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2018.08.30

第2回公開研究会「性暴力・セクシュアルハラスメントを考えるために――性暴力の顕在化・概念化・犯罪化」を開催【犯罪学研究センター】

メディアにおけるセクシュアルハラスメント調査から見えてくるもの

2018年8月25日、第2回公開研究会「性暴力・セクシュアルハラスメントを考えるために――性暴力の顕在化・概念化・犯罪化」を、本学深草学舎 紫光館で開催し、約20名が参加しました。
企画者である牧野雅子(龍谷大学 犯罪学研究センター 博士研究員)がモデレーターを務め、今回は「人権問題としてのセクシュアルハラスメント――メディアにおける調査を受けて――」をテーマに、谷口真由美・大阪国際大学准教授をゲストに迎えました。


谷口真由美 大阪国際大学准教授

谷口真由美 大阪国際大学准教授


2018年4月に報道された、財務省事務次官の女性記者に対するセクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)や、それに続く、財務大臣の発言やメディアの対応、被害者に対するバッシングという一連の問題は、社会のセクハラ認識や人権意識の低さを露呈しました。この状況を問題視し、メディアにおけるセクハラの実情を明らかにすべく調査を行ったのが、谷口氏が代表を務める「メディアにおけるセクハラを考える会」です。本研究会では、谷口氏に調査の概要と人権教育の必要性について報告をいただきました。

セクハラ報道を受けて、谷口氏らがSNSで調査協力を呼びかけたところ、35人から回答を得、150件の事例が集まりました。
それによれば、社外関係者による被害が6割を占めており、取材相手からのセクハラ被害が多いことを示しています。社内にセクハラ相談窓口があっても、相手が情報提供者であれば取材先との関係悪化を恐れて対策を講じない場合が多く、被害者は泣き寝入りせざるを得ない状況にあります。性犯罪を取り締まる立場の警察関係者からの被害が少なくないということも、深刻な問題として受け止める必要があります。
この調査結果は、セクハラを告発する運動が一過性のもので終わらないようにと、メディアを通して継続的に発表される予定とのことです。

谷口氏らの調査に寄せた女性たちの言葉からは、この調査が被害の経験を他者と共有する手段として機能し、自身の被害を見つめ乗り越える機会となっていることが窺えます。自身の経験を伝えることが、社会を変える契機になるという、調査に対する期待も読み取ることが出来ます。谷口氏の報告は、社会調査の意義や可能性、研究者の役割を、改めて考える機会にもなりました。

今後開催される公開研究会では、メディアの現場で活躍するジャーナリストや、セクハラの概念が日本に導入され運用されてきた過程をつぶさに知る研究者や法実務家による報告が予定されています。



本公開研究会は、犯罪予防と対人支援を基軸とする「龍谷・犯罪学」の構築を目指す、龍谷大学 犯罪学研究センターの共催で開催しています。

○次回は9月22日(土)14:00-16:00開催予定です。【>>詳細】
全6回ともに参加費無料・事前申込不要。どなたでも参加いただけます。

※この企画は、JSPS科研費 平成28ー32年度 基盤研究(C) 16K02033<研究課題「近代日本における『性犯罪』抑止政策と法の批判的検討」、研究代表者 牧野雅子(犯罪学研究センター博士研究員)>の一環として実施しています。