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2018.08.02

第3回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を開催

新規に採択された学内公募にかかる研究報告

 2018年7月17日、龍谷大学 犯罪学研究センターは第3回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を、本学深草学舎 至心館1階で開催し、約20名が参加しました。

 今回の研究会では、2018年度に新規に学内公募で採択された共同・個人研究から、早川明(本学短期大学部社会福祉学科講師)吉川悟(本学文学部臨床心理学科教授)の2名が発表をしました。

 研究会前半では、『大学生のギャンブル障害の実態把握及び予防的介入プログラムの開発‐大学生を対象とした予防的介入プログラムの開発の必要性について‐』をテーマに発表が行われました


早川明(本学短期大学部社会福祉学科講師)


 本発表の趣旨は、ギャンブル障害はソーシャルワーカーが取り組まなければならない問題であるということを指摘し、学校における予防教育(リスク教育)の必要性を訴えるものです。

 日本における自殺と多重債務がギャンブル障害に起因するケースが多く、そして世界的に見てもギャンブル障害の疑いがある人の割合が高いのにも関わらず、「ギャンブル障害」に関する日本の先行研究は、薬物やアルコールの依存症に関するものに比べて十分でなく、治療・社会啓発・予防等の各分野について、欧米に比べると大幅に遅れていると、早川氏は指摘します。
 学校教育の現場において、喫煙・飲酒・薬物に関しては、積極的な予防教育・啓発が行われており、一定の効果があらわれています。早川氏は、今後、大学生を対象としたアンケート調査を実施することにより、若年層のギャンブル障害の実態を調査し、知見を積み重ねることで、ギャンブル障害に対応する予防教育の在り方について考察したいと報告を終えました。
 研究会参加者からは、日本におけるギャンブルの性質についての考察や、他の依存症研究において積み重ねられた予防教育の効果についての分析・比較も必要であると、意見が出され議論を深めました。

 続いて研究会後半では、『犯罪をおかした人たちの回復支援・社会復帰の初期過程-対話的コミュニケーションによる援助関係の構築‐』をテーマに発表が行われました。


吉川悟(本学文学部臨床心理学科教授)

 本発表の趣旨は、システムズアプローチの立場から、対話的コミュニケーションが、犯罪をおかした人たちの回復や社会復帰の初期段階の新たな関係性の構築のために重要であると主張するものです。

 吉川氏は、多様な心理療法の理論がある中で、個人心理学の上に成立している心理療法とは異なるシステムズアプローチの考え方が有用であると指摘します。システムズアプローチは、対人援助の方法論として合目的的に変化を起こすために、現実的な人間関係の中で起こっている出来事を把握し、関係性に直接的に介入、働きかけをするものです。このような手法に至った背景として、個人的な司法領域との接点(臨床・研修)について事例を挙げて紹介し、前提となる理論・社会実践としてイタリアの開放型精神医学、ACT(Assertive Community Treatment)、リフレクティング・プロセス、オープンダイアローグの4つを挙げました。
 また吉川氏は、自らの臨床の経験から、いかに治療・支援ベースにのせるか、そこにおいては、対話的コミュニケーションを通して対象者の社会的ネットワークへの復帰を支援する必要性を訴えます。これからの研究では、矯正・保護の現場や保護司など関係機関との接点や、調査実施の可能性を拡大できるようなネットワークを構築すると述べ、報告を終えました。
 研究会の参加者からは、対話的コミュニケーションの形式について、そしてプログラムの効果判定がどのような判定基準によってなされるのか、等質問がありました。また、ユニットを超えた共同研究や情報交換を積極的に進めていこうという申し出もあり、活発に意見が交わされました。

「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」は、犯罪学研究センターに関わる研究者間の情報共有はもとより、その最新の研究活動について、学内の研究員・学生などさまざまな方に知っていただく機会として、公開スタイルで開催しています。
今後もおおよそ月1回のペースで開催し、「龍谷・犯罪学」に関する活発な情報交換の場を設けていきます。

*次回は、9月18日(火)14:00-16:00(場所:至心館1階)
イスラエルから来日されるNatti Ronel氏(バル=イラン大学教授)を講師に迎える講演会を予定しています。
当日の発表テーマが決定次第、犯罪学研究センターEVENTページにて紹介します。