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2020.11.19

2020年度龍谷大学大学院実践真宗学研究科実習報告会の開催報告【文学部】【実践真宗学研究科】

11月5日(木)、龍谷大学実践真宗学研究科主催の実習報告会がオンラインで開催されました。
実習報告会とは、実践真宗学研究科の修了年次生がそれぞれの研究の過程で行なった実習や調査の結果をまとめ、研究科の内外へ報告をする場です。
例年、各ゼミから代表で1名がスライドショーソフト等を用いながら報告しています。今年は宗教実践分野の3ゼミ、社会実践分野の2ゼミの計5人がそれぞれの実習について報告しました。報告者と研究テーマは以下の通りです。また、2年後に発表することとなる1回生による報告レビューも併せてご参照ください。

長田 晃声(ながた こうしょう)【那須ゼミ】
「発達障害の生きづらさに対する仏教の支援」
最初の発表者である長田さんは、仏教における発達障害者支援が少ないことを疑問に思っており、発達障害者の生きづらさに対する仏教の支援の役割を明らかにするために実習に行かれました。
まず発達障害者への支援を行う僧侶の方々に聞き取り調査を行い、僧侶は発達障害者に対し、一人一人と向き合い、相手にとって何が大切なのかを考え、無条件で徹底的に寄り添う姿勢が重視されると発表されました。また発達障害者の方々への聞き取り調査では、当事者は宗教に対し自分が自然体でいられる居場所、安心できる時間を求めていることがわかったとのことでした。これらのことを踏まえて、発達障害者が安心して暮らしていくための地域づくりが僧侶の課題であると報告されました。
今回の発表で考察された仏教の役割は、発達障害者への支援に限らず、僧侶が人々と関わっていく中で重要なものとなるのではないでしょうか。今後僧侶として社会で活動する身として興味深く聞かせていただきました。
【1回生 髙橋】


藤尾 見吾(ふじお けんご)【森田眞ゼミ】
「現代における法話の可能性
―医療従事者による法話についての聞き取り調査の分析―」
藤尾さんは、「医療従事者と僧侶による共同制作型法話」を掲げ、寺院での仏教と医療の協力を考えておられました。今回の実習報告では、真宗大谷派僧侶の方が在宅緩和ケア医の方を自坊の法話にお呼びした事例を取り上げ、お二人の背景や目的、法話が実現した経緯などを聞き取りし、整理して、医療従事者による法話の特徴と有益性を考察されていました。そこでは、医療従事者だからこそ語ることができる現場の話を通し、社会の中で生きる自らのいのちや仏法の頂き方を問い直すことができる可能性や、一僧侶の人生経験を基にした法話の範囲を超え、より具体的で幅広い生死の現実にアプローチし、聴聞者が自身の問題に心を向け、理解を深めることができる可能性があることを考察されていました。
医療臨床における宗教者の実践に関する先行研究は見られますが、寺院という場での医療と仏教の協力は見ることがなく、大変興味深かったです。そして、阿弥陀仏の法義にふれなければ法話とは言えないのか、「法話とは何か」という問い直しとともに、聴く側が何を受け取るのかということに意識を向ける大切さを改めて考えさせられた報告でした。
【1回生 保々】


千葉 康功(ちば やすのり)【森田敬ゼミ・中村ゼミ】
「地域を支える寺院―浄土真宗本願寺派のビハーラの視点から―」
千葉さんは、仏教が葬式仏教と揶揄される中、現代において大切な僧侶の姿勢をビハーラ活動の視点から考えるということを目的に実習に取り組まれました。経済的に困難なご家庭への支援や、不登校の子の支援などをされている二つのお寺での聞き取りを行い、地域の中で困っている人を支援する活動をお寺から発信することで、賛同者が多くなったことや行政が取り組むようになったことが伺われ、寺院活動の可能性を述べられていました。またインタビュー調査の中で、その活動の根底には僧侶として苦悩に目を向ける思いや声をあげていく力強い姿勢があることを感じました。そこから千葉さんは、「地域の様々な苦悩に目を向ける・様々な職種の連携・積極性」を大切な僧侶の姿勢として挙げられ、これがビハーラ活動の五つの方向性の「Ⅰ広く社会の苦悩にかかわるビハーラ、Ⅱ自発的にかかわるビハーラ、Ⅳ医療・福祉と共にあるビハーラ」の三つと重なることを述べられました。そして、現代の僧侶にこそビハーラ精神をもって信仰心や仏教思想を体現化することが求められることを述べ、まとめられておりました。
【1回生 城】


小野 優菜(おの ゆうな)【森田敬ゼミ・中村ゼミ】
「これからの寺院活動を考える
―新型コロナウィルスによる社会変動を通して―」
小野さんは、新型コロナウイルスの影響を大きく受ける社会の中で寺院はどのように変わっていかなければならないのか、今までの活動を見直していかなければならないのかについて発表されました。特にコロナ禍において、SNSやホームページやオンライン配信などメディアを使っての解決方法が提案されており、寺院や個人の僧侶によるオンライン配信活動に対して聞き取り調査を実施されました。
 印象的だった部分は、聞き取り調査の報告を行った⼭⼝県岩国市 超專寺の「オンライン法座」での「わかったこと」のスライドで述べられていた、ご高齢の方でも大丈夫、やってみないとわからない、という部分です。先入観としてご高齢の方が多い地域ではオンラインなどは使いづらいと私自身感じていましたが、この超專寺では多くの方がオンライン法座を利用していらっしゃいました。もしこの例が他の地方寺院でも適用できるようになれば、「聴きたくても聴きに行けなかった」という潜在的に熱心な檀家さんと、コロナ以前より密な関係性を持てるのではないかと感じました。これからの寺院とメディアの関係についてとても興味が湧いた発表でした。
【1回生 藤原】

・加藤 文彌(かとう ふみや)【葛野ゼミ】
「寺院における伝道教化活動の研究―少年教化活動を基盤として―」
加藤さんは寺院における少年教化活動に必要な要素とは何か。寺院内、寺院外の活動におして、子どもを中心とした活動から多世代を教化していく方法を明らかとすることを目的に四つの寺院に聞き取り調査に行かれました。
「日曜学校」「キッズサンガ」「お経を習う会」など子どもを中心とする教化活動の事例を調査する中で、加藤さんは少年教化活動に必要な要素は「人」「場所」「時間」「広報」「経済」「プログラム」「継続」であると明らかにされていました。また子どもを中心とした多世代への教化の方法については、様々な型があることを報告されており、子どもを中心とした仏事や活動を行うことが、参加意識や上の世代の教化につながると報告されていました。
子どもを中心とした活動の中で寺院と門徒の方、門徒の方同士の関係の親密化、その他子どもを通じた布教など少年教化活動には大きな可能性があると報告の中で学ばせていただきました。
【1回生 長谷川】


全員の発表後にゼミ担当教員の森田眞円先生・森田敬史先生から丁寧な総評と一人ひとりに向けてのコメントがなされました。発表者にとっては、これまでの実習に対する手応えや修士論文の執筆に向けての課題を得られ、また参加者は実践真宗学における課題を見いだせる大変有意義な場となりました。