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2026.03.03

濱中新吾教授の共著論文“Why anti-LGBTQIA+ law is supported in Iraq? An evidence from conjoint analysis”が国際学術誌に掲載【研究部/法学部】

イラクにおけるLGBTQに対する不寛容の文化的・政治的要因を実証分析

 この度、濱中新吾教授(本学法学部)の共著論文が国際学術誌 British Journal of Middle Eastern Studies (SSCI: Journal Citation Factor Q1・地域研究分野)に掲載されました。同誌は中東地域の政治・社会・文化に関する研究を扱う主要な査読付き学術誌です。

 今回発表した共著論文は、イラク国会が成立させた反LGBT法について比較政治学の手法を用いて分析し、中東地域の研究に新たな視座をもたらすものです。

研究のポイント
・イラクでは2003年以降、民主的制度が導入されたにもかかわらず、性的少数者に対する差別的態度や排除が強まっている。
・本研究は、反LGBT法がイスラーム的価値観の強い人々の間で支持されていることをまず指摘した。そのうえで、高学歴リベラル層であっても反LGBT法が西側諸国からの批判があり、政府報道官がこれを内政干渉だと非難すると、同法に対する支持態度を示すことが明らかになった。
・オンライン調査実験(コンジョイント分析)を用いて、市民がどのような要因に基づいて政治的選択を行うのかを分析し、反LGBT法が支持される条件を個人というミクロレベルで明らかにした。

研究の革新性
 民主化は一般に少数者の権利拡大をもたらすと考えられてきましたが、本研究はその前提に再検討を迫るものです。
 特に、民主化後の社会においても多数派の価値観や政治的動員のあり方によっては、むしろ不寛容が制度的に強化され得ることを、個人レベルの実証データに基づいて示しました。
 また、中東地域で性的少数者に関する態度を、大規模な実験手法によって分析した研究は限られています。これは不寛容が中東域外から批判されることを現地の人々が認知しており、通常の世論調査では彼らの真意を聴取することが困難であるためです。
 中東地域はイスラームの信仰が強く、概して性的少数者に対する不寛容が強い地域ですが、たとえ高学歴リベラル層でもナショナリズムが喚起されると、同性愛嫌悪を合法化する法律を支持することが明らかになりました。本研究は中東研究におけるジェンダー政治に新たな知見を提供するものです。

論文掲載情報
 雑誌名: British Journal of Middle Eastern Studies(Routledge 発行)
 タイトル:Why anti-LGBTQIA+ law is supported in Iraq? An evidence from conjoint analysis
 著者:濱中 新吾(龍谷大学)、山尾 大(九州大学)
 DOI:https://doi.org/10.1080/13530194.2026.2632198
 オンライン掲載:2026年2月22日(オープンアクセス)

研究資金:
科研費・挑戦的研究(萌芽)「中東社会におけるLGBT容認の水準と社会発展理論の構築」(研究代表者 濱中新吾)22K18520
科研費・基盤研究(A)「歴史的シリアにおける国家変容の研究」(研究代表者 末近浩太)23H00043

※カバー画像は、イラク中部・カルバラー県、イスラム教シーア派の聖地の参考イメージ。