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2020.07.21

2020年度実践真宗学研究科FD研究会の実施【文学部】【実践真宗学研究科】

 2020年度第1回実践真宗学研究科FD研究会を次のとおり実施しました。
 
 2020年7月1日(午前11時30分〜12:15分)、Google Meetを利用したオンライン・ミーティングで、「オンライン授業について~現状報告の共有~」と題して、実践真宗学研究科・科長補佐の那須英勝を報告者として、2020年度龍谷大学実践真宗学研究科FD研究会が行われた。
 新型コロナウイルス感染拡大で、2020年度4月から対面での講義が中止となっている状況で、実践真宗学研究科の講義もすべてオンライン授業での実施となっている。オンライン授業のツールとしては、大学ですでに導入しているmanabaと、今年度本格的に使用が始まったgoogle meetや、大学が導入しているものとは別にzoomなどを用いて開講している。
 今回の研究会では、教職員だけでなく、オンライン講義を受講中の大学院生にも参加してもらい、報告者が現在担当している「宗教実践実習」(3年次生対象)における、オンライン授業の実施についての現状報告を行い、その後、オンラインツールを用いた授業の課題について、教授者と受講者、それぞれの体験を踏まえてディスカッションを重なった。
 報告の対象となった「宗教実践実習」は、通常では、受講生が宗教実践活動の現場において実習を行うことを前提に、クラスではその成果報告をもとに、教員は指導と検証をおこない、受講生自身の実践能力が向上するように助言と指導を行う中心に運営されている。しかし、昨年度末からの新型コロナウイルス感染拡大により、新学年度の開始前から、宗教実践活動の現場自体が原則として活動停止状態となり、計画していた実習の予定が立てられない状況となり、それに対応するために、どのようにオンラインツールを用いたかを中心に、まず以下の内容の報告が行われた。
 この授業では、対面講義が不可となった4月早々から受講生とメールのやりとりをするところから始め、受講生(3名)のインターネットアクセスの環境を確認し、1週目から試行的にZoomを利用してオンライン・ミーティングを試すところから始めることとなった。受講生は1名が中国地方、1名が九州、1名が兵庫県で、いずれも今学期は自宅からの受講となった。なおオンラインツールとしてZoomを選んだのは、受講生がすでにその使用に習熟していたということもあるが、教員側の状況として、大学のオンライン講義実施のための講習会などが始まる前であり、受講生の側の選択肢も他になく、かつ外部の参加者を招待する際のZoomツールとしての汎用性という視点からも、結果としては良い選択であったと思われる。
 オンライン・ミーティングで実習についての相談を始めたが、外出もままならない状況であったので、予定していた実習に出かけられない状況下でできることとして、新型コロナウイルス感染拡大下における「インターネットを使った伝道」を共通のテーマとして、受講生のそれぞれ関心のある課題について、外部の有識者にZoomミーティングに参加してもらい、実際に現場での実習でもおこなうインタビューの形式にできるだけ近い形で(予め質問をお送りし、それにお答えいただく形でディスカッションをする形式)で、原則として通常の講義開講の時間帯を利用して、4回のオンラインミーティングがおこなわれ、4回のミーティングのテーマは、①仏教フリーペーパー編集者、②YouTube法話、③仏教とマイノリティーコミュニティー、③インターネットの複合的な利用でお寺と地域をつなぐ試みで、5回目は受講者と教員でオンライン・ミーティング、4回の講義のまとめを行った。
 このZoomによる「オンライン実習」実施報告のまとめとして、次のような3つのポイントが指摘された。まず、実践真宗学研究科の院生の実践能力の高さである。実践真宗学研究科では、2回生までの学びを通して、自分が専門として研究している分野に関しての人的ネットワークの構築ができていること。また、それぞれが、それを教育・研究の場につなげる積極性を2年間の学びで身につけており、アイデアを出すだけでなく、どうすればそれが実現できるかという視点から物事を考える姿勢が身についている。この企画も教員の指示ではなく、院生の自発的な提案で実現したもので、この企画が実施できたのも、受講者が大学院での学びの中ですでに身につけた人的ネットワークの構築力あったからこその成果であるといえよう。
 次に、オンラインツールを活用した実習を実施する場合の強みとして、以下のことが報告された。オンラインツールを利用すると地理的な制限がはずれ、日程と時間さえ調整できれば、通常不可能な教育・研究の交流が可能となること。またオンライン・ミーティングでは、参加者が比較的同じ(カメラ)目線で、一対一でのやりとりになるので、対話の内容がクラスでのディスカッションよりも深いものとなる。その理由の一つとしては、教室とは異なり、参加者は手元に必要な資料がいつでも手にとれる状態であり、かつオンラインのリソースにもアクセスしながら参加でき、さらにパソコン上に置かれているデータの共有がリアルタイムでできることである。
 しかし、オンラインツールの活用の問題点があることも指摘された。まずオンラインでのディスカッションでは、教室とは異なり全体の雰囲気が掴めないので、発⾔のタイミングをうかがってしまう傾向にあり、通常の授業より発⾔がしづらい。また時間の感覚が希薄になりがちで、報告や発言がながくなり、会話をストップするタイミングが掴みにくい。この点については、セッションを始める前に、予めディスカッションなどの運営の仕方のルールと司会進行者の役割を通常の講義以上に明確にしておくことが必要であろうと思われる。また全ての参加者のインターネット環境が整っていないと、セッションの途中で通信が切れ、映像と音声が乱れるなどの不具合が発⽣してしまうので、セッションを開始する前に安定したインターネット環境があることの確認が必要である。
 以上、オンラインツールの活用の強みも、問題点もあるが、今回のように手探りの状態で始めた試みであるにもかかわらず、普通の対面の講義では不可能なことが可能になり、かつ院生がこれまでの学修において身につけた、実習についての能力を発揮することができたことからも、その教育効果が十分認められる結果となった。今後は対面での教室での講義においても、オンラインツールが安定して活用ができる環境の整備が実現すれば、実践真宗学研究科全体の教育効果の向上のために有効であると考えられることが報告された。
 報告者のまとめの後、参加教員の葛野洋明氏が現在担当している「国際伝道論」の講義では、すでに数年前からオンラインツールを利用して海外から講師を招聘する形の講義が実施されており、特に現在のような状況でも問題なく講義の運営ができていることも報告された。また同じく葛野氏からは、現在、実習系の講義として「布教伝道実習」の合同実演を、オンラインツールを利用して、10名以上参加者がリモートでおこなう合同実演が始まったことも報告された。
 最後に、教員・大学院生を交えた参加者全体のディスカッションを行った。参加していただいた教員と大学院生のこれまでの体験からは、現在のオンラインツールを使った学習のみで「宗教実践実習」の教育・研究が完全に代替できるとは言い難いが、通常の教室での講義では不可能なことがオンラインツールで実現可能であること、また実際にリモートやバーチャル空間における「宗教実践」のエリアが、現在急速に拡大しつつあることは確かに感じられるので、今後もさらにオンライン授業のポジティブな可能性についてさらに意識高めていくべきであることを、参加者全体で共有できたことは大変有意義であった。