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2026.03.10

「釣り」と「気候変動」のデータの解析により、琵琶湖固有の魚食魚「ハス」の個体群減少が明らかに -北海道教育大学と龍谷大学による13年間の共同研究の成果が国際学術専門誌に掲載-


【本件のポイント】

  • 国内のコイ科魚類で唯一の魚食魚であり、琵琶湖淀川水系に固有の「ハス」は、40年以上にわたって漁獲高が減少しているが、環境省レッドリストは、同じ琵琶湖のホンモロコほど絶滅危惧されていない。
  • 2011-2023年に実施した琵琶湖沿岸での「釣り」による調査などで、「ハス」の個体群が一貫した減少傾向にあることを明らかにした。ハスの保全対策に取り組む必要性が社会的に強まることが期待される。
  • 本成果は、国際学術専門誌「Aquaculture, Fish and Fisheries」にて2026年2月26日付で公開された。

琵琶湖西岸の砂礫底の地点で釣り上げたオスのハス。
ハスの口元には使用したスピナー型のルアー(Myran社製)が写っている。

 

【本件の概要】
■背景:固有魚ハスを研究する必要性
 ハスは、国内のコイ科魚類で唯一の魚食魚という点でも保全の必要性が高い魚種です。かつ、滋賀県の漁獲高データは近年不漁の続くアユと同様、40年以上にわたって継続的な減少を示しており、回復の兆しを見せる在来魚種もある中、絶望的な様相を示しています。しかし、環境省レッドリストでの扱いはII類(vulnerable)とされており、同じ琵琶湖のホンモロコ(IA類)ほどは危惧されていません。漁獲量の減少は資源量の減少だけでなく漁獲努力量(出漁数や捕獲効率)の影響も強く受けるため、ただちに保全活動を喚起しないことは、しばしば見られる現象です。

 

■研究内容①:釣りによる、減少傾向のクロスチェック
 そこで本研究では、シンプルな手法に立ち返り、足かけ13年間続けた「釣り」データの解析によって、ハスが減少しているのかを確かめることにしました。本種の成魚はほぼ完全な肉食性で、高い遊泳力で捕食対象の魚を追尾して食べるので、ルアーを投げて泳がせることで捕食行動を誘引できる点、ルアーの飛距離は最大で40 m以上は見込めるので、投網や手網などの手具よりも広範囲を有効に探れるという利点がありました。熟練した1名のみが同一の方法で釣りを行うことで、科学的な解析を可能にしました。
 解析の結果、ハスが砂地や礫帯を好むという先行研究(今村2018)の知見が補強され、「釣りをしていない場所でも、ハスが釣れる確率が分かる」だけの情報を蓄積することができました。そして、残念ながら、直近13年間も、ハスの検出可能性が低下し続けていることが示されました。漁獲量の減少と一致するこの結果は、ハスが減っていると考えることの妥当性を示しています。

 

■研究内容②:原因の1つとしての、琵琶湖の気候変動
 なお、ハスは川と湖を行き来する高次捕食者であるため、その減少原因の候補は多岐に渡ります。例えば、本種の琵琶湖の流入河川へ遡上して繁殖するという生態から、その動態は琵琶湖岸と河川の改修の影響を受けるでしょう。流入河川の瀬切れや簗漁も影響します。また、ハスはアユ食への依存度が高いため、記録的不漁の続くアユ個体群の増減からも強く影響を受けます。ひいては、アユの餌となる動物プランクトンや生産者から連鎖した影響を受けます。
 本研究では、国交省が継続的に記録し公開している水温や水位のオープンデータの解析からの考察として、2017年ごろから高水温と低水位が同時に発生する傾向があること、水温25度以上または30度以上での積算温度を計算すると、2022年以降は高温化が一層顕著であること、などが示されました。つまり、気候変動の影響は琵琶湖においても顕在化しており、ハスの減少にも寄与している可能性が示唆されました。

 

■研究の意義:トッププレデターの役割
 ハスのような高次捕食者の激減や絶滅は、生態系全体のバランスを崩すことが、さまざまな生態系で指摘されています。仮に他の在来魚種が回復したとしても、ハスが不在であれば琵琶湖の生態系機能の幾つかは復元されないでしょう。したがって、砂底や礫底の(ハスが捕食行動しやすい)湖環境の広範囲での保全、水温上昇と水位の低下が繁殖のための遡上に負の影響を与えている可能性、などに鑑み、琵琶湖の象徴であるアユの減少を食い止めることと並行して、ハスの保全対策に取り組んでいく必要があります。

 

■■■ 発表論文 ■■■
リンク:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aff2.70200
掲載先:国際オンライン学術専門誌「Aquaculture, Fish and Fisheries」(Wiley社)
題 目:Persistent decline of the piscivorous cyprinid, Opsariichthys uncirostris, in Lake Biwa despite recovery trends among other native species
著 者:今村彰生(いまむらあきお):北海道教育大学未来の学び協創研究センター准教授
                      ・・・総括・現地調査・データ解析・執筆 
    丸山敦(まるやまあつし):龍谷大学先端理工学部教授 ・・・解析・執筆
研究助成:JSPS科学研究費助成 基盤研究C No.16K00630

 

 

■■■ 転載/加工可能な論文中の図  (Creative Commons Licenses CC-BY に準拠)■■■


論文のGraphical Abstarct用の写真
琵琶湖西岸の砂礫底の地点で釣り上げたオスのハス。
ハスの口元には使用したスピナー型のルアー(Myran社製)が写っている。


FIGURE 2 Yearly change of the probability of three-lips detection by the lure-angling for each lake bottom substrate (gravel, sand, and others), predicted by using the best GLM, in which the median was calculated with the difference of overhang-tree-presence considered. The size of the circles reflects the number of records for each fiscal year, starting on 1 March: data for all the sites were included. (A); data for multiply visited sites were analyzed analysed (B); data for visited-once sites were included (C).

 

 

お問い合わせ先:
●北海道教育大学未来の学び協創研究センター 准教授 今村彰生(いまむらあきお)
TEL: 011-778-0225  

E-mail: ginryou715@yahoo.co.jp ; imamura.akio@s.hokkyodai.ac.jp
Webサイト:https://note.com/light_loris1678
●北海道教育大学総務企画部総務課広報・基金グループ
TEL: 011-778-0231  E-mail:koho@j.hokkyodai.ac.jp
 


問い合わせ先:龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
TEL 077-543-7746 ryukoku.biodiv@gmail.com https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/