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2020.11.25

塩尻かおり准教授ら、植物の香りで特定の天敵を誘引し、標的とした害虫の発生抑制に成功

 名城大学農学部の上船雅義准教授、農研機構西日本農業研究センターの安部順一朗上級研究員、龍谷大学農学部の塩尻かおり准教授、(株)ペコIPM パイロットの浦野知代表、農研機構中央農業研究センターの長坂幸吉グループ長、京都大学生態学研究センターの高林純示教授らは、ハウス栽培のミズナを対象に、アブラナ科葉菜類の害虫「コナガ」によって食害された植物が放出する香りのブレンドを人工的に作成した天敵誘引剤と天敵への給餌容器をハウス内に設置することで、土着天敵である「コナガサムライコマユバチ」を周辺により誘引し、ハウスにおけるコナガ発生率を抑制できることを実証しました。

 ハウス栽培のミズナにおける重要害虫コナガを対象に現地実証試験を実施し、天敵誘引剤を使ってコナガの発生前から少数のコナガサムライコマユバチを継続的に誘引し、天敵給餌器で 維持することでコナガの発生を抑えることができるかを検証しました(図)。その結果、これらを設置したハウスでは、設置しなかったハウスに比べてコナガの発生を抑制できました。この成果は、特定の天敵を誘引する効果を持つ合成した被害植物の香りを用いることで標的とした害虫の発生を抑えることに世界で初めて成功したものとなります。

 今回発表した論文では、天敵誘引剤と天敵給餌器を用いることで、コナガサムライコマユバチの行動を制御し、ハウス内でのコナガの発生を管理できる可能性を示しました。今後はこの技術が、露地栽培条件下でも有効かを評価していく必要があると考えておられます。また、本論文ではコナガを標的にしましたが、アザミウマ類、ハダニ類、アブラムシ類など他の野菜で問題になっている害虫にも、それぞれ天敵が野外に存在し、それら天敵も被害植物からの香りブレンドに誘引されることが明らかになっています。そのような害虫と天敵の組み合わせに対しても、本発表の手法による害虫管理の可能であるとの見解です。

 天敵誘引剤と天敵給餌器を用いた害虫防除技術は、里山のような自然環境で、農地周辺に害 虫の天敵が涵養されていることが基盤となっています。地域ごとに異なる農生態系とその周辺の自然生態系に注目し、その特性を生かした生態系管理と本害虫防除技術を結び付けた持続可能な取り組みも必要と考えておられます。

※詳細は、添付ファイルをご覧ください。※


【論文タイトル】
Targeting diamondback moth in greenhouses by attracting specific native parasitoids with herbivoryinduced
plant volatiles
(植食者誘導性植物揮発性物質を用いて特定の土着捕食寄生者を誘引することによりハウス内の
コナガを標的にする)

【著者】
上船雅義(名城大学農学部生物資源学科 准教授)
安部順一朗(農研機構西日本農業研究センター 上級研究員)
塩尻かおり(龍谷大学農学部植物生命科学科 准教授)
浦野知(株式会社ペコIPM パイロット 代表)
長坂幸吉(農研機構中央農業研究センター グループ長)
高林純示(京都大学生態学研究センター 教授)

【発表雑誌】
タイトル:Targeting diamondback moth in greenhouses by attracting specific native arasitoids with herbivory-induced plant volatiles
著者:Masayoshi Uefune, Junichiro Abe, Kaori Shiojiri, Satoru Urano, Koukichi Nagasaka, Junji Takabayashi
掲載誌:Royal Society Open Science (2020)
DOI 10.1098/rsos.201592
LINK https://doi.org/10.1098/rsos.201592

参考:塩尻かおり准教授
教員紹介
化学生態学研究室




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