2020.10.22
龍谷大学法学部教授会声明 第 25 期新規会員任命に関する日本学術会議の決議を支持します
菅義偉内閣総理大臣は、本年 10 月 1 日、第 25 期日本学術会議会員の任命に当たり、日本学術会議が推薦した 105 人の会員候補者のうち 99 人を任命したものの、6 人についてはとくに理由を示すことなく任命しませんでした。
このような任命行為は、日本学術会議の会員に係る内閣総理大臣の任命権の行使が形式的なものであって、同会議が推薦した候補者をそのまま任命するものであると解され、かつ、そのように運用されてきた日本学術会議法第 7 条第 2項(「会員は、第 17 条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」)に違反しています。
日本学術会議は、日本学術会議法第 3 条において政府からの独立性が保障されています。それは、科学が戦争のために動員された過去の反省を踏まえて、同法前文に示されるように「科学が文化国家の基礎であるという確信」の下、同会議が、同法第 2 条に定める「科学者の内外に対する代表機関」として「行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」役割を果たすことができるようにするためです。内閣総理大臣が同会議の推薦候補者をそのまま任命しないことは、同法第 3 条が保障する同会議の独立性を侵害するだけでなく、その独立性と表裏一体の関係にある、同法第 17 条(日本学術会議における会員候補者の選考)、同法第 25 条(会員の辞職に係る日本学術会議の同意)及び同法第 26 条(会員の退職に係る日本学術会議の申出)が前提とする同会議の自律性をも損なうものです。このような所為は、大学の自治その他学術機関の独立性・自律性を制度的に保障することを含む日本国憲法第23 条が保障する学問の自由すらも侵害するおそれがあるものといえます。
日本学術会議は、本年 10 月 2 日に開催された第 181 回総会において、菅義偉内閣総理大臣に対し、第 25 期新規会員任命に関して次の2点を要望することを決議しています。
1.2020 年 9 月 30 日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。
2.2020 年 8 月 31 日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい。
龍谷大学法学部教授会は、このたびの菅義偉内閣総理大臣の任命行為は日本学術会議法の関係条文に違反する違法な行為であって、日本国憲法第 23 条が保障する学問の自由をも侵害するおそれあるものと思料し、日本国憲法の理念を基礎に自立的な市民を育成するという本学部の責務に照らして、上記の決議を支持することを表明します。
2020 年 10 月 14 日
龍谷大学法学部教授会