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2019.12.16

京都コングレス・ユースフォーラムへの道のり「京都刑務所 参観レポート」【犯罪学研究センター】

京都刑務所 参観レポート

2020年4月13日~15日、国立京都国際会館において、京都コングレス・ユースフォーラム(以下、ユースフォーラム)が開催されます。それに伴い、参加予定の学生に日本の刑事司法制度に関する理解を深め、ユースフォーラムにおける活発な議論につなげるため、事前準備の一環として、京都所在の法務省関係機関における業務説明会が行われました。

犯罪学研究センターでは京都コングレス・ユースフォーラムへの道のりと題して、参加学生の皆さんの活動の様子をシリーズで紹介しています。今回は、海津更さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)の京都刑務所 参観レポートを紹介します。


海津更さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)

海津更さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)


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京都刑務所を参観して


京都市山科区に位置する京都刑務所は、大通りから一本入った住宅街にある。住宅街の真ん中にあることから、施設として周辺住民のために何ができるかということを常に考えているという。例えば、防災訓練を地域住民と合同で行ったり、災害時の炊き出しに職員が参加したりしている。

京都刑務所にはB指標(犯罪傾向が進んでいる者)とF指標(日本人と異なる処遇を必要とする外国人)の収容者が収容されており、収容者の平均年齢は50歳代後半・最高年齢は87歳である(令和元年11月22日現在)。平成18年に最高収容者数1899人(収容率123%)を記録し、令和元年度11月22日現在で1004人を記録している。
外国人収容者の犯罪種別の割合は1位窃盗、2位強盗、3位覚せい剤となっていて、日本人収容者も含めた全体の割合を見てみると暴行が20%弱を記録している。これは他の刑務所に比べると珍しい値である。

平成24年7月に「再犯防止に向けた総合対策」が決定され、平成26年12月に「犯罪に戻らない・戻さない」というスローガンが制定されたことで、刑務所としても再犯防止に取り組む体制をスタートさせたという。その後、さまざまな再犯防止に関する法整備などが行われ、現在も再犯防止に関する計画が進められている。

刑務所の中には境界知能と呼ばれる、IQが70後半~90代という障害でもないが一般の知能を持つ人よりは劣るという人が一定数確認できる。そこで境界知能への対応として「ステップアップ工場」という制度を用いている。通常の作業工場は大人数で作業を進めるが、10人以下の少人数制の工場で作業をさせることで、知能や人格に問題があり協調性が望めないような収容者に対応しているのだ。
実際に所内を見学した感想と考察についてだが、やはり事前に得た知識のとおり高齢収容者が多い印象を受けた。特に京都刑務所は累犯者を多く収容しているので、高齢者の比率が高くなっている。そうした現状に「老々介護のようなことは発生していないのか」と尋ねると、「無い」ということだった。しかしながら、入浴の際に手助けをしたり病室での着替えを手伝ったりすることを収容者同士で行っていたり刑務官が行っている現状はあるという。

また、作業工場での作業風景を見学したが、立っているのもやっとと見受けられる高齢収容者までもが作業に従事していた。現在の刑務所では高齢者の認知症が大きな問題となっているが、単純作業だけではかえって症状が進行してしまうのではないだろうか。たしかに手先を使ってはいるが、言われたままに行う作業では頭を使うことがないだろう。作業効率の向上を自分たちで考えさせたりしてみると良い頭の運動になるのではないだろうか。

私は事前に知識を得てから参観したが、実際に目にした現場で受けた衝撃は大きかった。高齢収容者が多いことは知っていたが、こんなにも多く、また、若年の収容者が全くもっていないことは実際に見てみないと知り得なかったことであり、とても勉強になった。来年の「京都コングレス・ユースフォーラム」に向けて様々な日本の刑事司法の現実を知り、海外の学生に説明できるようにしたい。

海津更