2026.01.28
夏目漱石『こころ』を題材に「自殺関与」をめぐる問いを考える。オンライン高校生文学模擬裁判選手権を開廷
全国の13校が対戦。参加校の高校生たちが検察側・弁護側の立場の役になりきり、立証・弁護活動を展開
< 2/1(日)オンライン開催、“傍聴人”はWebから要事前登録 >
【本件のポイント】
- 「国語とは言葉を通して人間を考える教科」であるという理念から開発された文学模擬裁判。法的思考力や刑事裁判の意義の理解にとどまらず、人間や社会を考える眼差しを深めることがねらい
- 18歳から裁判員に選ばれる現代、高校生の司法参加に対応する法教育イベント
- 夏目漱石『こころ』を独自に構成した教材を用い、参加校の高校生たちが、言葉や関係性が人生に及ぼす影響や社会の向き合い方について考察し、多角的な議論を展開
【本件の概要】
龍谷大学文学部・札埜研究室は、2026年2月1日(日)に、全国13校(12チーム)の高校生が対抗する文学模擬裁判イベント「第6回オンライン高校生文学模擬裁判選手権」を実施します。当大会は2020年8月9日の初開催以来、選手権や交流大会などを含めて今回で18回目の開催で、大会の様子はどなたでも事前申込制で“傍聴”することが可能です。
本大会では、夏目漱石『こころ』をモチーフに構成した独自の教材(※)を用い、原作に描かれる人間関係や心理の葛藤を、現代の刑法における「自殺教唆罪」が成立するか否かという法的視点から考察します。本教材は、命の尊さを前提としつつ、被告人が被害者を直接傷つけたわけではない状況において、言葉や態度、関係性が他者に与えうる影響を慎重に考察することを目的として構成されています。高校生たちは、遺書や日記、住居の間取りといった文学作品に基づく資料を証拠として丁寧に読み解きながら、人の内面に生じた苦悩や孤独をいかに理解し、社会や法はそれにどう向き合うべきかを、検察・弁護双方の立場から議論します。
1.実施概要
- 名 称:第6回オンライン高校生文学模擬裁判選手権
- 日 程:2026年2月1日(日)9:30~17:00(終了見込)
- 会 場:オンライン法廷(Zoom)
- 傍聴(参加):無料【下記URLから事前登録制】
- 主 催:龍谷大学札埜研究室・オンライン高校生文学模擬裁判選手権実行委員会
- 後 援:龍谷大学国際社会文化研究所(札埜プロジェクト)、
一般社団法人刑事司法未来、龍谷大学法情報研究会、京都教育大学附属
高等学校模擬裁判同窓会、株式会社TKC、刑事弁護オアシス
2. 大会当日のプログラム(予定)
9:30 〜 Zoom入室開始
9:40 〜10:00 開会式、出場校紹介、選手宣誓
10:00〜10:30 対戦校及び立場(検察側・弁護側)の発表、各法廷Zoomへ移動
10:30〜12:20 第1試合
12:20〜13:30 (昼休憩70分)
13:30〜15:20 第2試合
16:15〜17:00 講評、成績発表、表彰式(17:00大会終了後に振り返り交流会を予定)
3. 出場校(都道府県)※五十音順
旭川東高等学校(北海道)/神⼾海星⼥⼦学院⾼等学校(兵庫)/神戸女学院高等学部
(兵庫)/創志学園高等学校(岡山)/中央大学杉並高等学校(東京)/
東京学芸大学附属国際中等教育学校(東京)/宮城野高等学校(宮城)/
森村学園高等部(神奈川)/洛星高等学校(京都)/麗澤高等学校(千葉)/
早稲田実業学校高等部(東京)/早稲田大学高等学院(東京)
4.大会主催者問い合わせ先・プロフィール
札埜和男(ふだの・かずお)教授(本学文学部)
E-mail fudafuda@let.ryukoku.ac.jp
大阪府生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博士(文学・大阪大学)。現場での教員生活31年(中学校2年・高校29年)。そのうち担任20回、最初の3年間は社会科教員(国語・社会・英語の中高免許状所有)。2017年度から岡山理科大学教育学部准教授として赴任し、2022年度から龍谷大学文学部哲学科(教育学専攻)に准教授として着任。これまで日本弁護士連合会主催の模擬裁判甲子園では、京都教育大学附属高校を過去11回大会中8回優勝、3回準優勝に導く。「模擬裁判師」と名乗り模擬裁判を広めるために全国各地へ指導に赴き、模擬裁判指導歴は数百回に及ぶ。
5.詳細・傍聴(参加)申込方法
以下URLから詳細を確認のうえ、ページ内のフォームに必要事項を入力しお申込みください。
https://scri.rec.ryukoku.ac.jp/events/260201/ ※申込期限: 1月30日(金)18:00
6.今回の文学模擬裁判のシナリオ(※)
【『こころ』裁判・事件概要(事件発生から起訴まで)】
明治34年1月27日未明、東京市小石川区小石川同心町にある素人下宿において、清沢満之(きよさわみつゆき)という帝国大学の学生が、頸動脈を切って自殺した。現場の机の上には遺書が残されていた。第一発見者は同じ下宿で隣部屋に住む鎌倉先生(かまくらさきお)という同級生の友人であった。その後警察で鎌倉を事情聴取したが、当初は事件性がないだろうと思われた。念のため、自殺現場にあったナイフや遺書や筆で書き損じられた紙などとともに、被害者の部屋にあった書籍や書類を押収した中に、日記帳が発見された。記述内容を読むと、それは被害者が生前綴っていた日記であるとわかった。そこには日々の事実などが記されていた。他の証拠資料と合わせて日記を丁寧に読み進めていくうちに、被害者の自殺には友人である鎌倉が関与していることが読み取れた。確かに鎌倉は被害者を直接には殺してはいないが、被害者が下宿先のお嬢さんである静を好きだったことを知りながら、被害者に精神的ダメージを与える言葉を投げかけたこと、抜け駆けして結婚を決めたことなど、被害者を自殺に追いやったことを十分に推測させる内容であった。遺書や書き損じの紙に書かれた内容などを考え合わせた結果、この事件は検察官から東京地方裁判所に起訴状が提出され、公訴が提起された。検察官は鎌倉が被害者に自殺を実行する意志を起こさせたということから「自殺教唆罪」を主張し、弁護人は被害者の自殺に鎌倉は全く関わりがないとして「無罪」を主張した。
問い合わせ先:龍谷大学 研究部 国際社会文化研究所
Tel 075-645-7922 shabunken@ad.ryukoku.ac.jp https://scri.rec.ryukoku.ac.jp/