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2025.07.22

法学研究科・羽渕有稀さんが世界最大の政治学の学会、International Political Science Associationで報告【研究部/法学部】

報告テーマ:「ユダヤ系イスラエル人の民主主義に対する見方:司法改革の事例」

 世界最大の政治学の学会「International Political Science Association(IPSA)」第28回大会が韓国の首都ソウルで開催されました。このIPSAで法学研究科修士1回生の羽渕有稀さんが、2025年7月13日のパネルセッションにおいて英語による研究報告を行いました。セッションはヨルダン大学戦略研究所のWalid Alkhatib博士が司会を務めるQuantitative Analysis of Middle East Politics(中東政治の計量分析)であり、羽渕さんは法学研究科・濱中新吾教授との共著論文 The Jewish Israeli Perspective on Democracy: The Case of Judicial Reform(ユダヤ系イスラエル人の民主主義に対する見方:司法改革の事例)の内容を15分間で報告しました。


写真左より法学研究科・羽渕有稀さん、濱中新吾・法学部教授

写真左より法学研究科・羽渕有稀さん、濱中新吾・法学部教授


中東政治の計量分析に関するパネルセッションの様子

中東政治の計量分析に関するパネルセッションの様子

 報告内容の要旨は以下のとおりです。2023年1月以来、イスラエルではベンヤミン・ネタニヤフ首相が主導する司法改革をめぐり、激しい議論が続いています。改革案は司法の独立性に対する政府による侵害だとして反対する意見が少なからずある一方で、司法によるネタニヤフ首相への不当な介入だとして改革を支持する声も上がっています。一般的に、司法改革はイスラエル民主主義の退行の兆候と捉えられています。しかし、ネタニヤフ首相と改革を支持する人々が、実際には民主主義の原則と価値観を無視しているのではないかと問うことは適切です。本研究は、コンジョイント実験を用いたオンライン調査の結果に基づき、イスラエル国民の民主主義の価値観と原則に対する態度を評価します。さらに、サンプルはネタニヤフ首相に対するスタンスに基づき、賛成派と反対派の2つのグループに分けられ、それぞれのサブグループが個別に分析されました。その結果、ネタニヤフ首相に対する否定的な感情は、民主主義の原則や価値観への支持と関連している可能性があることが示唆されました。

 羽渕さんの報告に対して、Alkhatib博士と慶應義塾大学法学部の錦田愛子教授が質問とコメントを行いました。質問およびコメントはデータセットが一時点であることによる議論の限界と、羽渕さんと濱中教授が行ったオンライン調査のタイミングに2023年10月より続くガザ戦争の影響が見られることへの議論の不足が含まれていました。さらにフロアからはユダヤ系イスラエル人のシオニズム(同国の国家原理)性についても質問がなされました。質疑応答は濱中教授が担当し、盛況のうちにパネルセッションは終了しました。


IPSAパネルセッション参加メンバーとの集合写真

IPSAパネルセッション参加メンバーとの集合写真