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2021.08.10

夏の農作業を通じて農業と福祉のつながりを現場で経験【社会共生実習「農福連携プロジェクト」】


 「社会共生実習(農福連携で地域をつなぐ―「地域で誰もがいきいきと暮らせる共生社会に向けて」)」(担当教員:コミュニティマネジメント学科 坂本清彦)では、7月2日から30日まで4回にわたり、受入先の農福連携事業にとりくむ滋賀県栗東市の「おもや」で活動しました。

 農福連携とは、ノウ(自然、農林水産業)とフク(人、福祉)が連携し、障がいがある人をはじめとする多様な人が、持続可能な共生社会を生み出す取り組みのことです。

 「おもや」での4回の実習活動では、さまざまな農作業や農産物の出荷調整作業を体験しました。
現場初日の作業では、トマトの下葉切りとイチジクの木の害虫の駆除を行いました。トマトは下葉切り(古い下葉)を切ることにより、風通しが良くなり、病気や害虫被害の防止にもなる他、葉全体に日が当たりやすくなるため、甘くて色づきの良い実がなるそうです。また、イチジクの木は害虫被害を最小限に抑えるため、害虫が卵から孵化する前に虫網で丁寧に取り、駆除をするそうです。私たち実習生もトマトやイチジクを食べさせていただきましたがとても美味しかったです。




 出荷作業では、利用者さんと一緒にトマトのパック詰めと玉ねぎの根葉切り作業を行いました。どちらも利用者さんやスタッフさんに方法を教わりながら、1つ1つ丁寧に作業をしました。トマトのパック詰めは、トマトの表面をウェットティッシュで拭いて汚れを落としてから、ビニール袋に詰める作業です。農薬を使わない「おもや」の農産物には病害虫がつきやすい一方、直接販売するものが多いので、病気や虫にやられた実を除き、汚れを落とさないと消費者の方々に喜んで買ってもらえなくなります。
もう1つは、タマネギの葉と根をはさみで切り落とす作業です。タマネギは「おもや」で生産されたものでなく、他の農家から運ばれてきたもので、障がい者福祉施設の「おもや」で作業を請け、調整や選別して販売されるとのことです。こうした出荷作業をすることで、お店に並ぶまでには、作物を育てて終わりではないことに改めて気がつきました。

 その他、インゲンマメの誘引作業(育ちやすいように紐で支柱にくくりつける)やバジルとセロリの生長が進むように余分な葉や花、枯れ葉などを切り落とす作業も行いました。



 また30日には、3チームに別れて収穫後のタマネギ畑のマルチ(地面の覆い)を撤去しました。日差しが照っていて非常に暑い中、草の根がマルチに絡んでいたため、撤去する際に苦労しました。普段は朝方や夕方など比較的涼しい時間帯に作業を行うそうで、昼頃に作業することはほとんどないとのことです。短時間作業をして休憩を繰り返し、熱中症対策のために水分補給を徹底して行いました。時々吹く風が心地よかったです。

 「おもや」さんでは、無農薬栽培にこだわり、作物を育てられています。体験した作業は思ったよりも地道な作業が多く、ただ黙々と作業を進めました。この地道な手間がかかっているからこそ野菜や果実などが美味しく育つのだと感じることができました。また、出荷作業の多くが手作業で行なわれています。細かく手入れをし、出荷までの工程を一貫して行うことで、美味しく、安心安全に食べることのできる作物の提供を実現しているのだと体験を通して学ぶことができました。


受講生の様子


受講生の様子


 受講生が体験したように、圃場での生産から農産物の出荷、販売まで、農業には地道でいろいろな作業があり、障がいを持つ人など多様な背景をもつ人々が、それぞれの特性を生かす場を見つけ、力を発揮できる余地が多いという特徴があります。農福連携はそうした農業の特徴を生かしたさまざまな人をつなぐ取り組みとも言えます。

 今年度から始めた本実習は新型コロナウィルス感染拡大もあって現場での実習時間が限られ、受入先の「おもや」さんも学生・教員も現場での活動を手探りで進めているところです。後期には、現場での活動を継続する中で、利用者さんやスタッフさんとの信頼関係を築いて上記のような農福連携の特徴を現場でより深く学ぶとともに、地域とつなぐ事業の課題把握を進めていきます。

この記事の草稿は学生が執筆しました。


【関連リンク】
NPO法人「縁活」(「おもや」事業の実施団体)
https://enkatsu.or.jp/

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください