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2022.01.28

根が葉に伝えるシグナルの仕組み、別役准教授の研究成果が論文に【農学部植物生命科学科】

 農学部植物生命科学科 多細胞免疫動態研究室 別役重之准教授による、研究論文が発表されました。

 植物には全身獲得抵抗性と呼ばれる現象があります。これは、一部組織が病原体に感染すると非感染部位でも抵抗性反応が誘導され、二次的な感染に対して強くなるという現象です。この感染部位から非感染部位へのシグナル伝達に関わる分子が明らかとなれば、農作物の病害防除にも大きく貢献する可能性があり、盛んな研究が進められてきました。これまでにいろいろな分子が明らかにされてきましたが、その仕組みはまだまだよくわかっていませんでした。

 今回の研究では、特に根から地上部へと伝わる免疫誘導シグナルに着目しました。植物免疫ホルモンであるサリチル酸(SA)を土壌に処理すると、地上部で防御応答が誘導される現象が知られています。この土壌SA処理によって、植物根部維管束ではCLE3と呼ばれるペプチドホルモンをコードする遺伝子発現が誘導され、その結果、地上部では全身獲得抵抗性の制御因子であるWRKY33遺伝子が活性化されることを見出しました(図1)。今後、この仕組みが明らかになることで新たな農作物病害の予防や防除法の開発につながることが期待されます。

 なお、本研究は京都先端科学大学および東京大学との共同研究で行われました。また、国立研究開発法人科学技術振興機構ERATO野村集団微生物制御プロジェクト、および、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18016)の結果得られたものです。


■論文情報
タイトル:Root‑specific CLE3 expression is required for WRKY33 activation in Arabidopsis shoots
(根部特異的なCLE3発現がシロイヌナズナ地上部でのWRKY33発現に必要である)
著者:別役重之、他5名

■参考
別役 重之 准教授
多細胞免疫動態研究室
農学部教員ブログ記事「研究成果が論文として公表されました(植物生命・別役研)」