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2019.04.30

【龍谷大学&カーディフ大学】犯罪学学術交流シンポジウム2019 第二部【犯罪学研究センター】

イギリスにおける犯罪学研究の新動向「スマート・シティにおける重大な組織犯罪」

2019年4月12日、本学深草キャンパス 至心館1Fにおいて「犯罪学学術交流シンポジウム2019」を開催し、約20名が参加しました。本記事では、第二部のようすを紹介します。
【イベント概要>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-3328.html
【シンポジウム第一部レポート>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-3474.html



第二部では、アダム・エドワーズ博士(カーディフ大学・犯罪学)が「スマート・シティにおける重大な組織犯罪」をテーマに報告を行いました。これまで都市と犯罪の関係について、20世紀中頃にアメリカ・シカゴ学派が提唱した「Zone in Transition」や、20世紀後半にアメリカ・ロサンゼルスで提唱された「Ecology of Fear」などさまざまな理論が提唱され、犯罪学は発展してきました。そして、21世紀初頭のいま、オンライン・オフラインで新しい問題を引き起こしている「スマート・シティ(SmartCities)」*1は、どのような影響を及ぼすのでしょうか?エドワーズ博士は「WannaCry事件」*2を通じて、犯罪学における今後の理論等を検証しました。


アダム・エドワーズ博士(カーディフ大学・犯罪学)

アダム・エドワーズ博士(カーディフ大学・犯罪学)


エドワーズ博士資料より:都市と犯罪の関係

エドワーズ博士資料より:都市と犯罪の関係


スマート・シティの特徴の一つに都市のオンライン化が挙げられます。今や医療機関、金融機関、教育機関などの公共機関のみならず、さまざまな場所でコンピューターが用いられています。しかし、2017年5月12日に発生した「WannaCry事件」を契機に、スマート・シティにおける管理システムの脆弱性が問題となりました。

なぜ被害が拡大したのかを分析した結果、原因は以下の2点であることが判明しました。
①サイバーセキュリティーを行わないという判断
②アップデートしていない状況下、メーカーの保証期限以降の使用

「WannaCry事件」は、サイバーテロに対してあまりにも無防備であったために起こったものです。今後の課題として論じられたものとして以下の3点が挙げられました。
①サイバーセキュリティーの地域・機関・人におけるスキルギャップ
②サイバーセキュリティーの強化は誰の責任において行うのか
③サポートされるべき対象は国や機関なのか、それともユーザーに委ねられるのか

エドワーズ博士は「WannaCry事件は特異な事件ではなく、今後我々の日常生活に大きな影響を与える事例だ」と指摘しました。約15年前は、富裕層や中間層など経済的に恵まれた人々がコンピューターを利用していました。しかし現在、国連の調査によると、日本もイギリスもインターネット使用率が高く、多くの国民がコンピューターやスマートフォンを所有しています。
エドワーズ博士は「都市部のスマート・シティ化に伴い、この30年間で窃盗犯罪は減少している。対照的にオンラインを利用した犯罪が増加している。課題を克服しなければ、サイバー犯罪は益々蔓延する恐れがある」と懸念しました。

さいごに、エドワーズ博士は「世界的な潮流として、警察活動をより良く行うために使用されていたオンライン技術や管理システムでさえも犯罪に利用されるようになった。犯罪者の中には、警察が今どこにいるのか特定したり、警察の機密情報をハッキングしたりするなど、その事例は年々増加している。サイバーセキュリティの責任の所在をふくめ、スマート・シティにおける犯罪対策は新たな局面を迎えている」と締めくくり、報告を終えました。

報告後は、エドワーズ博士と石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)を中心に、日本におけるサイバー犯罪の現状と今後の刑事政策の在り方について意見交換を行い、シンポジウムは終了しました。

龍谷大学とカーディフ大学の学術交流協定締結を記念した本シンポジウムは、両大学の交友を深化する大変有意義な機会となりました。

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【補注】
*1「スマート・シティ」
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市システム。

*2「WannaCry事件」
2017年5月12日に発生したサイバー犯罪。ランサムウェア(サイバーウイルス)は世界中に蔓延し、150ヶ国23万台以上のコンピューターやシステムに感染。イギリスでは医療機関に最も大きな影響を与え、管理システムがランサムウェアに感染し、72時間にわたり、2万件の診療予約がキャンセル・延期された。

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