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2021.12.01

パープルリボン月間イベント「『声なき叫び』上映会+アフタートーク」に協力【犯罪学研究センター】

女性に対する暴力を考える

2021年11月27日(土)、京都市男女共同参画センター・ウィングス京都において、犯罪学研究センター協力のもと、パープルリボン月間イベント「女性に対する暴力を考えるパープルカフェ特別編」として、「『声なき叫び』上映会+アフタートーク」が開催されました。
ウィングス京都では、毎年11月の女性に対する暴力を考えるパープルリボン月間に、様々な催しを行っています。 2021年のテーマは「傷と向きあう」。「上映会+アフタートーク」では、性暴力サバイバーの声に向き合い、暴力を許さない社会のために自分自身と向きあう時間を参加者と共有しました。

『声なき叫び』は、1978年にカナダで公開されたアンヌ・ポワリエ監督による性暴力被害を描いた映画です。性暴力がいかに女性の心身を傷つけ、社会の無理解が被害者を孤立させるのかを被害者の視点で克明に描き、カナダで公開後、日本を含む世界的な性暴力理解の契機をつくった名作として知られています。
物語は、看護師のスザンヌが夜勤を終えて帰宅する途中、見知らぬ男にトラックに連れ込まれてレイプされるシーンで始まります。医師の診察や捜査員による配慮に欠けた事情聴取は、スザンヌを更に追いつめていきます。このスザンヌの物語に、ニュースフィルムや法廷を模した場面が挿入され、観客は、夫婦間レイプや性虐待、権力関係にある者からの被害、戦時性暴力などの性被害が全て地続きの問題であることを突きつけられます。
これまでのレイプを扱った映画は、カメラはレイプをする側に立ち、レイプされる被害女性を映してきました。しかし、この映画は、カメラが被害者の視点に立って加害者を映し出すことによって、性暴力加害の暴力性を徹底的に描きます。途中、映画監督と編集者の編集会議場面が挟まれ、その女性2人の語りによって、性暴力被害の本質や背景が一層浮かび上がります。

上映後、映画監督の髙木駿一氏と犯罪学研究センター博士研究員の牧野が登壇し、作品分析の観点からみた本作の重要性と日本の性暴力被害に対する理解の現状についてのアフタートークが行われました。
髙木氏は、映画制作に携わる立場から、この映画は、制作者が性暴力について語り合うシーンやニュース映像を挟むことで、一性暴力被害者の物語として消費されることを拒否し、観客が問いを考え続けることを促す構成になっていると評価しました。また、映画界から広まった#MeToo運動、日本の映画制作の場面で起きた性暴力問題についても触れ、映画界の性暴力認識やその変化についても解説しました。
牧野は、性暴力問題を研究する立場から、40年以上前に作られた映画にも関わらず、ここに描かれている問題は現在の日本にも共通するものであることを、例をあげて指摘しました。刑法性犯罪規定の更なる改正について法制審議会で議論が開始された論点についても概説し、今後の刑法改正議論への注目を呼び掛けました。

作品には性暴力場面が含まれることから、参加募集時や上映前に注意喚起するとともに、上映中に入退室ができるように休憩室を準備して、フラッシュバック等の不安がある方への配慮を行いました。また、新型コロナウイルス感染防止のため、会場の換気、各席間の距離の確保、参加者の手指の消毒とマスク着用など、十分に対策を行った上で実施しました。

京都市男女共同参画センター・ウィングス京都
パープルリボン月間 2021 ~傷と向きあう~

https://www.wings-kyoto.jp/topics/tppurple2021.html

文責:牧野雅子(犯罪学研究センター博士研究員)


「パープルリボン月間 2021」チラシより

「パープルリボン月間 2021」チラシより


ウィングス京都・1Fロビーでの展示の様子

ウィングス京都・1Fロビーでの展示の様子