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2021.06.23

犯罪学に関する国際学会「アジア犯罪学会第12回年次大会」をオンライン初開催

誰もがより豊かに暮らす社会を志向する『共生の時代の犯罪学』を目指して

【ポイント】
・龍谷大学がホスト校となり、2021年6月18日(金)〜21日(月)に国際学会「アジア犯罪学会 第12回年次大会」をオンラインで初開催
・龍谷大学犯罪学研究センター研究メンバーを中心に日本の状況を多数報告し、国際社会における日本の犯罪学・刑事政策の存在感を高めることが目的
・全編オンライン方式によるものの、交流のための企画・ツールなどを用意し、アジアを中心とした若手研究者の交流・育成の機会に

龍谷大学がホスト校となり、2021年6月18日(金)〜21日(月)の4日間にわたり国際学会「アジア犯罪学会 第12回年次大会(Asian Criminological Society 12th Annual Conference, 通称: ACS2020)」をオンラインで開催しました。今大会は当初2020年10月に対面で実施予定でしたが、新型コロナの世界的な流行状況に鑑み、開催方式をオンラインに変更し、この6月に開催する運びとなりました。
2014年の大阪大会に次いで国内では2回目の開催となる今大会では、アジア・オセアニア地域における犯罪学の興隆と、米国・欧州などの犯罪学の先進地域との学術交流を目的としています。大会の全体テーマには『アジア文化における罪と罰:犯罪学における伝統と進取の精神(Crime and Punishment under Asian Cultures: Tradition and Innovation in Criminology)』を掲げ、「世界で最も犯罪の少ない国」といわれる日本の犯罪・非行対策と社会制度・文化に対する理解を広めることを目指しました。

これまでアジア地域の犯罪学は、欧米の先進的犯罪学を移入し、その犯罪学理論・刑事政策理論をそれぞれの国において検証することを主たる課題にしてきました。しかし、これからの犯罪学には、世界人口の半数以上を占め、急速に発展しつつあるアジア地域の社会制度や文化に根ざしたアジア発の理論構築、また、犯罪や非行の研究から得られた知見による共生社会の創造に向けた提言が求められています。
そこで、今大会では、欧米・アジアから世界的な犯罪学者を10名招へいし、基調講演・全体講演をLIVEで行いました。とりわけ、「統制文化論(Culture of Control)」の主唱者であるDavid Garland教授(アメリカ)と「立ち直り論(desistance)」の第一人者であるShadd Maruna教授(イギリス)は、日本的社会・文化における理論構築に大きな示唆を与えるとともに、「なぜ日本には犯罪が少ないのか」という疑問を考察する上での理論的前提を提供することが期待されており、実際に多くの実りある議論がオンライン上で交わされました。

また、オンライン開催に伴い参加者専用の視聴・交流のためのウェブ・プラットフォームを新たに構築しました。基調講演や全体会、テーマセッションなどすべてのライブ・セッションや個別報告を動画で録画し、6月30日まで大会専用のプラットフォーム上でオンデマンド配信し、なおかつ各動画へのコメント機能を参加者に付与することを通して、時差・物理的距離の制約なく会員間の交流促進をはかりました。
<※以下は、大会期間中のLiveプログラムの画像>


ACS2020 Program

ACS2020 Program

大会最終日の6月21日(月)には、本学深草キャンパス・成就館とオンラインとのハイブリット方式で実施し、浜井 浩一教授(本学・法学部)がClosing Plenary Sessionにおいて、日本の犯罪状況を包括的に報告する全体講演を行いました。


古川原 明子教授(本学・法学部)

古川原 明子教授(本学・法学部)がClosing Plenary Session, Closing Ceremonyの司会進行を担当


浜井 浩一教授(本学・法学部)

