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2020.07.09

NPO法人京都コリアン生活センター・エルファ 事務局長 南珣賢さんをお招きして 【社会共生実習】

真剣に話を聞く受講生

 7月3日に、社会学部の科目「社会共生実習(多文化共生のコミュニティ・デザイン~定住外国人にとって住みやすい日本になるには?~)」(担当教員:現代福祉学科 川中大輔)にて、本プロジェクトのーコミュニティパートナーであるNPO法人京都コリアン生活センター・エルファ(以下、「エルファ」という)の事務局長である南珣賢さんをお招きして、オンライン授業が開講されました。

 エルファは、在日コリアンをはじめ外国にルーツをもつ多文化な高齢者や障がい者を支援する活動をされています。その内容は高齢者や障がい者の支援に留まらず、多文化共生社会を目指したまちづくり等の活動や子育て支援事業・相談業務等と、多岐にわたっています。
 事業所立ち上げの背景には、介護保険制度の開始があります。それまで国籍条項によって日本の社会保障制度の多くに参加できなかった在日コリアン一世も介護保険制度の利用対象になりましたが、「自分たちも使える制度である」という認識がなかったり、就学経験が乏しく各種手続きで困難な経験をしたりして、制度を利活用できていない方々が多く存在することが明らかになっていきました。そこで、在日コリアン二世たちの手で何とかサポートしたいという強い想いからエルファの活動が始まります。

 今回、南さんには、エルファの活動内容を事前に学習した受講生からの質問に、色々なエピソードを交えてお答えいただきました。
 特に印象深かった質疑応答について、一部ご紹介させていただきます。

Q.在日コリアンの方の高齢者を対象とする支援を独自で始めたのはなぜですか?

 在日一世の場合、幼少期の経験が異なることから日本のデイサービスでよく見られるレクリエーション(例えば習字や折り紙など)に参加できないという光景が見られます。また、在日コリアンだということを隠している人の場合、参加できない理由を説明することもできずに、施設内で孤立されている方々もいます。その孤立感に施設側も気づくことは難しいのです。そんな肩身の狭い思いをしている在日コリアンの方々が自分をさらけ出せる場所としてエルファを始めましたが、やはり自分たちの背景を深く理解してくれているということで利用者の方々もエルファを選んでいるのだと思います。

Q.訪問者の受け入れを積極的にされているようですが、どんな触れ合いをされていますか?

 修学旅行生も含め年間1,000人ほどの訪問者を受け入れています。(現在は新型コロナウイルスの影響で受け入れを中止しています。)訪問者は利用者の方々と会話したりペアになってゲームをしたり、とても楽しい時間を過ごしています。
ある時、修学旅行生の一人が自分の名札(日本名)を見せて、「僕の名前は朝鮮語で何と読むのですか?」と聞いてきたことがありました。そこで私が読み方を教えてあげると、すぐ傍にいたハルモニ(コリア語でおばあさんの意味)が「あんたはうちの子やな。あんたはあんたのままでええやんで。」と、その子を抱きしめました。周りにいたその子の友人たちも「かっこいい名前!」と言ってくれたので、その子は「今日限りで日本名をやめてもいいですか?」と言ったのです。この子のように、訪問者が在日コリアンであることをカミングアウトするケースもあります。
その他にも利用者の方々と触れ合うことで癒されて、とてもすっきりした顔で帰って行く訪問者の様子を見て、職員たちも良い刺激をもらっています。


NPO法人京都コリアン生活センター・エルファ 事務局長 南珣賢氏

Q.京都の朝鮮人学校の保健室サポートをされているということですが、詳しく教えてください。

 日本にある朝鮮人学校には保健室がありません。朝鮮人学校の運営は財政的に厳しく保健室まで手が回りません。体調が悪くても、しばらく様子を見るという対応に留まることもあります。そこで、現在はエルファで勤務している看護師や朝鮮人学校出身の看護師に週2~3回、保健室に常駐してもらっています。これは全国的にみても非常に珍しいことです。こうしたサポートを始めるきっかけは、京都朝鮮第一初級学校に対して行われたヘイトスピーチの襲撃を受けて被害を受けた生徒のメンタルケアをしたいとの想いからでした。

 他にも色々なお話を聞いて、受講生からは「エルファの活動は楽しそう!」「触れ合いがとても大事なことがわかったので、外部との取り組みを考えていきたい」と前向きな感想を聞くことが出来ました。
南さんは「オンラインでも良いので、本プロジェクトの受講生と利用者の方々が触れ合える機会が早く来てほしいです。」と、笑顔で締めくくってくださいました。

 利用者の方々との触れ合いが実現した時には、どんなことを感じ、どんな取り組みに繋げていきたいのか等、受講生からの報告を楽しみに待ちたいと思います。


社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。