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2019.11.21

【犯罪学CaféTalk】中村 有利子氏(本学法学部教務課 ローライブラリアン/犯罪学研究センター「法教育・法情報」ユニットメンバー)

犯罪学研究センター(CrimRC)の研究活動に携わる研究者について、気軽に知っていただくコーナー「犯罪学CaféTalk」。研究の世界に馴染みのない方も、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非読んでほしい内容です。
今回は、中村 有利子氏(本学法学部教務課 ローライブラリアン/犯罪学研究センター法教育・法情報」ユニットメンバー)に尋ねました。
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Q1.ローライブラリアンという職業について教えてください。

「図書館には専門員として司書がいますよね。その図書館司書の中でも専門性をもった司書を『サブジェクト・ライブラリアン』といいます。その中の一つが法学に長けたローライブラリアンで、アメリカやオーストラリアは、ローライブラリアンの制度が発達しています。私は法学に詳しい図書館司書ですね。


現在、国内の他大学には専任のローライブラリアンは少ないと思います。法学資料室がある大学には存在していましたが、どんどん少なくなっていて、業務委託に変わっていきました。龍谷大学のように図書館に専門司書がいる大学は数校だと思います。一昔前までは、国内のロースクールごとに図書室が存在していましたが、ロースクールが閉校していったのに伴い、ローライブラリーの規模が小さくなったり、「法情報」の授業も少なくなっていると聞きます。私は法学修士号を持っていますし、かつ図書館司書の資格も持っています。学会や研究会等にも参加しています。そういった人は割と珍しく、中でも『ローライブラリアン』を名乗っている方は少ないので、先生方に貴重な存在だと言っていただいています(笑)」


Q2.ローライブラリアンの仕事内容とは?
「一番重要な仕事は『選書』です。図書館を支えるという意味でも要の業務です。教員と学生、両方の立場から必要とされる資料を『選書』して発注します。龍谷大学法科大学院時代(2005年4月〜2017年3月)は、法科大学院の学生が司法試験を受験するという前提がありますので、実務的な本に加えて、司法試験対策の本を入れていました。あとは持っていた方が良い辞典や事典類、特殊な法令集などを、インターネットを使って自分で選んでいました。また現在は法科大学院を修了した法務研修生向けの選書をしていますが、同じようにインターネットを使っています。通常は、図書館は書店から提案されたリストから選書します。ただ、このやり方だと抜けがあるんです。特に、記念論文集などは漏れているので、自分で情報を集めて独自リストを作成しています」
「もう一つは『レファレンス』です。例えば、憲法や民法、刑法の授業が始まるときに『資料が見つからない!』『どの本を読めばいいか分からない!』という学生がいます。レポートや卒論を書く時もそうだと思うんですけど、そのような学生の相談に乗る仕事です。主に図書館のカウンターで行います。法科大学院時代は、学期末に長期休暇があるので、『その間にどう勉強して良いのか分からない!』という相談も受けました。そこで先生方に依頼して、長期休暇中にこういう本を読んでおいたほうが良いよとか、次のセメスターに向けての必要な勉強方法とか、あるいはどういう本がオススメとかの情報を集めて、年2回ニュースレターを発行していました。また学生だけでなく先生方にも『レファレンス』をしています。具体的には、パソコンやデータベースの使い方を教えます。資料収集のお手伝いもします。データベースもすぐにアップデートされ、目まぐるしく変化していきます。なので、『中村さん、ちょっと教えてくれない?』と訪ねて来られると非常にありがたいです」
「また、私は学内向けですが、独自に『法情報』を発信してきました。今でも情報発信しているのですが、例えば、最高裁の判例が公表されたとニュースで流れると、ニュースのURLと共にこういう判決が出ましたよと、教員・学生にメールで発信するんです。他にも司法試験を受ける学生には、法務省の司法試験関係の情報、教員には文科省などから発信される法科大学院の情報に加え、大学を取り巻く社会の動きを発信していました。インターネットやメールが発達したからこそできた取り組みですが、どのローライブラリアンもやっていないことだと自負しています」


Q3.ここ数年、中村さんは、法情報研究会や法教育フェスタを通じて「市民」に向けて「法情報」を発信しているのが印象的です。そのきっかけや意義について教えていただきたいです。
「ロースクール生の法情報の授業のサポートをしていた時、法学部の先生に『法学部の1、2回生に法情報の授業をやってくれないか?』と依頼されたことがきっかけです。法情報の授業は法科大学院制度ができてから本格的に始まったのですが、私自身、学部生が法情報の授業を受けないで、どんどん大学生活が進んでいくことがもったいないと思っていました。正直、大学1、2回生って普通の子たちじゃないですか(笑) この前まで高校生で、法律や社会について分からない子たちばかりなので。学部生に授業をしているうちに『これって、法学部生だけの問題ではないんじゃない?』ということに気付いたんです。あまりにも、知られていないことがあって、『市民』にも勘違いされていることが結構多いんじゃないかなと思い始めました」


