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2021.01.18

林竜馬研究員のインタビューが『談』119号の特集に掲載【里山学研究センター】

「人新世と10万年スケールの森の歴史」

 林竜馬研究員のインタビューが『談』119号の特集「人新世と未来の自然学」に掲載されました。
 
 森のある大学 龍谷大学里山学研究センターの林竜馬研究員のインタビューが『談』119号(2020年)の特集「人新世と未来の自然学」に「人新世と10万年スケールの森の歴史」と題して掲載されました。
 インタビューで林氏は、主に、次のようなことを語りました。
先ず、林氏は、森林の歴史を気候変動と結び付けて考察するところから自身の研究が始まったこと、この研究をする上で大きな役割を果たすのが花粉化石であること、琵琶湖の湖底には40万年をかけて堆積した泥が存在し、そこに花粉化石が点在していることを述べつつ、人間による森林の活用との関係で森林の歴史をより理解するためには考古学、歴史学等の他分野の横断や〇〇万年等といった時間的スケールの横断が必要であるので、自らこれを実践して気候―人―森林生態系の歴史的変遷に関する研究を行っていることを紹介しました。
次に、林氏は、花粉化石を通した琵琶湖周辺の環境変化やこの変化が森林に及ぼす影響(森林の変化)について解説し、この環境変化を定量的に語るのが花粉化石だと指摘しました。また、この中で林氏は、花粉化石から分かる森林や植生の変化という自然科学的に実証的な証拠と、歴史学的に、人間が森林をどのように活用してきたのか、森林に対してどのような政策を施してきたのかという問いを重ねることでその活用方法や政策が森林にどのような影響を与えているのかが判明し、ようやくそれをどう評価できるのかという話になることを示しました。
さらに、林氏は、「人新世」について、例えば、地質学における「人新世」と人文科学における「人新世」との間には認識の差があるなど「人新世」の使われ方が様々であること、特に、森林から「人新世」をみつめた場合には時間的スケールと解像度が焦点になることを表しました。その上で、林氏は、里山問題に接しながら、「人新世」の向き合い方を人間と自然との距離を踏まえながら論及しました。
そして、林氏は、「環境」問題の捉え方について、そもそも何の「環境」を問題としているのか、それはどういう時間的スケールや解像度でみた場合に、どのような問題として認識されるべきなのかを明示することの重要性を説きました。加えて、林氏は、漠然としたイメージで「自然」、「環境」、「人新世」の議論をするのではなく、例えば、何を対象にした、どのようなスケールをもったものの見方なのかなど、焦点の合った議論を重ねていくことの必要性も強調しました。



<林竜馬氏のプロフィール>
滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員/里山学研究センター客員研究員
専門は、微古生物学、古生態学、森林環境学。著書に『花粉分析による集水域植生の復元』(共著、共立出版、2014年)がある。