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2020.08.03

森のある大学 龍谷大学里山学研究センター 第1回研究会をオンラインで開催【研究部・里山学研究センター】

―「人新世」時代の新・里山学をめざして―

<森のある大学 龍谷大学里山学研究センター 第1回公開研究会 概要>
日時:  2020年7月28日(火)15:00~18:40
第1発表:「変動する森から見つめる『人新世 』」
     林 竜馬氏(滋賀県立琵琶湖博物館・主任学芸員)
第2発表:「自然と人間の関係をめぐる人類学の動向」
     椿原 敦子氏(龍谷大学社会学部准教授)
司会:  伊達 浩憲氏(龍谷大学経済学部教授)


 
新型コロナウィルスによるグローバルな感染症パンデミックがなお収束の気配を見せない状況で、地球自然環境と人類の持続可能性をめぐる問いはますます切迫したものとなっています。とりわけ地球全体のエコロジーに及ぼす人間活動の影響の重要性については、地質学年代としての「人新世Anthropocene」概念の提唱に象徴されるように、私たちは地球史・文明史スケールからの再検討を迫られています。
 今回の新・里山学研究センターの第1回研究会では、司会の伊達氏より持続可能社会をめぐる近年の学術動向にくわえ、国連やIPBESの政策動向を踏まえたうえで、当センターの新たなプロジェクト「〈人新世〉時代の新・里山学の創造―新たな「自然」概念構築と「自然との対話」方法論の確立に向けた文理融合 研究」と今回の研究会の主旨が説明されました。ひとつめは地球史的観点に立った新たな人類史の視点をめぐる議論、ふたつめは自然共生型社会へ向かう国際的な学術動向・政策動向のなかで学術分野としての重要性を大きく高めている文化人類学の動向について議論を深めることです。
 花粉化石の分析をつうじた古生態学研究で知られる林氏の発表は、人類の定住以前から現代にいたるまでの日本列島における森の生態の長い歴史を、最新の科学的手法により明らかにするものでした。たとえば縄文時代から古墳時代にかけての森林生態の変化を、その当時の稲作文化の普及、遺跡の利用材木の変化、気候変化といった複数領域のデータを駆使して関連を鮮やかに図示する手法には、参加者から感嘆の声が漏れました。さらに、もともとは地質学の領域で提案され、現在も世界地質学会で検討中の「人新世」概念が、いまや一人歩きして人文・社会科学系やマスコミで使われていることに注意を向け、現在の地質学会での議論の内容を紹介するとともに、その定義の難しさを示しました。
 アメリカのイラン人の研究をおこなってきた文化人類学者の椿原氏は、文化人類学が第二次大戦後より、「西欧中心主義」および「人間中心主義」を批判して「脱西欧中心主義」、そして「脱人間中心主義」へと向かった学術的背景と歴史を整理して説明するとともに、自然と人間の共生的関係を維持する伝統文化社会を対象として研究を重ねてきた文化人類学が、持続可能社会に向けて果たす学術的な重要性と役割について述べました。
 いずれの発表も、現在の地球環境の持続可能性をキーとした国際的な学術動向と政策動向の転換を踏まえたもので、里山学研究センターのプロジェクトのみならず、多くの学術領域にとって基礎的な視点を与える内容であったため、他大学からの参加も含め、活発な議論がおこなわれました。


滋賀県立琵琶湖博物館 主任学芸員 林竜馬氏


龍谷大学社会学部 准教授 椿原敦子氏

なお、当日は30名ほどの参加者がありました。研究会が終了した今でもメーリングリストをつうじて議論は続いています。