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2019.12.10

大学院実践真宗学研究科公開シンポジウム「伝道を考える」の開催【文学部】【実践真宗学研究科】

 2019(令和元)年11月21日(木)、「伝道を考える ~いままで・そしてこれから~」と題して、公開シンポジウムが開催されました。
 浄土真宗は布教伝道を大切にしてきた歴史があります。口述による法話伝道を主としながら、多種多様な布教伝道が脈々と実践されてきました。
 実践真宗学研究科の宗教実践分野においても、法話や儀礼による布教伝道に関する様々な研究を蓄積してきました。それらの研究をふまえて、「伝わる」という質と「伝える」方法について、研鑽と試行がなされ続けなければなりません。
 本シンポジウムでは、これまでの伝道を捉え直し、これからの伝道を考えるため3名の講師をお招きし、参加者にとって、伝道における重要な視点や要素が明らかになる機縁となることを目指して実施されました。

-プログラム-
挨拶 鍋島直樹(龍谷大学大学院実践真宗学研究科長)
第1部 パネリストによる提言
提言1「浄土真宗における伝道の目的と課題」(実践真宗学研究科教授 貴島信行先生)
提言2「これまでの伝道を捉えなおす」(相愛大学客員教授 直林不退先生)
 実 演  「節談説教」(節談説教研究会理事 杉本光昭先生)
提言3「これからの伝道を考える」(浄土真宗本願寺派照恩寺住職 朝倉行宣先生)
 プレゼン 「テクノ法要」
第2部 ディスカッション ~みんなで考える~
質問者 実践真宗学研究科
     小西 益子さん、小島かるなさん、中村由人さん、三神龍堂さん
    来場の皆さま

■開会挨拶(実践真宗学研究科長 鍋島直樹先生)
 実践真宗学研究科の現役院生が、さまざまに実践を展開していることをご紹介され、この度のシンポジウムの開催趣旨を明らかにしてくださいました。

■第1部 パネリストによる提言
提言1「浄土真宗における伝道の目的と課題」(実践真宗学研究科教授 貴島信行先生)
 浄土真宗における伝道について、最も大切にすべきことをご提言いただきました。
「伝道とは本願の救済が私に「伝わる」こと、そして本願の救済を私が他者に「伝える」ことと浄土真宗の伝道がまさに「自信教人信」であることを、明確に示してくださいました。
 さらに、伝道の課題が様々あることをあげて、それらの課題を克服するために「一、伝道活動による寺院の可視化」「二、宗教的情操の涵養」「三、聴聞を中心とする法座の継続」と寺院における伝道を「広く」「深く」「正しく」と展開させることの重要性を提言くださいました。

提言2「これまでの伝道を捉えなおす」(相愛大学客員教授 直林不退先生)
 浄土真宗の布教伝道において、江戸時代に親しまれた「節談説教」を取り上げ、その課題や特色をご提言くださいました。一時期は負の評価をくだされていましたが、節談説教の特色の一つである「節付き」によって、難解な専門用語がスムーズに入りこみ、その専門用語が指し示す教えの核心が、共感とともに受け容れられることがあるとお聞きしました。
 実演 節談説教(節談説教研究会理事 杉本光昭先生)
  提言のみならず「節談説教」の実演が行われました。
  現代の私たちの身の回りにある物語を通して、阿弥陀如来の救いの尊さをお聞かせい
 ただきました。

提言3「これからの伝道を考える」(浄土真宗本願寺派照恩寺住職 朝倉行宣先生)
 現代のテクノロジーを用いた「テクノ法要」を展開されている先生から、テクノ法要の上映紹介をしていただきました。
 奇抜なことをすることが目的ではなく、その奥にある「様々な意見や刺激に対応できる感受性を持ち続け」、一人でも多くの方が、自由にお参りできることを目指すという思いを提言してくださいました。

■第2部 ディスカッション ~みんなで考える~
 前半は実践真宗学研究科の院生から、事前研究会を経て深く掘り下げた質問を受けて、各先生方に応答していただきました。
 後半は来場者の皆さまからのご質問に、応答をいただきました。
 「節談説教」と「テクノ法要」という、まさに両極端のように受け取られかねない伝道方法ですが、パネリストの先生方が相互に質疑応答してくださることを聞かせていただいていると、「自らが聞きよろこんでいるこの仏法を、なんとか解りやすく親しみやすく、一人でも多くの方が自由に聞きよろこべるように」という、伝道の根源とするべき思いが、見事に通底していることと実感しました。
 最後には、貴島信行先生が「多種多様な伝道方法があってよい。しかし何をしてもよいということではない、伝道の最も大切にしなければならないことを見落とさないことが大事」とまさに伝道を考えるもっとも大切なことを示してくださいました。

-コーディネーターをさせていただいて-
 単なる提言やディスカッションだけではなく、節談説教の実演、またテクノ法要のプレゼンなどもあり、ライブ感豊かななかで、伝道の多様性を実感することができました。そこには新たな課題も見えてきました。課題が明らかになったということは、新たな可能性も見えてきたということです。
 会場一杯の来場者のみなさんと、いままでの伝道をとらえなおし、これからの伝道を考えて、まさにいま「伝道を考える」ことができた、シンポジウムでした。
                                                  (コーディネーター 実践真宗学研究科教授 葛野洋明)


提言1 貴島信行(龍谷大学実践真宗学研究科教授)「浄土真宗における伝道の目的と課題」


提言2 直林不退氏(相愛大学客員教授) 「これまでの伝道を捉えなおす」


提言3 朝倉行宣氏(浄土真宗本願寺派照恩寺住職) 「これからの伝道を考える」


テクノ法要


節談実演:杉本光昭氏(節談説教研究会理事)



コーディネーター:葛野洋明(龍谷大学実践真宗学研究科教授)



閉会の挨拶:那須英勝(実践真宗学研究科長補佐、龍谷大学文学部教授)