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2021.11.26

「政策実践・探究演習(国内)伏見深草プロジェクト」第2回フィールドワーク in 京都を実施【政策学部】

2021年11月11日(木)、政策実践・探究演習(国内)伏見深草プロジェクト(以下、伏見プロジェクト)(担当:松浦さと子教授)の第2回フィールドワークに3名が参加しました。学生たちは、株式会社吉岡映像とおもちゃ映画ミュージアムの2か所を訪問し、古くなったフィルムの修復技術とその意義について学ぶとともに、フィルム・アーカイブの重要性についてお話を聞き交流を深めました。

 伏見プロジェクトでは、株式会社吉岡映像の過去の取材映像を視聴し、おもちゃ映画ミュージアムのホームページを見て調べるなど、前期から学んできたアーカイブの重要性の理解をより深めるための事前学習をしてきました。学生たちは、事前学習を活かしながら積極的に質問を重ねるとともに、実際にフィルムや映写機などに触れ体験しながら精力的に活動しました。


株式会社吉岡映像 にて

約20年前より株式会社吉岡映像とは、約20年前より古くなった映像フィルムの修復・復元を行っている会社です。学生たちは、代表・吉岡博人さんの生い立ちからフィルムの修復作業を始めるきっかけとなったエピソードや修復技術におけるポリシーやフィルムの価値観など貴重なお話を直接伺いました。
吉岡さんは幼少期よりフィルムカメラに親しみ、当時の大阪写真専門学校を卒業後、CMなどのショートムービーを制作するプロダクションに就職さるなど、ご自身もカメラマンとしてご活躍されていました。時代とともにフィルムカメラからデジタルカメラへの移行が進むにつれて、誰でも簡単に映像が撮れるようになったことで、吉岡さん自身はデジタル映像に魅力を感じなくなられていたそうです。そこでもう一度フィルムに触れ、その魅力を再確認されました。8ミリフィルムを当時のVHSに変換する方法を独学で開発し、テレシネ(映写機から投影されたスクリーンを直接カメラで撮影する方法)にてフィルムをデジタル化することを可能にしました。
家族の思い出などが撮られたホームムービーのようなフィルム映像は、被写体への想いと撮影者の一生懸命な思いが詰まっています。そのようなフィルム映像は、何十年経ってももう一度見たいと思い返されるものであり、その価値観を大事にしたいと吉岡さんは語られました。




学生たちは、吉岡さんのフィルム修復に対する考えや思いを直接伺うとともに、実際の修復作業やテレシネ現場を見学しました。そして、修復依頼を受けた古くなったフィルムと修復によって綺麗になったフィルムを見比べ、実際に手に取りながら、吉岡さんやスタッフの方の説明を聞き、質問を重ねることで理解を深めました。



交流の最後、学生からは、土砂災害や震災によって流され汚れてしまったフィルムの修復をしていることについて質問があがりました。吉岡さんは2004年の兵庫・豊岡市台風23号災害があった時から、会社として無償にて泥まみれになったフィルムの修復作業を行っていると答えられました。実際に被災地へ出向き、避難所にチラシを貼り、修復しデジタル化したものを“災害被災地への支援”として届けることを今も続けられています。



おもちゃ映画ミュージアム(TOY Film Museum) にて

おもちゃ映画ミュージアムとは、光学玩具、玩具映写機などの多くの機材や無声映画フィルムを収集し、多くの人たちに映画の歴史と楽しさを味わってもらいたいという思いから開館された、見て触れて遊べる映画の博物館です。学生たちは、この施設の代表であり、大阪芸術大学で教授を務めていらした太田米夫先生にアーカイブの重要性とその面白さについて直接お話を伺いました。
日本ではアーカイブ化の過程でスキャン等によってデジタル化された際、原本となる(紙)資料やフィルムなどは破棄されることが多く、原本(現物)の軽視がアーカイブの重要性を欠いていると太田先生は指摘されました。今ではプロパガンダの一種として認識されているが、戦前のニュース映画などの当時の新聞社が大衆向けに制作した映画の16ミリフィルムを収集し見返すことで新たに見えてくる歴史や驚きがあるといいます。それは、当時貴重だったフィルムカメラを回すということは、ハレの日や記憶したいものがあるからだいう知見から、フィルム映像に残っているものには必ず意味があり、丁寧に見返すとまた違う発見があると語られました。学生たちは、真剣にメモを取りながら聴講しました。



