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2020.12.14

村澤真保呂・里山学研究センター長が精神分析/哲学の国際カンファレンスで講演【里山学研究センター】

―自然観と哲学について―



「森のある大学 龍谷大学里山学研究センター」では、去る12月13日の午前1時半(ブエノスアイレスでは12日午後1時半)より、村澤真保呂センター長が、フランスと南米諸国を中心とする精神分析/哲学の国際学術組織であるL’École Lacanienne de Psychanalyse(本部パリ、略称ECP)が開催する国際カンファレンスにて、かつてより共同研究を進めてきたフランスの精神科医・哲学者であるステファン・ナドー博士と共同で「La réalité est-elle un fragment de l’événement ? (現実は出来事の断片なのか)」という題で講演をおこないました。新型コロナによる世界的な騒動のため、本来はブエノスアイレスで開催されるはずでしたが、今回はオンライン会議ソフトのZoom上で開催される運びとなりました。
 フランスやイタリア、南米諸国などのいわゆる「ラテン諸国」では、アメリカやイギリスを中心とする英語圏と異なり、社会科学や自然科学においても哲学や文学などの人文諸科学の影響が強く、とりわけフランスの現代思想の重要性が高く認められており、自然科学モデルにもとづいて専門科学化が進む英語圏の学術界とは一線を画しています。そのため心理学や精神医学においても哲学や思想への関心が強く、また自然科学や社会科学など異分野との積極的な交流を図る動きが盛んです。ECPはもともとフランスの精神分析学の国際学術団体として発足し、とくに南米諸国で広く活動を展開しています。現在では精神分析や精神医学に限らず、哲学や政治、経済など幅広い領域で研究活動を展開しており、今回の講演も広くエコロジーの観点から心理学や精神医療を思想的に捉え直すという主旨で企画されました。
 講演は、現在のエコロジー危機をめぐる哲学的課題を踏まえたうえで、松尾芭蕉の俳句を事例としつつ、現在の心理学/精神分析/精神医療のそれぞれで主流となっている考え方の思想的前提を整理し、エコロジーと自然観の広い観点から新たな思想的枠組みを提案するという内容で進められました。すべて講演者がフランス語で話し、スペイン語の同時通訳者が聴衆と仲介する仕方でおこなわれ、一部は日本語も交えておこなわれました。参加者はフランスとブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、日本などの各国から哲学者、精神分析家、心理療法家、精神科医、エコロジストなど、多彩な分野の研究者が60名以上が集まりました(写真はプライバシー保護のために多少ぼかしています)。
 講演後には活発な質疑応答がおこなわれ、内容も哲学的主題についての質問にくわえて、講演で扱った芭蕉や仏教についての質問も多く、参加者の日本文化への関心の高さが伺われるものでした。そのためカンファレンスは予定していた2時間半では終わらず、大幅に超えた3時間半後にようやく終了しました。
 ※組織の会員向けの記録動画は公開して半日で350人が閲覧し、主催者のもとに感想が届いているそうです。