2026.07.23
特別講演「LIXILから川島織物セルコンへ 川島織物セルコンにハマった」川島織物セルコン代表取締役会長・山口進氏にご講演いただきました【経済学部】
6月9日、経済学部の専門科目「地域産業活性化プロジェクトⅠ(京の老舗と不易流行)」(担当:辻田素子教授)では、株式会社川島織物セルコン代表取締役会長の山口進氏をお招きし、ご講演いただきました。
本授業では、老舗企業が培ってきた技術やノウハウ、価値観、地域社会とのつながりなどが、新たな価値の創出にどのように結びつき、企業の存続可能性を高めているのかを考察しています。学生たちはこれまでに、同社の本社・工場・織物文化館を訪問し、糸を撚り、染め、織り、仕立てるまでの一貫したものづくりの現場にふれてきました。また、京都迎賓館では、同社が手がけた壁面装飾「麗花」を通じて、伝統技術が現代の空間づくりにどのように生かされているのかについて理解を深めました。
講演では、山口氏がご自身のこれまでの歩みを交えながら、川島織物セルコンの経営についてお話しくださいました。山口氏はLIXILグループで赤字事業の立て直しに何度も取り組んでこられた経験を持ち、シンガポールを拠点に、同グループのASEAN地域の事業を牽引されていた国際経験豊富な経営者でもあります。
一方、川島織物セルコンは1843年創業の長寿企業で、主な市場は国内です。絹、綿、ウール、ポリエステル、金糸、銀糸、箔糸など多様な素材を扱い、手織りから自動織機までを使い分けています。製品は、帯のような小さなものから、劇場を飾る大きな緞帳、カーテン、カーペットまで幅広く、山口氏が語られた「引き出しの多さ」が同社の大きな魅力となっています。
2014年に川島織物セルコンに着任された山口氏は、事業の立て直しに取り組むなかで、社員のモチベーションを大切にされてきたと話されました。同社の強みは、手間のかかる仕事に向き合い、細部にこだわり、難しい注文にも真摯に取り組む社員の意欲そのものにあると考えておられたからです。
講演の中で、山口氏は、同社の社員について「好きなことを好きと言える人が多い」と語られました。この言葉は、学生たちにも強く印象に残ったようです。講演後の振り返りでは、若手社員がどのように技術を学び、仕事のどのようなところにやりがいや面白さを感じているのかを聞いてみたいという声が寄せられました。学生たちが同社のものづくりを、経営や組織のあり方と結びつけて考えようとしていることがうかがえました。
また、LIXILグループからのMBO(マネジメント・バイアウト)による独立についても学生たちの関心が高く、山口氏は、川島織物セルコンを次の時代に残すための選択として、独立に向けた準備を早くから進めてこられていたことを説明されました。
伝統を守ることと新しい表現に挑むこと、利益を上げることと美を追求することなど、山口氏のお話からは、一見すると対立する目標を同時に抱えながら挑戦し続ける経営のあり方にふれることができました。学生たちにとって、今回の講演は、180年余りの歴史を刻んできた老舗企業が何を守り、何を変え、何のために続いていくのかを考える貴重な機会となりました。
その後、学生たちは社員の方々へのインタビューも行い、技術継承、価値の伝達、環境への取り組みなどについて、さらに考察を深めています。見学や講演、聞き取りを通じて得た情報を整理し、後期の「地域産業活性化プロジェクトⅡ・Ⅲ」へと展開していく予定です。最終的には、一連の成果を一冊の書籍としてまとめることを目指しています。