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2018.08.22

【犯罪学研究センター】ヘイト・クライムユニット長 インタビュー

ヘイト・クライムの発生プロセスと解消策を研究

金 尚均 本学法学部教授、犯罪学研究センター「ヘイト・クライム」ユニット長、「司法福祉」ユニット長(代行)

金 尚均 本学法学部教授、犯罪学研究センター「ヘイト・クライム」ユニット長、「司法福祉」ユニット長(代行)


金 尚均(きむ さんぎゅん)
本学法学部教授、犯罪学研究センター「ヘイト・クライム」ユニット長、「司法福祉」ユニット長(代行)
<プロフィール>
差別問題を研究し、著書に『差別表現の法的規制:排除社会へのプレリュードとしてのヘイト・スピーチ』(法律文化社)などがあるほか、講演会や勉強会、シンポジウムでも精力的に発表を行っている。

刑罰以外でヘイト・クライムを防ぐには
差別の問題は人種差別に限らず、部落差別や障害者差別、最近ではLGBTQなど様々なものがあります。自分たちが持つ多様性から逆行し、男と女、マジョリティとマイノリティというように分かりやすい二項対立に単純化する今の社会こそが、ヘイト・クライムを生む温床となっているのでしょう。本来コミュニケーションの領域を広げ、多様性を認識するツールであるはずのインターネットも、自分と考えを同じくする集団の中で意見を凝り固まらせることで、逆に視野を狭めているような一面があります。
また、学校教育や社会教育の課程で「人間は平等で、差別はいけない」と教えられながらも、一方的な差別の様子が言葉や動画などで発信されることで、「私は差別をしないが、そんな差別も起こりうる社会なのだ」と諦めの観念が社会に蔓延しているように感じます。
人種や性別などの属性の違いを理由に不当に人を貶める差別がなぜいけないのか。日本の教育では、その根本的な部分が踏まえられていないのではないでしょうか。このようにマイノリティを差別する背景や教育のあり方を調べるとともに、刑罰以外の方法で差別を解決する力が社会や市民の中にどれだけあるのか、そしてその力がヘイト・クライムの予防になりえないかと模索するのもこの研究の目的です。

差別意識が暴力へとつながるプロセスを解明
2009年頃から「ヘイト・スピーチ」という言葉が一般社会に知られるようになってきました。一個人に対する差別ではなく、ある属性や集団に向けて能力や性格、人格に関係なく攻撃する言動のことで、たとえば在日朝鮮人に対し、我々日本人とは違うとレッテルを貼って属性全体を攻撃対象とするようなことです。最悪の場合、この差別意識がヘイト・スピーチなどの街宣やデモ活動だけでなく、「ヘイト・クライム(hate crime:憎悪犯罪)」として事件化することもあります。
ヘイト・クライム研究を進める大きな動機となったのは、京都朝鮮学校事件(2009年)を端緒としてヘイト・スピーチが盛んになり、朝鮮に対する植民地支配に由来するような言葉が21世紀の日本社会でいまだ声高に叫ばれていることに大きな失望を感じたからです。
そこで、当センターで研究を行なうにあたり、街宣やデモの現場調査や関係者への聞き取り調査などを通して、差別がどのような動機やプロセスを経て起こるのかを調べています。プロセスを理解することで、偏見や差別に基づく犯罪がなぜ起こるのかが見えてくるのではないかと思っています。

差別事象に関する総論をまとめる
近年の排外的風潮の高まりの中、「障害者差別解消法」(2013年成立)、「ヘイト・スピーチ解消法」(2016年成立)、「部落差別解法」(2016年成立)の3法が2017年に施行されました。さらにLGBTQ問題も浮上しつつあるのですが、この4つの差別に対して、法律も含めて当事者の関わり方がバラバラなのが問題です。まずは、数ある差別事象がなぜ起こるのかという総論を明らかにしてから、個々の差別事象の課題を解消するための各論や法律があるべきだと考えています。
そして、差別事象ないし差別犯罪を総論的に構築し、文章化して発表することがこの研究の最終目標です。これは日本ではまだ行なわれていないことなので非常に重要な意味があり、犯罪学研究センターにとっても大きな意義があると思います。