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2021.03.17

2020年度文学部・文学研究科FD報告会の開催(文学部TA・ST制度の現状と課題)【文学部】

文学研究科FD委員長 高田文英先生

 2021年3月3日午後2時30分より、約1時間15分の間、「文学部TA・ST制度の現状と課題」と題し、2020年度文学部・文学研究科FD報告会が行われました(オンライン開催、参加者約80名)。

 文学部では従来、基礎演習の各クラスにTAを配置し、初年次教育の充実を図ってきましたが、近年、TAを担う大学院生の減少・TAの待遇面の悪化・業務内容の不透明さなどが課題として指摘されています。そこで今回のFD報告会では、TA制度に関する現状の課題を共有するとともに、学生チューターであるSTの積極的な活用方策について議論を深めました。

 最初に文学研究科FD委員長の高田より、アンケート結果をもとにTA・ST制度の現状に関する総論的な報告を行いました。TA・ST制度については、全体的にその有益性が高く評価されているものの、少なからず課題もあることがアンケートから窺えました。TAに関しては、学科・専攻・クラスによって業務量にばらつきがあり、給与に応じた業務量の適正化・平準化が喫緊の課題です。STに関しては、TAと比べた場合の位置づけを明確化しつつ、活用事例を蓄積・共有していくことが望まれます。また待遇に関して、他大学の例を参考にした改善試案を提示しました。

 続いて、TA経験の長い大学院生から、現状の制度の課題について、TA目線からの報告がありました。とくに2019年度の賃金体系の変更により、これまで院生の間で時給が高いからということで曖昧にされていたことが問題として認識され、不安や不満が生じている状況が報告されました。また、実働時間の密度の違い(単純作業か知的作業か)や、従事者の学位・学年・経験を問わず一律の給与であることも、業務を行う側の立場からすると不満に感じる部分であること、満5年を超えての雇用契約を結ぶことができない現状の制度が、博士課程の学生がTAを行う際の障害になっていることなど、教員からは見えにくい部分を具体的に報告してもらいました。

 ST制度の積極的な活用方策に関しては、文学部非常勤講師の滋野正道氏より、2019年度より文学部IP推進委員会のもとで開講されているPBL型の講義におけるSTの活用事例が報告されました。とくに、毎回講義前にチューターとしての行動目標を設定する、学期の中間にST研修を設けるなど、ST自身が課題を意識し成長するための仕組み作りは、他の講義・演習での活用でも参考になるものと思われました。また、例えば不安を抱えた低年次生を教員や各窓口へ繋ぐ役割など、TAとは異なるSTの得意な部分を整理し、TA・STが相互に補完できるチューター制度が望ましいと報告されました。

 最後に、滋野氏の講義で今年度STを担当した学部生から、STの経験から学んだことが報告されました。講義で議論が盛り上がるためにはどうしたらいいか(例えば、その案いいねと肯定的な反応をする)、あるいは、やや議論がずれてきたとき、どういう質問をすれば引き戻せるか(それって~という目的からすればどんな意味があるのかな?)など、実際の体験から自身が学んだことを報告してもらいました。ST自身が自ら課題を意識し、考えて取り組むことが、講義の活性化にも、そしてST自身の成長にもつながることを実感させられた報告でした。

 参加者からは、労働時間を守った運用の徹底が必要であるという意見や、TA・STが困った時に相談できる窓口が必要であるといった意見が出ました。また、参加者アンケートからは、TA・ST制度の問題は、今後もFD等で継続して取り上げ、具体的な課題の改善につなげていくべきであるという意見が多く寄せられ、この問題に対する関心の高さが窺われました。(報告: 文学研究科FD委員長 高田文英)