VOiCE Vol.
01
November 2025
Q. 先のことを考えすぎて、不安になりがちです。気持ちを落ち着け、臨機応変に対応するためには、どうしたら良いでしょう?
宇宙飛行士/龍谷大学客員教授 土井 隆雄
宇宙飛行士。1985年に宇宙開発事業団(現JAXA)に所属。1997年にスペースシャトル「コロンビア号」で日本人初の宇宙船外活動を行い、2008年には「エンデバー号」で「きぼう」船内保管室をISSに設置。国連宇宙部で宇宙技術普及に尽力後、京都大学特定教授を経て、2025年より龍谷大学客員教授。
宇宙飛行士の土井隆雄氏は、2016年に活動拠点を京都に移し、京都大学に研究室を開設。2025年からは龍谷大学にも新たな研究拠点を設け、持続可能な宇宙開発の可能性を追求しています。
現在、その中心的な取り組みとなっているのが、世界初の「木造人工衛星」プロジェクト。運用を終えた金属製衛星が大気圏再突入時に燃え尽き、環境汚染物質を放出する問題を解決するため、持続可能な資源である木材による代替を目指しています。京都で千年以上の歴史を持つ木造建築に感銘を受け、「宇宙空間でも木材が使えるのではないか」と着想したことから、このプロジェクトは始まりました。住友林業や学生チームと協力し、木材を用いた人工衛星の開発を進めています。
すでに1号機「LignoSat」の宇宙放出を成功させており、現在は通信機能を向上させた後継機や、木材の電波透過性を活用してアンテナを内蔵した新モデルを開発中。それぞれ2027年、2028年の打ち上げを目指しています。
さらに土井氏は、この技術を将来的な火星開拓につなげる壮大な構想も描いています。火星の大気環境を活用し、現地で木を育て、その木材で建築物や衛星を作り上げる「宇宙における地産地消」の実現に向け、京都から新たな挑戦が始まっています。
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