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2018.06.13

第2回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を開催

多様な視点からアプローチする「龍谷・犯罪学」

2018年5月22日、龍谷大学 犯罪学研究センター第2回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を、本学深草学舎 至心館1階で開催し、約25名が参加しました。
今回の研究会では、牧野 雅子(犯罪学研究センター博士研究員)、中根 真(本学短期大学部 こども教育学科教授・犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長)の2名による発表が行われました。

研究会前半では、『捜査機関の性暴力認識 —「性犯罪」加害者に着目して』をテーマに、牧野 雅子(犯罪学研究センター博士研究員)による発表が行われました。


牧野 雅子(犯罪学研究センター博士研究員)

牧野 雅子(犯罪学研究センター博士研究員)


本発表では、社会学・ジェンダー論に立脚した、捜査機関における性暴力認識についての見解が紹介されました。

捜査記録や公的資料の言説分析から、性犯罪事件では、性暴力は男性生来の性欲(本能)によって起こるという前提で、捜査が進められていることが分かりました。この認識は、誤りであるばかりか、行為者の加害性を薄め、被害者に責任を転嫁し、性暴力を容認する「強姦神話」に他なりません。しかし、裁判でもこの「強姦神話」は訂正されるどころかなぞられ、以後の捜査で立脚すべき知見として積み上げられていきます。いわば、刑事司法過程が「強姦神話」の再生産の場となっているのです。
性暴力の抑止、そして被害者保護のためにも、法の運用に関わる公的機関の性暴力認識は問われなければなりません。

今後は、当事者へのインタビューや、統計分析などの手法を取り入れながら、さらに「性犯罪」に関する研究を深めていきます。

続いて研究会後半では、『保育事業における非行予防の機能・役割に関する歴史的研究』をテーマに、中根 真(本学短期大学部 こども教育学科教授・犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長)による発表が行われました。


中根 真(本学短期大学部 こども教育学科教授・犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長)

中根 真(本学短期大学部 こども教育学科教授・犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長)


本研究は2017年度に学内公募で採択されたもので、現在は犯罪学研究センターの「保育と非行予防」研究ユニットで個人研究が進められています。

発表では、保育の歴史的源流にみる非行予防、犯罪予防に着想を得て、犯罪の社会学的要因への働きかけの1つとしての家庭、「幼少期の子どもやその親への働きかけ」に焦点をあてた事例が紹介されました。具体的には、財団法人弘済会の保育事業の歴史的資料から、1920年代における大阪市内の保育所家庭会に注目し、非行予防のための「親教育プログラム」と考えられる、小遣銭の節減と買い食い習慣の改善のための保育児名義貯金がどのように展開されていたのかが明らかにされました。また、子どもの食生活(間食、買い食い等も含む)と非行とは密接不可分であり、「古くて新しい問題」であることが再確認されました。

今後は、現代社会における「子どもの貧困」の深刻化を受け、子ども食堂が全国的な拡がりを見せているなか、本研究の知見をふまえて現代的な意義や示唆を導くよう努めていきます。



「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」は、犯罪学研究センターに関わる研究者間の情報共有はもとより、その最新の研究活動について、学内の研究員・学生などさまざまな方に知っていただく機会として、公開スタイルで開催しています。
今後もおおよそ月1回のペースで開催し、「龍谷・犯罪学」に関する活発な情報交換の場を設けていきます。



*次回は、7月17日(火)18:15-19:45(場所:至心館1階)に予定しています。
当日の発表テーマが決定次第、犯罪学研究センターEVENTページにて紹介します。