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2025.11.13

「芸」の奥を味わう『野暮は承知の落語家論――人生と芸の交叉を読む』を出版【社会学部】

落語家にとって「芸」とは何か。人生の歩みがどのように芸に生かされ、芸が磨き上げられてきたのか。落語家一人一人が人生をかける芸の魅力はどこにあるのか。

35年間、落語を聴き続ける社会学者が、落語家の「人生と芸」を軽妙な筆致で描く。

落語の基本的な知識を押さえたうえで、本人や関係者が語る言葉、評論家の文章、通った高座の記憶から、落語家の古今亭志ん朝、立川志の輔、柳家喬太郎、春風亭一之輔、俳優の小沢昭一、講談師の神田伯山のライフヒストリーを丁寧に浮き彫りにする。

古典から新作まで、様々な落語や芸を練り上げる6人に通底する「承知のうえでの野暮」=観客を選ばない芸という側面に光を当て、笑いという希望を多くの人に与える落語家の「人生と芸」の奥深さを描き出す。

目次
まえがき
第1章 笑いという希望――落語
第2章 若旦那のキョウジ――古今亭志ん朝
第3章 座布団の上の演劇――立川志の輔
第4章 「間」の可能性――柳家喬太郎
第5章 生活者の了見――春風亭一之輔
第6章 新天地からふるさとへ――小沢昭一
第7章 野暮さえも飼いならす――神田伯山
野暮は承知で――あとがきにかえて


【工藤保則教授による読者に向けてのコメント】
 年を取るにつれ、人生について考えることが多くなりました。「あの時はこうだったなぁ」とか「この人と出会ったおかげで今があるなぁ」とか。
 恩師のひとりが定年退職される時、その先生と私との関係に思いを巡らせながら、落語家の立川談志師匠と立川志の輔師匠の師弟関係についての文章を書きました(この本の第3章のもとになったものです)。ひょんなことから、それを志の輔師匠が読んでくださり、わざわざ電話をかけてくださいました。思いもよらぬことで、びっくりしました。そして、その時、「落語家さんたちについての本を書きたい」と強く思いました。それから、こつこつ文章を書き溜めていき、4年かかって一冊の本にすることができました。
 古今亭志ん朝、立川志の輔、柳家喬太郎、春風亭一之輔、俳優の小沢昭一、講談師の神田伯山の「人生と芸の交叉」について書き終えて感じたのは、「人との出会いや経験した出来事が、その人と芸を作っている」ということです。まったく無名な私の人生も同じです。
 落語や落語家についてあれこれ語るのは、野暮でしょう。いち落語好きが野暮を承知で書いたということで、お許しいただきたいと思います。

追記
 出版後、志の輔師匠からまた電話をいただきました。伯山先生はXで紹介してくださいました。喬太郎師匠と一之輔師匠からは葉書をちょうだいしました。
人生、どこでどんないいことがあるか、わかりません。

【書籍情報】
タイトル:野暮は承知の落語家論――人生と芸の交叉を読む
著  者:工藤保則
価  格:2,400円+税
出  版  社:青弓社
発  売  日:2025年10月10日

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