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2019.12.18

京都コングレス・ユースフォーラムへの道のり「京都地方検察庁 訪問レポート」【犯罪学研究センター】

京都地方検察庁 訪問レポート

2020年4月13日~15日、国立京都国際会館において、京都コングレス・ユースフォーラム(以下、ユースフォーラム)が開催されます。それに伴い、参加予定の学生に日本の刑事司法制度に関する理解を深め、ユースフォーラムにおける活発な議論につなげるため、事前準備の一環として、京都所在の法務省関係機関における業務説明会が行われました。

犯罪学研究センターでは京都コングレス・ユースフォーラムへの道のりと題して、参加学生の皆さんの活動の様子をシリーズで紹介しています。今回は、京都地方検察庁の業務説明会に参加した、前多力斗さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)、永井涼介さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・英語コミュニケーションコース)の参観レポートを紹介します。


前多力斗さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)

前多力斗さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・浜井ゼミ)


永井涼介さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・英語コミュニケーションコース)

永井涼介さん(龍谷大学法学部法律学科2回生・英語コミュニケーションコース)

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京都地方検察庁を訪問して


2019年11月7日、京都地方検察庁の業務説明会に参加してきました。まず、DVDで「検察の役割」を視聴しました。DVDの内容は殺人事件を例に話が作られていて、犯罪の発生から起訴までの流れを再現したものでした。検察官は、刑事事件について捜査及び起訴・不起訴の処分を行います。裁判所に法の正当な適用を請求し、裁判の執行を指揮監督する権限も持っています。また検察官は、検察庁法第4条に「公益の代表者」であると定められています。これは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけ、起訴する専任権が与えられていることを指します。さらに、検察官は警察官同様、犯罪を捜査する権限も有しています。そのため、検察官の判断で、被疑者の人生が大きく左右されます。DVD視聴を通じて、検察官は、裁量と権限が大きい反面、それだけ大きな責任が伴う仕事であると改めて実感しました。

その後、庁舎見学をしながら検察官が業務で取り扱った刑事事件の話をうかがいました。主に少年の補導・保護に関するもので、それと併せて青少年の薬物使用問題が挙げられました。2013年から大麻等の薬物乱用による少年の検挙総数が連続して増加している状況を知り、青少年の薬物に対する認識を変えていく必要性を感じました。同時に、薬物を使用した少年たちが適切な処遇を受け、社会に復帰出来るような働きかけが不可欠だと考えました。今の時代、インターネットの闇サイトを介して、薬物が簡単に手に入ってしまいます。薬物問題は自分とはかけ離れた話ではなく、とても身近な問題だという意識を持つことが必要だと感じました。

そして、検察官の方たちがどのように被疑者の方たちと向き合っているかを知ることができました。私がイメージをしていた検察官像と実際の検察官とは全く異なるものでした。事前に描いていた検察官像とは、冷淡な人達が粛々と仕事をこなしているようなものでした。しかし、実際にお話をうかがった検察官は、起訴する当事者たちの将来のことを考え、彼らが更生して、すぐに一般社会に戻れるように願いながら接していることが分かりました。

業務説明会を通じて、自分のイメージや先入観だけで考えるのではなく、実際に現場で働いている人の声を聞くことが大切だと分かりました。「京都コングレス・ユースフォーラム」まで、時間は限られていますが、別の施設や省庁を見学できる機会があれば、是非参加したいと思いました。

前多力斗

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2019年11月7日、京都地方検察庁の業務説明会に参加しました。今回の業務説明会では、特別に押収した大麻を目にする機会を得られました。本物の大麻を目にしたことで、先日の「日本の薬物問題と政策」をテーマにした座談会に、具体的なイメージを持って臨めました。
【>>関連記事】:京都コングレス・ユースフォーラムへの道のり3

庁舎見学では、検察庁内の取り調べ室を見せていただきました。そこで驚いたのが、検察庁での取り調べは入室から退室まで録画がされており、音声も録音されているということです。現在、日本の刑事司法では、「取り調べの可視化」についての問題がありますが、警察での取り調べは未だ全面可視化は行われていません。一方、検察庁での取り調べが全面可視化されている理由は、警察での取り調べ調書との食い違いがないかの確認が非常に重要だからです。説明を聞き、警察の取り調べでも全面可視化されれば、警察・検察双方の刑事手続きにおける食い違いは減るのではないかと考えました。調書と発言が本当に食い違っていないかの確認を検察側だけでなく、警察側でもすべきだと思います。また、取り調べは緊張感のある状況で行われます。慎重に誤りなく行うためにも全面可視化は必要だと思いました。
もちろん、検察の取り調べでは、弁護士の立ち会いなどの問題が残っています。しかし、提訴を行う検察の取り調べが可視化がされていることで、刑事訴追の誤りを防ぐ最終関門の役割を果たしていることを知りました。今回の業務説明会に参加しなければ、分からなかったことなので、自分にとって大きな学びとなりました。

日本では、刑事裁判における有罪率の高さがしばしば指摘されていますが、そのことに対する検察官ならではの意見も聞かせていただけました。具体的には、どのような証拠を証拠能力があると認めるのか、証言が食い違った時の採用基準等、実務を題材にした事例をもとにお話いただきました。とりわけ「検察官は、被害者・被害者遺族の方々の立場に立てる唯一の職業」だとおっしゃられたのが強く印象に残っています。
今回の業務説明会を通じて、日本の刑事司法の問題を改めて考える良い機会となりました。やはり、アメリカのミランダルール*1と比較しても、日本はかなり遅れていることを実感しました。2020年春に開催される「京都コングレス・ユースフォーラム」では、日本の刑事司法の問題点をさらに深め、発信できるようにしたいと思いました。自国の問題をしっかり英語で伝え、海外の学生に問題意識を共有できるように準備したいです。

永井涼介

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【補注】
*1「ミランダルール」
アメリカの刑事手続において判例法上確立された捜査上のルール。捜査機関が身柄拘束中の被疑者を取り調べるときには、被疑者に対し、黙秘権・弁護人依頼権などについて遺漏なく告知しなければならない。この告知を怠って取調べをしたときは、その結果得られた自白は証拠としての許容性を持たない。1966年の連邦最高裁判所によるミランダ判決によって定立された。