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2019.07.12

世界初の発見!!塩尻先生の論文がScientific Reportsに掲載されました。

本学農学部に所属する塩尻かおり准教授の論文がScientific Reportsに掲載されました。

塩尻准教授はパナソニック株式会社とともに、切り花や収穫後の植物などの植物間コミュニケーションに関する共同研究を行っていました。
その成果の一つとして今回の論文が発表されました。

植物間コミュニケーションとは、植物が病害虫に害された際に発生する臭いを、同種の別個体が感じ取ることで、その病害虫に対して抵抗性を持つようになることを言います。
この反応について、これまでは根付いている植物の例しか報告されていませんでしたが、本共同研究により収穫後の植物でも植物間コミュニケーションが行われていることが明らかになりました。
これは世界初のことです。

本研究の有用な点は、次の3点です。
1.収穫後でも植物間コミュニケーションがあることを世界で初めて明らかにした。
2.収穫後でも、この反応を利用して人工的に抵抗性を持たせることができ、輸送等で商品を長持ちさせることができる。
3.ジャスモン酸経路以外の防衛経路が収穫後産物には発動していることを示唆している。
 ※ジャスモン酸経路とは、ジャスモン酸というホルモンに反応して病虫害・傷害に関わる遺伝子群や根の伸長阻害を制御する経路のこと。

塩尻准教授は今回の研究成果を踏まえ、収穫後産物おける植物間コミュニケーションを利用した長期保存の方法や、味の変化などについて研究を続けていきます。

論文要約
傷ついた植物から放出される匂いを、別個体の植物が受容すると、その植物は病害虫に対して抵抗性をもつようになる。この現象は、植物間コミュニケーションとしてよばれ、現在では40種以上の植物で報告されている。しかし、これまでの報告は全て、根付いている植物体の葉が匂いを受容することで抵抗性をもつというもので、切り花や収穫後の果実においては全く知られていない。収獲後においても、匂いを受容させると病害虫の抵抗性を獲得できるのであれば、葉野菜や果実を長持ちさせる方法の一つになる可能性がある。
そこで、傷ついたときに緑色植物が出す匂いの緑の香り成分(E-2-ヘキサナールとZ-3-ヘキサナール)を受容させ、イチゴに最もよく発生する灰色かび病に対する抵抗性をしらべた。その結果、これらの匂いを受容したイチゴでは、発症する期間が伸びた。また、これらの匂いを受容したイチゴからは、いくつかのアセテートが放出されていたが、それらのアセテート自体は灰色かび病の伸長を抑えるものではなかった。また、遺伝子発現を調べた結果、収穫後のイチゴは、一般的な植物ホルモンのジャスモン酸経路の防衛に依存しているのではなく、別のストレス関連のタンパク質が関与していることが示唆された。

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