「よく言われる『情報リテラシー』という言葉がありますよね?私は『情報リテラシー』の中に生活に役立つ『法情報』を入れて『市民』向けに発信しています。そうした情報にふれる中で、新たに気付き、腑に落ちて、自分の身を守る手段を身に付ける。これを『護身術』と名付けています。以前、図書館で一緒に働いていた方から、民事訴訟の怪しいハガキが自宅に届いてお母さんがパニックになっているという相談があったんです。私なら『これは違うな』と瞬時に理解できるのですが、市民の方がいざ訴訟の当事者だといわれてしまうとびっくりして、詐欺に引っかかってしまうのかなと思いました。なので、『護身術』を身に付けることは、犯罪予防にもなります。市民に『法情報』を伝えることで、『情報リテラシー』が向上し、生活に必要な情報にアクセスできるようになったり、犯罪予防に繋がったりすることに意義を感じています」

Q4. 2019年12月1日(日)に「法教育フェスタ2019」が京都府立図書館で開催されます。今回の法教育フェスタの魅力や見どころを教えてください。
「まず、会場を京都府立図書館にした点です。市民が普段利用する公共図書館で行う。これは第7回目を迎える『法教育フェスタ』の中で初めての試みなんです。今までは、大学や知らないと行けないマニアックな場所で開催していたんです…。ですが、今後大学が社会貢献や生涯教育をやっていく立場だとすると、大学の外で多様な展開をすることが大事だと思います。今回は、幸いにも京都府立図書館で開催させていただけるということで、単発のイベントとして終わるのではなく、可能であれば提携して継続していきたいです。


次に内容ですが、第1講時『桃太郎の大罪』は石塚伸一先生の話術が本当に上手くて…(笑)毎回、市民の方に受けがよく笑いが絶えません。第2講時『法情報で身につけよう護身術』は私が担当します。先ほど、お話で挙げたように、市民の皆さんに『護身術』を身に付けていただきたいと企画しました。それから、私の授業で挙げたテーマを基に、京都府立図書館をどのように利用すれば良いかを職員の方が教えてくれます。ここがメインのコラボ授業ですね。

第2講時終了に行うオプショナルツアー『京都府立図書館見学』では、普段見られない貴重な館内の施設を解説付きで見学できます。ランチトーク『漫画で法学』は昼食付きでランチを食べながら行います。法律をキャラクターにした漫画を配るので楽しみにしてください。
第3講時『愉快な国際結婚のなぞなぞ』では、知っているようで知らない国際結婚について学びます。クイズ形式にしているので、市民の皆さんもきっと楽しめると思います。
さいごの第4講義『実践!THE模擬裁判』は要注目です。通常の模擬裁判では、シナリオがあってそれに沿って裁判が進んでいきます。しかし、今回はその場で事件が起きます。ドラマ『踊る大捜査線』で、『事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!!』という名台詞がありますが、まさに『事件は会議室で起きているんじゃない!その場で起きているんだ!!』なんです(笑)そして、その事件について参加者同士で話し合いながら審議していきます。模擬裁判担当の今井秀智先生はNHK『昔話法廷』監修者でもあるので、きっと面白い講義になると思います。また模擬裁判を通じて、目撃した事件の記憶がどれだけ正しいのかということも詳しく見ていきます。そのあたりは犯罪学研究センターで、普段先生方が研究されている内容を市民の方が学べる機会になります。ぜひ大勢の方に「法教育フェスタ2019」に参加いただけると嬉しいですね」
【>>EVENT情報】龍谷大学法情報研究会×京都府立図書館「法教育フェスタ2019」


Q5.さいごに、中村さんにとって「法情報」を伝えることとは?
「『道を切り拓く力』だと思います。まず前提として、法律は堅苦しく学ぶものではなく、楽しくで学んで欲しいです。私はそのための工夫や努力を日々行っています。そして、法律を学ぶことで、人生で起きる様々な障害や問題から自分を守るだけでなく、それらを打破することができます。これからも、ローライブラリアンとして、たくさんの方の学びの手助けをしていきたいです」



中村 有利子(なかむら ゆりこ)
本学法学部教務課 ローライブラリアン/犯罪学研究センター「法教育・法情報」ユニットメンバー
<プロフィール>
本学法学部教務課ローライブラリアン。立命館大学法学部・早稲田大学大学院法学研究科修士課程を経て現職に至る。
犯罪学研究センター「法教育・法情報」ユニットでは、主に法情報研究会の司会・進行を担当。
本学法学部生に「法情報」の講義を実施した経験を基に、「市民」向けに「法情報」を発信する試みを続けている。