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2020.06.24

観光資源の活用と創出について、新たな視点から学ぶ【社会共生実習】

 6月19日に、社会学部の科目「社会共生実習(大学は社会共生に何ができるのか―文化財から“マネー”を創出する―)」(担当教員:社会学科 髙田満彦、猪瀬優理)にて、小畑博正氏(嵯峨美術大学 芸術学部デザイン学科 観光デザイン領域 教授)を招いてオンライン授業が開講されました。


授業の様子

 小畑氏はもともと、大手旅行代理店にお勤めされていたご経験があり、その時の企画やプライベートでの観光に関するユーモラスなお話を冒頭にご紹介くださり、まずは、どんなものでも観光資源になり得ることを教えてくださいました。

 また、一見、その地域に関係ないものや他の地域の真似で始まったものでも、地元の方が大切に育むことでその土地の観光資源、しいては“観光文化”(観光によって創出された文化)となり得ることを教えてくださいました。

 例えば、小畑氏が考える日本最強の“観光文化”は、世界で唯一無二の劇団である「宝塚歌劇団」だそうです。これは、創設者である小林一三氏が阪急電鉄の鉄道を起点に都市開発のために生み出したものでしたが、100年以上かけて地元住民に愛されることで立派な“観光文化”といえるものになりました。

 また、海外で生み出された“観光文化”の例として、近年話題となっているバスクチーズケーキ(通称:バスチー)で有名なスペイン北東部の都市であるサン・セバスティアンのこともご紹介くださいました。地元の特産品を生かし、新しい調理法を果敢に取り入れた「ヌエバ・コシーナ」(新しい食運動)という地元の料理人たちの運動が実を結び、「美食世界一」という無形の“観光文化”を生み出したそうです。

 最後に、これらの事例をヒントにすると、滋賀県において「文化財からマネーを創出する」には、他地域の方から見ると珍しく、日常とは異なるものと受け取ることのできるものを、地域の日常や当たり前の食、気質、精神、風土などの「滋賀県の日常」のなかから、再発見していくことが必要であると指摘されました。そして、地域にストーリを作り出す「質の観光」を目指すことを提案してくださいました。


小畑博正氏


資料を用いて丁寧に説明してくださいました

 小畑氏のご講話を受けて、本プロジェクトの受講生からは、「滋賀県民は“観光文化”となり得るものが滋賀県にはないと思っている人が多いように感じる。その認識をどのようにして変化させればよいか」、「“観光文化”を育むためには長期にわたって取り組む必要がありそうだが、短期戦に持ち込むにはどうすればよいのか」、「地域の中でも人によって“観光文化”にしたい資源がさまざまに分かれると思うが、どうすればよいのか」などといった質問が相次ぎ、それぞれに小畑氏流の回答をいただきました。

 受講生らは、こうした問いに今後の本プロジェクトの活動の中で自分なりの答えを見出していくことになるのだと思いますが、今回、小畑氏による新たなアプローチ方法を勉強したことで、より良い答えを導いてくれるのではないかと期待しています。

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。