その後、学生たちは施設に展示されている光学玩具や玩具映写機など映画映像機器にまつわる「玩具」を手に取りながら体験しました。時々、太田先生に使い方の説明を受けながら、学生たちは童心に帰ったように「玩具」に触れ交流を深めました。




第2回フィールドワークを終えて ~学生レポートより~
吉岡さんがフィルムを修復する際にこだわっていることは、当時撮影した人が見ていたままの映像を次の世代にそのまま伝えることだ。今回吉岡さんに話を聞くまでは最新の機械でデジタルアーカイブをしてしまえば次の世代に記録を伝えていくことはできると思っていたが、ただ映像だけを記録として次の世代に伝えるだけでなく、当時の状態で伝えることで、その当時の人が見ていた景色やその当時の人が映像を見て抱いた思いも次の世代の人に伝えることができるのだとわかった。また、形あるものは50年で劣化していくものであり、当時の映像を取り直しすることはできないからこそ、映像を修復することに価値があると吉岡さんから学んだ。おもちゃ映画ミュージアムでは映像に関する知らなかった知識をたくさん教えていただいた。ただデジタルアーカイブとして映像を残すだけでは記録を次の世代に伝え繋げていくことができないことを学び、原物の保存の重要性を認識した。今回のフィールドワークで学んだことは、フィルムについてあまり知らない世代である私たち学生にとってとても新鮮で、おもしろいと感じた。【政策学部3年】

私は吉岡映像さんの話を聞いて二つ印象に残ったことがある。一つ目は記録映像が映っているフィルムを修復する際に著作権法が絡んできて、直せるはずだったフィルムが劣化して不可能になることだ。二つ目は災害が起きた場合、泥がついてしまったなどといった災害特有のフィルム修復の際は無償で行うといったものだ。吉岡さんは災害にあった人の思いを受け取り、災害により変わり果ててしまった土地をフィルム映像の中でもう一度見れるようにしていただけるのはとてもありがたいことだと感じた。おもちゃ映画ミュージアムではコレクションの玩具を見て、触って、体験した。今とのギャップとして一番驚いたのはステレオ・ビュワーである。これは立体映像や3D映像を見せる装置で、二枚の絵を双眼鏡のようなレンズから見ると立体的に見ることができる。今では写真の場合、傾けたり正面から見ることで立体感が分かるのが当たり前のため、新鮮に感じた。【政策学部3年】

今回はこれまでの学びをさらに深められるように、「フィルム自体の保存のためにどのような活動が行われているのか」「保存に向けての課題とは何か」に注目した。まず吉岡さんとの話を通じて伝わってきたのは「フィルムが劣化し、救えなくなることへの危機感」だった。デジタル化の際も、できるだけフィルムの所有者が当時見た光景と同じになるように、スキャンなど現代の技術にあまり頼らず、映写機からの映像をカメラで撮影するなど、細かなところまで配慮し、フィルムの魅力を極力壊さないようにする心がけも印象的だった。おもちゃ映画ミュージアムでは、様々なことを教えていただいた。中でも、大映京都の特撮はこれまで聞いたこともない内容ばかりでとても新鮮だった。また、館内には“おもちゃ映画”とされる、光学玩具や映写機が展示されていたが、VR(仮想現実)の原理を利用した昔のおもちゃなどもあり、古くからそのような技術が存在していたという新たな発見もあった。今回のフィールドワークを通して、フィルムや映像関連の業界には今後一層若者の力が必要になってきているということも再認識させられた。またフィルムを保存するにあたって、保存体制や十分な制度が確立されておらず、政策上問題があることも分かった。保存体制がより良いものとなるよう、考えていく必要があると感じた。【政策学部2年】