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2019.12.19

【犯罪学CaféTalk】赤津 玲子准教授(本学文学部/犯罪学研究センター「対話的コミュニケーション」ユニット研究員)

犯罪学研究センター(CrimRC)の研究活動に携わる研究者について、気軽に知っていただくコーナー「犯罪学CaféTalk」。研究の世界に馴染みのない方も、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非読んでほしい内容です。
今回は、赤津 玲子准教授(本学文学部/犯罪学研究センター対話的コミュニケーション」ユニット研究員)に尋ねました。
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Q1. 赤津先生にとって研究とは何ですか?


「うーん…おもしろいからですかね(笑)1対1ではなく、2、3人を対象とした面接の中で行われているコミュニケーションに興味を持ったことをきっかけに、人と人の繋がり・人間関係に興味を持ち、現在の対話的コミュニケーションの研究を続けています。基本的に臨床心理学における個人面接というのは、クライアントの心の中に抑圧や葛藤等があると思っています。しかし家族療法はスタンスが異なり、問題は人と人の間で起こるものだという風に考えます。そうした経緯から私は、専門的に言えば社会構成主義の立場ですが、ご家族やご夫婦といった複数の方と一緒に考えるようなカウンセリングをしたかったんです。それが複数間で交わされる非言語的コミュニケーションに注目した研究につながりました」

Q2.非言語的コミュニケーションは、どのようなものですか?
「たとえば視線ですね。映像を分析して調査したこともあります。セラピストの視線の向け方で、どのようなコミュニケーションが起こるかといったことを調べていたのです。視線はクライアントとのコミュニケーションにかなり影響すると考えています。例えば、家族面接などで、私がお子さんの方を見るとお父さんも見たり、逆にお父さんの視線を私が追ったりなどです。それによって、お父さんとお子さんの言語的なやりとりが起こったりします。」
「最近では、SNSで行われるコミュニケーションに興味があります。インターネットを介したコミュニケーションというのは今や日常的です。若い方がSNS上で交わしている言語表現は、年配の私達と違ってとても面白いと思います。従来の言語学では理解できない表現です。そういうインターネットを介したコミュニケーションで起こってくる感情と、日常のコミュニケーションで起こる感情とでは違うのではないかと思っています。インターネットを介したコミュニケーションが日常化することは、SNS依存やネット依存といった、悪い意味に捉えられがちですが、保護者が子どもに止めろと言ってもすでに親自身もネット三昧だったりします。ネット依存というものは一概に外から測れるものではありませんからね。ただネットを介した関係というのは、今までとは違う関係になっていくのではないかとは思います。そこにどのような違いがあるかも気になるので、これから研究してみたいと思っています」


Q3. 家族療法で色んな家族と関わってきて、1番印象に残っているエピソードはありますか?
「1番というものではありませんが、カウンセリングが必要ない段階まで回復したご家族に、回復の理由を聞くと、自分なりの答えがあるんです。多種多様な答えがあるのは面白いと思います」

Q4.コミュニケーションをとる際に心掛けていることはありますか?

「カウンセリングでご夫婦やご家族と話す時は『何を1番言いたいのか』『何をして欲しいのか』ということを考えながら聞いたり話したりするようにしています。逆に学生さんと話す時は楽しくコミュニケーションを取るようにしています」


Q5. また、システムズアプローチについての研究もされていると思いますが、システムズアプローチについて教えてください。
「システムズアプローチは、従来の臨床心理学と違って、人の行動や考え方について、関係や状況によって変わる可能性を持っていると考えます。身近な人間関係を捉え直す視点や、共に働く人たちの多様な手のつなぎ方を提供してくれるため、司法領域でも大いに活用することができると思っています」
「また、システムズアプローチの研究を通して面白いなと思ったのは、カウンセリングのやり取りを分析する中で、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションが分かちがたいものであるとわかったことです。演習で『言語だけで会話をする』『非言語だけで会話をする」というのをやると、学生が『どちらか一方だけでは伝えられないことがある』と言います。従来の言語学の知見だけでは理解できないことが多々あると感じました。コミュニケーションを微細に分析することも大切だし、大きな文脈で解釈する必要もあります。何が起こっているのかを考えるためには、多様な視点が必要であると思います」


Q6. 先生の研究は将来どう役に立つと思いますか?
「カウンセリングですね。たとえばご夫婦面接であったり、ご家族面接であったり、やはり1対1の個人面接とは違うので、複数間で行われるカウンセリングや多職種との協働に、自分の研究が役に立つことが出来たらいいなと思います」



赤津 玲子(あかつ れいこ)
本学文学部/犯罪学研究センター対話的コミュニケーション」ユニット研究員)
<専門分野>
システムズアプローチ、Family Therapy、コミュニケーションおよび言語学、心理学研究法
https://www.let.ryukoku.ac.jp/teacher/akatsu2.html