なため一定の語学力が必要である
・宿坊を利用するだけで門徒が増えているわけではない
という点等の問題点から、過疎地域寺院でもできる伝道活動の条件として、
・1回あたりの値段が安価である
・近所の方が気軽に参加できる
・実施する側が疲弊しない
等が挙げられていた。
質疑応答では、都会でも宿坊が存在しているが、過疎地域寺院=宿坊が良いということではないのではないか、という質問に対して、都会では生活音が多く、過疎地域寺院ならではの静かさなどがないという点などを挙げて答えられていた。
(コメント 研究科1年 藤田さん)
2.「仏教的背景のある高齢者施設における仏教者介入の可能性 ―職員の実態調査より―」
発表者:研究科3年 金尾さん
今回の金尾さんの発表では、仏教的背景を持つ高齢者施設において僧侶が介入することの意義や役割について、施設職員へのアンケート調査と聞き取り調査の結果をもとに発表して頂きました。
近年では、高齢者施設における看取りの件数が増えつつあり、今後看取りの場としての役割が大きくなると考えられるため、施設職員が利用者との死別をどのように受け止めるのかということが課題になるという問題意識から、施設職員への調査をもとに僧侶介入の可能性を探求されていました。そして調査の結果、施設職員は僧侶の介入に対して、看取りの場で悲しんでいる人に寄り添うことや、利用者との日常的なコミュニケーションなどの役割を期待しており、僧侶は看取りの場のみならず利用者が元気な時からの関わりが求められていることが明らかになったということでした。
また、発表の最後に、高齢者施設における僧侶介入には様々な課題はあるものの、その可能性は十分にあり、僧侶にしかできない役割を示すことが今後重要になるということをはっきりと述べられていたことが印象的でした。
(コメント 研究科1年 森谷さん)
3.「浄土真宗における葬送儀礼の課題と可能性 ―先祖供養意識に着目して―」
発表者:研究科3年 中山さん
中山さんは、浄土真宗の葬儀儀礼における僧侶と門信徒の先祖供養意識の違いを研究しています。寺院に求められているのは「先祖供養」で、多くの人がこれを宗教心として理解しています。また、門信徒の中には「先祖供養=追善供養」という理解が広がっています。実際には、浄土真宗のすべての仏事は「報恩感謝」の場であり、追善は不要とされています。そのため、この誤解を排除する必要がある一方で、門信徒の思いや心情を否定することは適切なのか、中山さんは疑問を呈していました。
長崎県では、「精霊流し」と呼ばれる爆竹を用いた伝統行事が行われており、これは盆前に逝去した人の遺族が故人を偲ぶためのものです。中山さんは、この長崎県の浄土真宗の寺院に実習に赴き、「先祖供養」という言葉についての考え方を調査したと述べています。
現代の先祖供養意識を明らかにすることで、僧侶と門信徒の葬儀儀礼に対する考え方の違いを浮き彫りにすることができます。
しかし、「追善供養」という浄土真宗の教義とは異なる心情を、阿弥陀仏の報恩感謝の行に変換するには、依然として課題があると思いますが、この試みが成功すれば、門信徒の心情を尊重しつつ葬儀儀礼を行うことが可能になり、それを通じて浄土真宗のみ教えを広めていく道が開けるのではないかと感じました。
(コメント 研究科1年 柳川さん)
今回の実習発表会を経て、発表者は、これまでの実習に対する手応えや修士論文の執筆に向けての気づきを得ることができました。
また、先輩たちの報告を聞いた学生たちは、今後取り組んでいく自らの実習に向けて、たくさんヒントを得られたことと思います。


森田先生、葛野先生からも貴重なご意見をいただきました。