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2018.08.22

【犯罪学研究センター】センター長・治療法学&法教育・法情報ユニット長 インタビュー

一人ひとりを支える「人にやさしい犯罪学」

石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長

石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長


石塚 伸一(いしづか しんいち)
本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長・「治療法学」「法教育・法情報」ユニット長
<プロフィール>
犯罪学研究センターのセンター長を務めるほか、物質依存、暴力依存からの回復を望む人がゆるやかに繋がるネットワーク“えんたく”(アディクション円卓会議)プロジェクトのリーダーも務める。犯罪研究や支援・立ち直りに関するプロジェクトに日々奔走。

「犯罪学」の面白さを広くアピール
私が犯罪学研究センターを立ち上げた経緯は、犯罪学を科学的な学問としてまじめに研究をしている先生方とのネットワークの拠点を作ることで、犯罪学という学問領域を日本でも認知してほしいとの思いがあったからです。
龍谷大学には矯正・保護総合センターがあり、日本の矯正保護や刑事政策の研究に貢献しています。当センターも同様に、人間科学、社会科学、自然科学の分野でバランスよく「知」を融合した研究で貢献し、かつ「犯罪学って面白い!」と興味を持ってもらえる学問となることを目標としています。
罪を犯さざるをえなかった社会背景や成り立ち、国家のあり方を考えることで、世界情勢にも思いを馳せる――。犯罪をつぶさに見つめると、人と世界がいかに密接につながっているかに気づくはずです。そう考えると、犯罪学はあらゆる方向からアプローチできる面白い学問だと思いませんか?
各メンバーが調査や研究成果を踏まえて教育や人材育成、政策提言としてアウトプットしていくことも当センターの目標ですが、犯罪学の面白さを学生や一般の方に広く知ってもらうことも大きな目標のひとつです。犯罪学を学ぶことで扇情的な犯罪ニュースに惑わされない、犯罪学リテラシーを培って欲しいですね。

犯罪者一人ひとりを支える支援活動
私自身の研究は「治療法学」で、主に薬物問題を取り上げ、日本の薬物問題に適合する薬物政策を構築することです。以前の日本は薬物の乱用者・所持者に長期の拘禁刑を科す厳罰主義政策でしたが、近年は再犯防止対策として行政や民間が連携し、社会回復を支援する方向になっています。しかし、“薬物使用者“や“知的障害者”、“高齢者”など一律的にカテゴライズした法律で支援するだけでは、結局自立をさまたげることになります。
必要なのは「その人が何をやりたいか」を理解し、その人らしく生きていくための支援です。犯罪という石につまずき転んでしまっても、次は転ばないように本人も努力し、そこからまた人生を歩き出せるよう、周囲の人間や社会が支えていく。イソップ寓話の『アリとキリギリス』で例えるなら、アリだけが正しい生き方だとするのではなく、アリにはアリの、キリギリスにはキリギリスの生き方があるという考えのもと、それぞれの人生を尊重することが大切だと思います。このような方針で研究や支援活動を通じて犯罪者に寄り添い、オンリーワンの生き方を保障する政策提言や支援活動を今後も継続していくつもりです。

「龍谷・犯罪学」を世界に発信
日本においてはまだ認知度が高いとはいえない犯罪学ですが、本学が掲げる「すべての存在は“縁”によって存在する」という「共生(ともいき)」の仏教精神、ありのままの姿を認めることから始まる親鸞聖人の人間観が根底にある本学ならではの犯罪学を日本や世界に発信していくことが目標です。
世界的に見れば日本は犯罪発生件数が非常に少ない国ですが、今の段階ではその理由ははっきりと分かっていません。この理由を解明することで他の国の犯罪減少に役立つ可能性もあるので、ぜひ国際的にも役立つ研究に育てていきたいと考えています。