浜井 浩一教授(本学・法学部)がClosing Plenary Sessionにおいて最終報告

Closing Plenary Sessionにつづいて行われた、Closing Ceremonyでは日本国内のみならず、中国・台湾・オーストラリア・ベトナム・インドなどの参加者とZoomでつなぎ、宮澤節生 名誉教授(神戸大学, アジア犯罪学会会長, 本学・犯罪学研究センター 客員研究員)の司会進行のもと、各賞の受賞者の表彰式が行われました。その後、津島 昌弘教授(本学・社会学部)と石塚 伸一教授(本学・法学部)が挨拶にたち、来年の大会校であるインドの現地組織委員会メンバーに引き継ぎを行い、本大会の4日間にわたるプログラムは盛会のうちに幕を閉じました。


宮澤節生 名誉教授(神戸大学, アジア犯罪学会会長, 本学・犯罪学研究センター 客員研究員)

宮澤節生 名誉教授(神戸大学, アジア犯罪学会会長, 本学・犯罪学研究センター 客員研究員)


津島 昌弘教授(本学・社会学部)

津島 昌弘教授(本学・社会学部)


石塚 伸一教授(本学・法学部)

石塚 伸一教授(本学・法学部)


閉会式の終了後、宮澤節生 名誉教授(神戸大学, アジア犯罪学会会長, 本学・犯罪学研究センター 客員研究員)をはじめ、大会組織委員会の主要メンバーが入澤 崇学長を表敬訪問しました。



入澤学長は、本大会の開会にあたりビデオメッセージを寄せています。その要旨を一部抜粋して紹介します。

浄土真宗の精神を建学の精神とする龍谷大学は,仏教的理念を根底においています。2019年に本学は創立380年を迎え、創立380年事業として「仏教SDGs」に取り組み始めました。
ご存知の通り、2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」は、世界の持続可能な開発のために2030年までに17のグローバル目標を掲げています。SDGsの理念は「誰一人取り残さない No one will be left behind」です。この理念は仏教の阿弥陀仏のはたらきを示す「摂取不捨」(全ての者をおさめとって見捨てない)」の考えに通じる発想です。そこで本学では,SDGsと仏教の精神を結びつける「仏教SDGs」という独自の視点から、持続可能な社会の実現を目指しております。

仏教における「全ての者」には犯罪や非行をおこなった人たちももちろん含まれます。地球的視野で現代社会を見つめるならば、差別や貧困をはじめ国家や地域間での諍いなど、あまりに多くの深刻な課題があることに気づきます。日本社会においても、犯罪や非行などさまざまな人生のつまずきが存在することは、SDGsの目標がいまだ達成されていないことを示しております。私たちは、犯罪や非行の研究から得られた知見を、罪をおかした人達の社会復帰だけではなく、子育てや結婚、教育、保健福祉、町づくりや生活環境の改善にいかし、一人ひとりがつまずきから回復し、その人らしい生き方をしていくことができる社会の創造を目指しています。

この度、犯罪についてアジアにおける観点から議論を行うアジア犯罪学会の大会の開催を機に、より一層、人に寄り添い、誰も置き去りにしない社会の実現を目指して本学でも取り組んでまいりたいと思います。


◎本大会の成果については、犯罪学研究センターHPにおいて後日公開する予定です。

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*アジア犯罪学会(Asian Criminological Society)
マカオに拠点をおくアジア犯罪学会(Asian Criminological Society)は、2009年にマカオ大学のジアンホン・リュウ (Liu, Jianhong) 教授が、中国本土、香港、台湾、オーストラリアなどの主要犯罪学・刑事政策研究者に呼びかけることによって発足しました。その使命は下記の事柄です。
① アジア全域における犯罪学と刑事司法の研究を推進すること
② 犯罪学と刑事司法の諸分野において、研究者と実務家の協力を拡大すること
③ 出版と会合により、アジアと世界の犯罪学者と刑事司法実務家のコミュニケーションを奨励すること
④ 学術機関と刑事司法機関において、犯罪学と刑事司法に関する訓練と研究を促進すること
このような使命をもつアジア犯罪学会は、現在、中国・香港・マカオ・台湾・韓国・日本・オーストラリア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・アメリカ・スイス・パキスタン・インド・スリランカなどの国・地域の会員が約300名所属しており、日本からは会長(宮澤節生・本学犯罪学研究センター客員研究員)と、理事(石塚伸一・本学法学部教授・犯罪学研究センター長)の2名が選出されています。